ゲーム 作品解説 解説

『ACE COMBAT ZERO THE BELKAN WAR』ストーリーあらすじ-「国境なき世界」との戦い-

THE TALON OF RUIN『くろがねの巨鳥』

1995年12月15日 

ウスティオ空軍ヴァレー基地

半年前の終戦時に地下へ潜り、戦犯を逃れたベルカ軍上級将校たちによるクーデターが発生。『国境なき世界』を名乗るクーデター組織は、コードネーム『XB-0』と呼ばれる巨大ガンシップを持ち出し、停戦条約締結の舞台となった都市ルーメンを爆撃。
XB-0の追撃を命じられようとしたその時、ウスティオ空軍ヴァレー基地に警報が鳴り響く。
接近中の所属不明機を確認、全機スクランブル態勢に入れという指令を受ける。
XB-0がヴァレー基地を襲撃し、大打撃を受けていた。滑走路では味方機や施設を横目に、ガルム隊は出撃する。追撃に向かった二人が見たのは、連合軍として共に戦ったオーシア軍とサピン軍が混成した敵航空部隊だった。
攻撃を向けてくる彼らと、ガルム隊はやむを得ず交戦する。基地への爆撃を終えて離脱するXB-0を撃墜。

すると、ガルム隊に一つの通信が入る。

「何だ、無線で信号が送られてきてる?解読します……『よう相棒、まだ生きてるか?』……これって……」

THE DEMON OF THE ROUND TABLE『円卓の鬼神』

1995年12月31日11時00分

エリアB7R

ヴァレー基地を襲撃したのは『国境なき世界』と名乗る大規模な多国籍クーデター軍であったことが判明した。高度に組織化されたこの革命軍にはオーシア、サピン等の多国籍の兵士が所属、多くの兵器を保有していた。
クーデター軍はベルカ北部のムント渓谷にあるアヴァロンダム地底施設をベルカ軍より接収。この施設に試作段階の大量破壊兵器『V2』を配備している。
ムント渓谷に至る道中にはB7Rが阻んでおり、両地帯共に強固な航空戦力が配備が予想されており、戦闘は避けられない。
連合軍航空機部隊も別ルートからアヴァロンダムに向かっており、作戦目標であるV2破壊と生還を命じられたガルム隊は、再びベルカの地に向けて出撃する。

エリアB7Rを通過するガルム隊を食い止めようと『国境なき世界』のエース部隊が姿を現す。
「何してんだよ! 戦争はとっくに終わってんだよ!」
新たな平和に向けて時代は動いているのだと、PJは相対するかつての友軍機に向かって叫ぶ。
『国境なき世界』のエース達は、会議室の中で醜いパイの奪い合いを繰り広げているだけだと一蹴。国家や境界線の存在によって生まれる欲のぶつかり合いこそが、すべての争いの元凶であると断じる。
「『国境なき世界が、全ての境界を無くす」

最後のエースを仕留めて激戦を制したサイファーとPJは、目標地点への飛行を継続。
「サイファーの軌跡を見届ける。必ず」

THE VALLEY OF KINGS『王の谷』

1995年12月31日15時00分 

アヴァロンダム/ムント渓谷

司令部からの情報によれば、アヴァロンダム周辺には強力な対空防衛網が配備されている。そこで連合軍航空部隊が上空で敵対空火器を引き付けている間に、ガルム隊は渓谷沿いに低空侵入。連合軍のアヴァロンダム攻撃部隊と共に『V2』発射制御施設を破壊する。
V2は核弾頭が搭載されており、起爆すれば半年前のベルカで起きた7発の戦術核による被害を大きく上回る可能性が高い。この戦いは連合軍総動員による総力戦であり、失敗は許されないものだった。
何としても発射を阻止するために、ガルム隊は決着に向かう。
要塞を防衛するクーデター軍の猛攻に耐え切れず、攻撃部隊が次々と脱落させられる。しかし、サイファーとPJは突破に成功する。
「2機抜けた!」
「抜けたのはどいつだ? ガルムか!」

ダムの底にある発射制御装置の破壊を試みる中、クーデター軍の演説は流れた。

制約も争いもない理想の世界を築くために、V2で世界にリセットをかける。

「世界は変わる」

発射までのカウントダウンが迫る中、ついにサイファーは3つの制御施設を破壊することに成功する。
V2の制御施設全破壊を確認した連合軍は、状況確認に入る。アヴァロンダム上空での待機を命じられたガルム隊。
しかし、接近中の正体不明機からのレーザー攻撃がガルム隊を襲う。

「これで戦争も終わる。俺、実は基地に恋人がいるんすよ。戻ったらプロポーズしようと、花束も買ってあったりして」
「警告! アンノウン急速接近中! ブレイク! ブレイク!」

突如の事態にもPJは咄嗟の判断で雄叫びを上げながら機体を旋回、前に出てサイファーを庇う。
赤いレーザーを受けて撃沈するPJの機体。そして、彼を堕とした正体不明の敵機から通信が入る。

「戦う理由は見つかったか? 相棒」

ZERO

1995年12月31日

「ダメだ、核サイロの再起動を確認! ガルム隊、作戦続行! 交戦せよ! 状況分析を開始する。それまで持ち堪えろ!」
破壊したはずの制御施設に代わって、V2の発射機構が再起動したことをイーグルアイが知らせる。

ガルム隊として初めて相棒と共に空を飛んだ時と同じ、寒空には雪が降り始めていた。

「降ってきたか」
片翼を赤く染めた新機体に乗り、感慨深げに呟いたPixyはサイファーに攻撃を仕掛ける。
「ここから境目が見えるか?国境は俺たちに何をくれた? すべてをやり直す。そのためのV2だ」
Pixyの機体は地上へ信号を送っており、彼がV2発射を握っているのだとイーグルアイは分析結果を報告。
『V2』とは大陸間弾道ミサイル、いわゆるICBMで大気圏外にまで上昇してから目標へ向かう兵器だ。大気圏への再突入前にPixyの機体を破壊すれば、制御を失ったV2はその場で爆散し、地上への被害を止められる。
しかし、新兵装のレーザーや面での攻撃に優れた散弾ミサイルを駆使しながら、Pixyはサイファーを振り回す。
「時間だ」
Pixyが激しい空戦の中そう告げると、地上から何かが打ち上げられる。
「くそっ! V2の発射を確認!」
「歪んだパズルは一度リセットするべきだ。このV2で全てを『ゼロ』に戻し、次の世代に未来を託そう」

憮然とした調子で相棒に語り掛けるPixy

「こちらAWACS! 聞け、ガルム1 敵機体の解析が完了した」
「コード名は『モルガン』この機体はECM防御システムで守られている。唯一の弱点は前方のエアインテークだ。正面角度から攻撃を行いモルガンを撃墜せよ」
「今そこで彼を討てるのは君だけだ。『円卓の鬼神』幸運を祈る!」

イーグルアイからの激励を受け、サイファーは最後の一騎打ちに躍り出ようとする。
大量破壊を望んでいるのであれば、戦闘を避けるだけで叶えられるはずのPixyもまた、自分を追ってくる相棒に機体を向ける。

「俺とお前は鏡のようなものだ」
「ガルム1 奴の前方エアインテークを狙え!」
「向かい合って初めて本当の自分に気付く」

ヘッドオンによる騎馬戦さながらの空戦を繰り広げる両者。
世界の命運を懸けた戦いが、傭兵であるガルム隊同士で行われていた。
「ここで全てが決まる、行くぞ!」

「撃て臆病者!」
前方のエアインテークにサイファーの一発が命中、機体の左翼エンジンは煙を上げる。
幾度ものヘッドオンを経て、互いを正面に捉えたPixyは相棒に吠える。
「撃て!」
正面から至近距離でのすれ違いの後、Pixyの機体は爆散しながら落下していく。
そして、大気圏外へと打ち上げられていた『V2』の核弾頭が爆発。サイファーは、二度目の地上への核被害を食い止めることに成功したのだ。

「サイファー、任務完了だ。さあ、帰ろう。俺たちの家へ。お前の帰りを待っている奴らがいる」

2005年11月30日

「これが隠されたもう一つの歴史。『彼』の消息もここで途絶える」

自国解放や平和のために戦っていたはずが、いつの間にか侵略者へと姿を変えていた戦勝国たち。
彼らにとってベルカで起爆された7つの核の影響は大きく、自らへの戒めのように終戦後は世界的に軍縮へと進んでいた。
また、V2の存在は隠蔽される。終戦後の出来事は人々の記憶から消え、戦いに生きた彼らもまた歴史の闇に封印された。
かつて『彼』と戦ったエースパイロット達へのインタビューは続き、そこには『国境なき世界』として戦った『片羽の妖精』ことラリー・フォルクの姿もあった。

機体が爆散する直前に脱出していた『片羽』もまた『彼』の敵として戦った後、生き残っていた一人だったのだ。

インタビューのカメラを前に、Pixyは語る。

死ぬはずだった自分は、核の爆心地で強く生きるベルカの人々に助けられたこと。
世界には境目が必要ないかもしれないという考えは確かにあった。しかし、無くすだけでは変わるのだろうかという疑問もある。
だからこそ、自分はまだ戦場に身を置いており、国境の意味、そしてそこで生きる人々の意志を確かめたいということ。
それが今の彼の『戦う理由』であること。

答えはここに無いのかもしれない。でも、それを探したいのだ。

「この映像はあいつも見るのか? 会ったら伝えてくれ

『よう相棒、まだ生きてるか?』」

10年ぶりの言葉に思わず照れくさそうに目を逸らしてしまうも、Pixyはカメラに向き直って穏やかな顔で相棒に告げる。

「ありがとう、戦友。またな」

『円卓の鬼神』
ベルカ戦争を駆け抜け、畏怖と経緯の狭間で生きた戦士。

彼はたった数か月の間だけ空に存在していた。
その後の消息は不明。

歴史の裏側について迫ることが叶ったトンプソンも『彼』の人間性にまでは迫ることが出来なかった。

ただ、『彼』の話をするとき、皆少し嬉しそうな顔をしていた。
それが答えなのかもしれない、という言葉で物語を締めくくる。


トンプソンが取材した内容は、後に報道ドキュメンタリー番組として放送され、高視聴率を記録した。

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