FROM SOFTWARE 解説

『ARMORED CORE V』考察 本作の違和感について言語化してみる

はじめに

ACⅥ直前に、自分なりに内容を整頓する目的で書いた記事です。

この作品を後続作抜きで、つまり「ACV」単体で語ろうとすると本当に難しいのですが、あれこれ解説するより公式資料集に概要が載っているので買いましょう…と済ませるわけにも行かない話が独自見解としてちょっとあるので、まとめておきました。

とりあえずあの作品のストーリーや整理されていない事柄は、公式資料集である『The FACT』と、補足に近い続編VDの方の『The AFTER』を読めば詳細に書いてあるので、大雑把におさらいしてみましょう。年表やら詳しい話が気になるなら下のリンクから買うのです

正直プレイヤーから触れられるような解説部分は全部資料集に書いてあるので、筆者としてもこういうお話して私の生きた証を残させてくれといった感じのスタンスですハイ。

ブロローグ(前日騨)であるストーリーミッション

ACVではシティとレジスタンスの抗争という限定的な地域における紛争が舞台であり、それに加えてミグラント同士の衝突や新たな脅威に立ち向かうのが基本です。「地上に残された者たちと去った支配者」という呼称を用いていることから、この世界で生き残っている人間たちは見捨てられた民であるという設定は既に設けられてた模様。

「企業」と呼ばれる謎の組織が、かつての人間社会のように対価に応じて働きを示すという契約関係により、体制側であるシティに戦力を提供し、使い捨ての傭兵部隊を自戦力に換算して指揮を執っていました。

「企業」に従っていた主人公は企業傘下のAC乗りである「主任」に獲物を横取りされたことや、ゴミ虫相手の捨て駒として扱われることに屈辱を覚えたのか、一年後の第二次反攻作戦では敵対していたレジスタンス側につきます。

その時に紆余屈折あってレジスタンスとの抗争で「企業」は無差別にシティを破壊し、都市機能は壊滅状態に陥ったので、政府転覆を目指していたレジスタンスもここに留まる意味はないと判断して離脱。

生き残りの市民を引き連れて脱出するというのが終盤戦。そして、存在意義を失ったレジスタンスは解散してバラバラとなり、レジスタンスメンバーの中心人物であるフランシス・パッティ・カーチスは、ロザリィと共にミグラントとして生きる道を選ぶ。そして。主人公である傭兵もついていったという形。

「始めましょう、私たちの戦いを」

こうして生き残りを賭けた彼らの闘いが果てしなく続くようになります。

結局何を描かれていたのか

前作シリーズであるAC4からfaの物語は企業群による管理資本主義体制——パックス・エコノミカの始まり、そして世界の緩やかな破滅を描いた物語でした。クレイドル体制を築いてあらゆる犠牲を払っても長生きして足掻こうとしていたという捉え方をしても、実際は尻に火が付くまでノープランで、そんな聞こえのいい話ではなかったのは皆さんご存じの通り。

本作のシティの構造も似たようなもので、権力を集中して集権体制による政府的な組織を気取ってみるものの、結局は外から奪って稼いだ物資を弱者に分配する形で成り立っているミグラントとしての在り方から変わらない社会システムです。

稼げる物資や土地にも限界がある。難民の流入が激しくなるにつれて市民を押し込める形となって、その強権的なやり口に不満を抱かせることになってしまいました。

「代表」の担当声優の辻親八さんインタビュー曰く

こうありたいという人間のような、またこうあってはいけないような人間であり、非常に魅力的なキャラクターだと思います。シティの代表、支配者というキャラクターでしたので、傲慢(ごうまん)でカリスマ性を持った、だけどどこか優しさも持ち合わせているような味、雰囲気が出せればと思い演じています。

シティでの暮らしぶりも配分によって成り立つのであれば確かに温情のある部類で、外では宗教組織やら世紀末の荒くれ者共が略奪を企んでいる世紀末であるのはご存じの通り。

しかし、行政区に乗り込んだレジスタンスの部隊と共に代表も死亡して、彼自身が何を考え知り得ていたのか闇に葬られます。そして、生き残ったシティの人間たちはミグラントとして生計を立てていくしかありません。

無秩序状態であったシティを統制する存在もいなくなったことで、無秩序が再び全てを覆いつくしました。

人が住める場所は人数に対して小さすぎるから、人の住める場所を巡って争い殺し続けなくちゃいけません。汚れた大地は何も養えないので生産能力なんてありません。

いずれ限られた食糧、限られた水、限られた資源を巡って争い、強い者が全てを独占し、弱い者から死んでいく。

汚れた大地でヒーヒー言いながら生きていくしかない世界にも関わらず、自らの意志を貫こうとして攻勢を繰り返したレジスタンスを見かねたキャロりんことキャロル・ドーリー君の言葉通り、自らを滅ぼすと知りながら争いをやめられないってヤツですね。

ストーリーミッションはオーダーミッション時の回想形式という形式をとっているので、プレイ中は話が前後左右にブレまくって非常にややこしいですが、シティの崩壊を生き延びた凄腕の傭兵として名を馳せている主人公が物資を要求したり、挑戦者が後を絶たないのがV時代の話です。

例外的なのがMoHとゾディアック編ですが、この辺りは本編や資料集だったり他の方々が動画やらでもわかりやすい形で触れていると思うのでスルーします。

それではいつものように、本題であるこのサイト独自視点での「ACV」の世界観に関するお話を展開していきましょう。

ぶっちゃけ記事公開するかどうか散々迷ってただけあって、ただの願望だろ案件の考察成分を含んでる気は今回するので

それでも聞いてやろうじゃないかという方は、何卒お付き合いのほどお願いいたします。

アーマード・コアシリーズの作中用語の命名について

過去シリーズを辿ってしまうと、傭兵の呼称である「レイヴン」や「リンクス」に限らず「ファンタズマ」やら「フォーミュラフロント」や「サイレントライン」は副題を冠しているのと同時に、AC世界でも明確な意味を有する「作中用語」となっております。特に「コジマ」なんて見聞きしたら、おそらくファンはあの粒子の方を思い浮かべるでしょう。

また、4系統の作品は「ノーマル」と「ネクスト」という呼称が登場し、旧型ACと一部の存在にのみ扱えるハイエンドの新型ACを区別するための名として用いられています。それで何が言いたいのかというと、人やモノの名称はAC世界内でも特定の意味を有する「AC用語」として成り立っていました。そして、個人的にVで最も興味深かった点が、人物やモノに対する「本来の名称」や「特別な固有名称・専門用語」がほぼ出ていないことです。

従来とは反対に、便宜上の呼び名を取り入れる表現が目立ったのです。

一応、V世界の職業上の通称である「ミグラント」や「ストーカー」といった通り名はありますけどね。組織名としても「ゾディアック」や「ビーハイヴ」後のVDにおける「シリウス」や「ヴェルデ」なども生まれておりますが、基本的にあの世界では特定の「物」や「人物」を指し示すような用語は生まれておりません。

特に、目玉である人型兵器を「AC」と呼称するのはシリーズ伝統としてひとまず置いておくとして、AC用のAIである「UNAC」はともかくAC乗りを「傭兵」、「パイロット」というありふれた名で定義しているのは、シリーズとしても初の試みというか異例でした。

ACVでは「シティ」や「企業」「警備部隊」に「雇われ」等。あえて含めるとすれば役職を指す「代表」やら「主任」と「レジスタンスのリーダー」もそれにあたるか。ACVDでは「タワー」「財団」と「死神部隊」といったように、安直と言えるほどの便宜上の名称で指し示すようになっております。

「黒い鳥」が顕著でしたがモチーフとして存在するものを参照し、呼称するのがあの世界の通例だったわけです。

自主的な仕事であるために、これまでのシリーズの企業傘下にあったブリーフィングも開かれず、敵ACの名前に触れることもない。

そして、例外的なのは「企業」サイドの兵器名として、鳥である「SCAVENGER」や主任鳥もとい「EXUSIA」など特殊兵器の名称も資料集などで描かれてはおります。しかし、作中の人間サイドからしたら「未確認兵器」やら「あんなもの」という呼び名で留める形となります。

ACV系の物語の空気感がいつもと違っているなという感じられた方もおそらくとして、

シリーズにしては頑なに、特別な言葉を用いなかったことも影響してたと感じる部分はあったと個人的には思われます。

「名前」を与えられなかったアーマード・コア『V』

ACシリーズ自体がセルフパロディ豊富な作風なのでユーザーによって受け取り方は変わると思いますが、せっかく一新したはずの過去の文明や歴史が失われた世界観で、新たな用語を生み出したり使用を避けていたVシリーズは明らかに異質でした。

特に『V』のACは、かつて普及した兵器の発掘・再生品であり、荒廃した世界の技術では解析不能とされています。しかし、失われた時代の技術であることを差し引いても、大型兵器群と異なって個人が扱える範疇にある兵器にしては、機体サイズに不釣り合いな大口径の火力とそれに対応している堅牢な耐久性など、歴代シリーズからしても控えめに言って中々個性的な完成度を誇っているACです。キャロりん曰くたかがACと評価には至らない模様。まあ鳥さんいるか。

兵器全般は地上の人類にとって未知の発掘品に過ぎないので、これは致し方ないことでしょう。

しかし、4シリーズの『ネクスト』と似たような特別な言い回しでV系統のACを呼ぶことは一切ないとしても、ロストテクノロジーによって生み出されたにしては大層な代物です

仮にVDで示唆された4シリーズを言及してみると、ネクストやらの大元であるコジマ技術を抜きにしてしまえばアームズフォートはともかく、人型兵器に関してはノーマルと呼ばれたACもどき止まりでしたので、そこから別の進化を遂げたものだと仮定するのであれば、大したものだとしか言えません。

そこで個人的な見解として結論部分を述べると、『V』の「ACの存在」そのものが「極めて近く、限りなく遠い世界」的な構想の下地として用意されていること。それはVDによる4シリーズ関係の示唆とはまったく別で、歴史に含みを持たせられるようにしたこと。

そうして例の黒栗ことN-WGⅨ/Vと同様に、『V』におけるACもまた生みの親としては「この時代(世界)が生み出したモノではない」という表現をしたかったのだと感じました。

何を言いたいかよく分からないって?

俺もだよアンジー

とりあえず、あえて考えてみましょう。

Vシリーズでも「人型兵器の発掘品」を皆が口を揃えてOSの名称を取って「AC」と呼称していますが、

旧時代の兵器としてどんな戦いを乗り越えてきたのか。

『ACV』単独作としての設定について

これは反則に近いのでなるべくメタ読みはしたくなかったのですが、『特殊兵器群』に類する「EXUSIA」と「Liv」は『対特殊機動兵器』を想定したものとして『The AFTER』の方の資料集では分類されています。

おそらく、VDにおけるタワーに保管されていた兵器群とは別に、『V』時点における設定の名残としてこいつらは独自の存在として見ていいと思います。

4シリーズを示唆する技術的な系譜とは別のもので、動力源も例の緑ではなく赤という未知の物質を利用しているなど描写を訂正しなかったなどVDで描かれたタワーとは別種の、V独自の名残があることが伺えます。

皆勤枠の主任鳥

ただでさえ歴史の闇として語られなかったのに加え、VDが補足の役割を務めた結果としてfaとの関連性を強めてしまったのですが、このようにVの公式資料集である『The FACT』単体での設定の名残らしき部分、疑問符として残る部分が幾つか見受けられています。

タワー内部に封印されていた「ヘンなの」もといTo-605シリーズなど部隊での運用が前提とされている兵器は、地上の人類が発明したものとして描写されており、言うなればかつての地上の技術力は、無人兵器の方向性で飛躍的発展を遂げています。そもそも、圧倒的な個人の力を喪失させるためのハードウェアへの移行として、ファンタズマ・ビーイングという人間としての個を無くすことも、その一環に近かったはず。

それと比較すると、V時点で存在していた設定である「ACパイロット」として「戦いに勝利する」という指令を受けた『デザインド』が浮いているのも「先天的戦闘適正」を目指しているはずの実験体が、リンクスという「選ばれた身体的適正」をモデルとして意識しているのかというと、設定やニュアンスが微妙に異なる気はしますからね。

重ねて言うと、VDの方では主任鳥がかつての地上の企業製と思われる「特殊機動兵器を相手を想定している」という割と衝撃的な設定が書き起こされているので、かつて起こった戦争というのも、VDで示唆された4系統の世界を滅ぼした企業や人間たちとは、別の意図として存在していた「企業」およびゾディアックは、特に設定が混在するようになってしまいました。

このようにV自体が設定資料集でしか詳細が語られてなかった上に、VDでfaに路線を寄せて見せたのが『The Fact』『The After』二冊を読んだ印象なのは否めない部分は正直あります。

それはともかく、ACV単体でやりたい思わせぶりがあったけどVDで上書きしたので、ゾディアックを含んだ『V』製ACの出生や技術のルーツがよく分からないことになってしまったってことで話を続けます。

ACの装甲面と運用方法の偏りについて

新しいものを作れるような工業生産力をほぼ失ったVの時代で、汚染地帯を渡り歩いてACは発見されたとのこと。しかし、こいつが中々の曲者。

レーダー機能を持たないまま有視界戦闘という形式を採っている兵器で、リコンやスキャンモードで偵察してハッキングなど情報戦はこなせますが、役割としては直接戦闘と偵察のどちらが主な運用なのか見えない中途半端さ。

仮に直接戦闘に比重を置いていたとしても、姿勢制御システムから「高所から落下を想定している」にも関わらず、航行型のグライドブーストを備えるなど滑空することはできても、三次元戦闘に対応できるような飛行機能を持たない。

そのため、ほぼ低空飛行による地上戦や閉所、市街地での行動に特化しており、いくら部隊運用が想定されているとはいえ、巨大兵器どころか戦艦や飛行艇などもエクストラミッション枠として強大な存在として力関係に差がある。アンジー、こいつは本当に地上での運用を想定しているのか

それでも倒せる人は倒せちゃうんですけどね。

/レイヴン助けてくれ!化け物だ!(小4機)\

『V』のACはサイズや特徴的な重厚感などがよく取り上げられますが、肝心なのは重量脚部、重装甲化するにつれてTE属性の装甲に偏重するという点。重量逆関節やら四脚も見渡すと、装甲を重んじている脚部ほどCEやらTE属性に突き詰めてしまっている。

地上を見渡す限りでは現代でも再現可能なKE属性が流行っているからか、弾丸などもKE属性の武器が広く普及されている模様。言ってしまえば、現代のV系統のACは地上において不利な条件下に置かれている兵器に分類されます。

失われた技術として鋳造手段がないACの装甲の中でも、希少な筈のTE属性のパーツが己の弱点を晒すなど、再生された現代では逆風を受けている兵器。つまり、旧時代の戦争においてはCEあるいはTE属性が主戦場であったというわけです。

そして、KE属性とCE属性である実弾や爆発物よりも、熱エネルギーが多く飛び交う戦場なんて何と戦っていたんだよってなるのですが、ACVDによって猶更の話マジで何処で何と何が戦っていたのかという未解決事件が浮かび上がりました。

熱エネルギー(Thermal Enelgy)による旧時代の闘争

ここからも引き続きあくまで個人的な想像だとご理解頂きたい。そんな危険な思想なんてフロム作品では全部取り締まらなきゃダメだって?宮崎社長見ているか貴様の(ry

ACとは原則として軽量機体であるほど機動力確保のために装甲が捨て置かれるパーツバランスですが、特にTE属性が重量級のACに偏った理由付けとして「熱の分散と冷却に必要パーツの取り付け」で必然的にTE属性の装甲は重くなるというのは理解できます。

TE属性の武器は近距離での瞬間火力に優れるパルス系、中遠距離戦の射撃適性が高いレーザー系、至近距離でのダメージに特化したプラズマ系などあらゆる熱エネルギー系の武装が用意されており、プラズマミサイルもTE属性のVDでは再現されました。やけに武装も細分化されて進んでます。

流線的フォルムが特徴的なTE属性に偏っているACは無論、無人兵器群も装甲にはTEに偏りがあるものが多い。

特に「主任」と名乗る存在の重量級ACであるハングドマンもACとしては異端の機体なのに加え、「企業」の兵器群自体がTEというエネルギー技術に特化しているのも、地上の技術とは全く別に、彼らが誕生した場所の名残かもしれないと解釈できます。

そして、地上の旧時代の戦争を知っているような口ぶり、現存する人類の混乱に突如舞い降りた所属不明の「企業」は「代表」と接触。

VD系統のタワーによるエネルギー技術というおそらく既存の世界(fa)から生まれ出てきたような代物ではない技術の最たるものが、V系統AC代表であるハングドマン、そしてEXUSIAとLivでした。

珊瑚色?

自分たちに敵も味方もいないと語っている主任。

彼らと同様に孤軍奮闘の身で、ゾディアック組の語っている既に去った「友軍」とはいったい何だったのか。

死神部隊や財団など人間を基としている存在とは別に、「企業」と名乗る主任とキャロル・ドーリーという観察者組は、あらかじめ人間と世界を保護するように作られた人造的な存在として描かれています。

そして、地上で発掘されて再生されながら運用される「V系統のAC」はおそらく、火砲を用いた運動エネルギーであるKE属性が比重に置かれない、熱エネルギー技術を主戦場として発展してきた人型兵器であると考えることもできます。

それが考えられる場所といえば、どこでしょうか?

まさかね

繋がり云々は置いといて、初期設定やら何やらの匂わせがV系統ACに詰まっているかもしれないので

オマージュになりそうな歴代強敵ACネタが引き続き前作ファンサービスとして採掘されるかもしれない可能性、というお話でした。

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