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エルデンリング解説/考察 血の王朝の「真実の母」の暗躍について

ラダーンとの一騎打ちにてマレニアの花が開いた時、腐敗の病原菌をまき散らすと共に聖血が入り混じって生命のスープと化したエオニアの沼が生まれ、ケイリッドはそれに侵されていました。腐れ湖を見る限り、停滞こそ腐敗の本領。エオニアの沼が絶えず間欠泉を上げているあたり、あれはただの純正の腐敗沼というわけではなかったということが前回のおさらい(適当)

なにはともあれ、ラダーン戦で自爆特攻した際にマレニアの抗う意志とやらも機能しなくなったこと。そして、聖血を宿したミリセントという落とし子にマレニアの意志は宿り、貴腐騎士フィンレイが眠ってしまった抜け殻に近い彼女をミケラの聖樹に運び込んだとのこと。

腐敗の意志に侵されて花開くという意味では、主人公が訪れた時点ではミケラの聖樹も侵されている状態でした。

何も説明がもたらされていませんので不確定要素として、聖樹にて花開いたのはエオニアの姉妹という可能性もまだありますが、褪せ人との戦いにおいてマレニアが腐敗の女神となったことを考えると、彼女が二度目の花を既に開いていたのは間違いないです。

抜け殻となったミケラの聖樹

最深部ではマレニアその人が眠っているのとミケラの不在が明らかにされ、マレニアの宿痾を解決させるために姿を消したきりだとして、彼女は兄を待ち続けていました。

新たな律を掲げられんとするミケラの聖樹に集うのは神託の使者たち。腐敗の女神もまた神としてゴーリー曰く新しい律を掲げる存在とのことで、使者たちがどちらを嗅ぎつけたのかはひとまず置いておく。聖樹を侵しつつある朱い腐敗を見ながら、いずれにせよ乗るしかない新時代のビックウェーブをビンビンに感じていた模様。

神の手による新たなる律とは、既存の律を修復したりするエンディングのルート毎の一工夫ではない規模で、壊れた世界の犠牲となった妹をいざ救わんと新世界を実現させるためにミケラは旅立った。

心身共に腐ることを余儀なくされるマレニアはそう信じて帰りを待っていました。

みんな大好きモーグウィン王朝

どうやらギデオンさんは女王マリカのお言葉を受けていたようで独りで納得してますが、プレイヤー視点では無茶苦茶話が飛んでいるのに加えて、異父兄弟と呼べる彼を伴侶にせんとするモーグさんの浮かれっぷりにドン引きするという。

とりあえず、彼はモーゴットさんの忌み子の兄弟で、地下に幽閉され続けた果てに真実の母の啓示を受け、血の王朝を立ち上げる野望に目覚めたらしいです。密かに悪だくみして王朝を築いていたと言いますが、従軍医師たちを攫って唯一適性があった「白面のヴァレー」を傘下に加えるなど意外とアクティブな君主。覇道を唱えながら人材を重んじる曹操タイプ

ヴァレーを通して褪せ人を「血の指」に勧誘し続けて王朝の勢力を広げ、しろがね人を保護して血を授けたり、人に限らず狭間の地で忌み嫌われる忌み子も宣教師を兼ねた「血の貴族」として受け入れるなど、地上で拒まれてきた種族に対しても布教活動は精力的にやっていた模様。

あの自分に厳しいモーゴットさんが裏切り者として数えていなかったあたり、その正体が掴めなかったというか、自分の忌み鬼としての活動と似たことを、地下深くに幽閉されているはずの兄弟がやっているとは思い至らなかったのでしょう。

愛が無い二本指の身勝手さに愛想を尽かしてるヴァレー曰くモーグは力と意志と愛がある御方であり、「貴い血」を宿すことで血の王朝の一員となれる。

そうして褪せ人の爪に輸血し、身体を侵している「貴い血」を貰い受けています。

これが「凶血」らしいですが、他の面子を見る限り血の祈祷やら「呪われた血」を帯びたお手製の武器を与えられているらしく、功績を立てたらモーグ様直々のご褒美があるようです。一人だけは真正面から王朝に喧嘩を売って、血の君主直々に待ってくれい掛けられた翁もいますが。

血の君主モーグの、聖なる祈祷

姿なき母の身体に腕を差し込み
その血炎を前方に撒き、炎上させる
足を止めずに使用できる

地の底で、傷を望む真実の母に見えた時
モーグの呪われた血は炎となった
そして彼は、生まれついた穢れを愛したのだ

祈祷「血授」より引用

葦の地で鍛えられた双薙刀
純紫の血指、エレオノーラの獲物

一陣の旋風のごとき卓越した剣技は
今は呪われた血に汚されている

「エレオノーラの双薙刀」より引用

武器に力を与えているという意味では「呪われた血」を付与しているみたいですね。

じゃあ、炎属性と出血属性のハイブリットが「凶血」の力なのかと結論付けたいですが、ここで立ち止まって考えてみなければならないのが同じく血の力を発現させている「茨の魔術」についてです。

「真実の母」は『傷を望んでいる』

エルデンリングにおける杖とは曰く先端に輝石が埋め込まれたそれは魔術を使うための触媒となる、と書き記されているために輝石の有無が大きく関わるらしいです。

そして、異端である咎人の杖を見るに、本来なら「輝石は魔術に類する力」であるにも関わらず「信仰により魔術補正が強化される杖」となっています。そのカラクリ仕掛けとして「血を輝石に変換」して魔術を使うための触媒として行使している部分がありました。

燻る枯れ木の先に贄を刺し
その血を輝石となす、異端の魔術杖
それはもはや、呪術に近しい

知力ではなく、信仰により魔術を補正し
特に、茨の魔術を強化する

「咎人の杖」より引用

血肉を輝石となすというのは、レアルカリアに入学したりセレン師匠に弟子入りして一通り調べ物をすればなんとなくわかると思うので、ここではひとまず置いておきます。

忌み子であるモーグの呪われし血は「真実の母」に見えることで「炎」を帯びるようになりました。

しかし、それとは別に贄の血を通して力に変換できるという、全ての生き物の血そのものを触媒にできるのがおそらく「真実の母」の本来の力です。血の輝石によって強化される「茨の魔術」とは「血の魔術」であり、それは信仰によってより強く顕現する力となりました。

茨でその瞳を潰された咎人たちは
永遠の暗闇で、血の星を見出したのだ

魔術「罪の茨」より引用

真実の母やら血の星と呼び方はどうあれ、血に力を与えているらしいそれがモーグにとっての「真実の母」であり、ある咎人たちにとっては「血の星」であるということ。そして、その姿なき神との交信にはある程度の信仰が求められる模様。

「茨」というのが狭間の地において何を意味しているのかを調べてみると、咎人や罪人を罰するためのものらしいです。

巻き付けられた、錆びた鉄茨は
咎人、特に死刑囚であることを示し
ローリングによりダメージを与える

エレメールは、数多の師範、商人たちを殺し
鈴玉狩りとして恐れられた

「鉄茨防具シリーズ」より抜粋

赤い刺がびっしりと生えた太鞭
火の僧兵たちの指導者たる、司教の得物
罪の茨を模し、激しい指導鞭撻に用いる

高い出血効果がある

「茨鞭」より抜粋

黄金樹の世界は「鋭い枝」や「茨」によって罪と罰を象徴しているらしいですね。

ご指導ご鞭撻として茨鞭で血を流させる人血は狭間の地の肥料になるので、まさに一石二鳥というぶっ飛びロジカル。そりゃただでさえ誘惑も多いブラック環境に雇われ続けてる火の僧兵も逃げ出す。そんな感じで調子に乗って罪人や咎人の目を潰したら何が起きたのか。

瞳を潰された咎人は血の星を見出していると言いますが、

実はどっかで似た事例が起きています。

狂い火も、元々はシャブリリの潰された瞳から見出されており、潰された瞳を介している病でした。

前回の記事の内容のおさらいにもなりますが、狂い火を宿して発狂する条件は「褪せ人」であること。

そして、悲嘆や絶望といった負の方向に感情を引きずり込む必要があります。

酷い責問に際して、被せられる覆面
恐怖を増し、痛みを鮮明に感じさせる

自らが発狂状態になったとき
攻撃力が高まる

その責めは、答えを求めるものでなく
故に、永遠に終わることがない

「黒団子」より引用

坩堝に回帰して全ての命が溶け合うこと、決して産まれてきたくはなかったという願いに応えることが「大いなる意志」と袂を別った三本指の導き。苦痛に満ちた悲鳴を上げることで、その存在に三本指のアンテナが反応するわけですね。

ここまで語ってきた内容を振り返りながら結論付けると、おそらく「狂い火」と「凶血」は別種ではあるものの、傷を通して宿るという原理原則としては全く同じ。

つまり、瞳が潰されて「血の星」あるいは「狂い火」を見出すというのは「傷口に菌が入り込んで化膿する」というごく単純な理屈によって病が発症しているのです。

感染源として他者を媒介にしていない「狂い火」のシャブリリと「血の星」を見出した咎人たち、それぞれが外なる神を見出すことになったのは瞳を潰した傷が共通の原因です。そして、暗闇を得ることも共通項か。「朱い腐敗」「狂い火」と同様に外なる神による病原菌の一つに「真実の母」による「凶血」が並んでいるわけです。

「狂い火」はシャブリリのブドウと呼ばれる黄色の瞳、「凶血」を授かった者はいずれも赤い瞳を宿すようになります。

血を介して力を与えることができる「血の星」とはモーグではなく彼にも力を与えている「真実の母」もとい姿なき神であり、それがもたらした病原菌によって力を与えられ、輸血による血液感染によって血の王朝の眷属が増えているということ。

「狂い火」もまた、巫女であるハイ―タのために褪せ人が出会う前から爛れた瞳であるブドウを信者に貢がれているので、狂い火村で巨大な瞳を形成するなど確実に感染を広げ続けており、「狂い火の王」が狭間の地に君臨することで彼らの願いは成就するという。そもそも、最初の感染者であるシャブリリが故人でありながら、ブドウを宿した死者の身体に乗り移るという特異的な力を得ているあたり「狂い火の王」も三本指を宿してしまった褪せ人が別の存在に作り替えられているのが狂い火の王エンドだと思われます。

メリナの言う「死のルーン」により褪せ人に引導を渡すというのも、彼/彼女が病原体の苗床として死にきれない黄金のゴッドウィンや朱い腐敗の神話にある「蠍」に近い状態になっているからか。

なにはともあれモーグが封じ込められた地下牢然り、暗闇の中でこそ祈りや呪詛は強くなり、それに外なる神が応えるなら、人の思念そのものに外なる神に類する力を引き寄せる習性があるのかもしれません。

苦難や絶望の呪詛を唱えると狂い火は反応しますが、「血の星」もまた傷つけられた罪人や咎人の祈りに呼応しているのか。皮肉にも、自分たちを苦しめてきた茨を象った魔術を行使できるようになりました。自傷に加えて出血累積というリスクはありますけどね。

ただ、「貴い血」をヴァレーのように輸血されたらどうしようもありませんが、モーグ様に血を浴びせかけられたり、出血武器や祈祷で身体を切り刻まれることで発生するのが「状態異常:出血」

あれは褪せ人の黄金樹の恩寵によって作られている身体の瀉血、つまり忌み子やら亜人であろうと最初は黄金樹によって生まれ出た命として、僅かでも賜っている生命ある肉体が呪われた血を掃き出そうとする拒絶反応が理由付けと思っていいでしょう。身体の作りが違う赤いしろがね人たちの攻撃方法を思い出してほしいのですが、彼らのしろがねの凝血も適応できているように見えておそらくそれに近い反応を起こしてます。

以上が、狭間の地において「出血状態異常」が生きとし生けるものに対してあれほどの強さを示していたかっていう「真実の母」による細菌メカニズムのお話でした。

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