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【ACfa】フォーアンサーに「答え」はあったのか。人類とは誰だったのか【ACV-新たな時代へ】

過程は違えど結末は同じ

とりあえず一通りはお話しできたと思います。

企業連≠オーメル・サイエンス社

faのストーリーを語る上では、後々思い返してみたらおかしくないか的な要素がいくつも浮かび上がってくるのですが、特に無視されがちなのが企業連トップであるオーメル・サイエンス社の動向と暗躍。

彼らは企業連内部の地位としては前作の戦勝国なのもあってトップの座に君臨していますが、だからと言って、企業連の意向まで思いのままというわけではありません。コジマ技術の独占を目論んで対抗馬であるレイレナード陣営に喧嘩を売り、リンクスの質にも重きを置いていたのにもかかわらず、自社の最高戦力を兼ねたオリジナルであるセロを破ったアナトリアの傭兵に対する恐怖心のあまり、不得意分野であるはずの大多数の凡人によるハードウェアであるアームズフォートを戦場の主役として強引に据えてしまいました。

その結果、崩壊した軍事企業BFFを吸収して強大な資本力を形成したGAグループの台頭を許してしまったこともあり、経済戦争という面でもインテリオル=オーメルで徒党を組みながら最強のAFアンサラーを建造する必要があったことなど、地上を犠牲にする以前として企業間のパワーバランスの問題を抱えていたこと。

所属リンクスという面でも最強の切り札であったセロを失い、老兵ローディーや王女リリウムという敵対陣営の新たなトップランカーを据えられたことに張り合おうとして、吸収したレイレナードのツテを辿って正式なリンクスとしてオッツダルヴァをランク1として招き入れるなど、割とギリギリでオーメル社は威信を保っていました。

クレイドル体制とは「汚染された大地」と「イレギュラーによる脅威の手」から逃れるため、企業の命を保護するために築かれた揺り籠。

今考えると当たり前ですが、前作でバラバラだったはずの全企業の意向が一致団結したからこそ築かれた体制です。

あのまま地上で燻っていた場合は各陣営が己の命惜しさのあまり、自社の判断に基づいて好き勝手に宇宙進出やら妨害工作やら独自に始めると足取りが揃わなくなるということは明白で、それこそアサルト・セルを打ち出した国家解体戦争以前の時代を繰り返すことになってしまいます。オーメル社はそれを念頭に置いていたというか、ここらで戦争は手打ちにして皆で「宇宙に出ようぜ(Let it go around the cosmos)」と言い出して総スカンを食らったレイレナード=アクアビット社の前例を学びとしていたので、流石に権力を握ることが叶った彼らは重く受け止めていました。

だからこそ、レイレナードの亡霊であるORCA旅団を使って外敵(イレギュラー)の存在を演出し、クレイドル体制を築いた成功体験に基づいて企業連が一致団結しながら健全に宇宙を目指せるように、過去の秘匿と自分たちの命の保障というORCAとの密約に基づいた「回りくどい宇宙進出計画」を巡らせていた黒幕というのが、これまで語った内容です。

まあORCAルートの場合は、生き残った首輪付きが旅団長テルミドールの言葉を真に受けてすべての人を大地に引き摺り下ろしちゃったので、老人達も血眼で宇宙を目指そうとする「成長」と「野心」というお題目のカオスな群雄割拠の時代になっちゃったわけですけどね。

企業連ルートも、ORCAの脅威が去って尊い平和は守られたと何事もなかったかのように企業連が宣言するエンディングを迎えたわけですが、クレイドル体制が成立している間の天下であることは変わらず、トップランカーのオッツダルヴァを唯一失っているなど、オーメルにとって気持ちの良くない結末を迎えているというのは、ここまでついてきてくださった皆様のお察しの通り。

仮にこの企業連ルートの後に宇宙開発に向けないかと話を切り出したら、過去に潰したレイレナード社や内通してたORCAの件を持ち出されるために、企業連の権力抗争とセットである「成長」と「野心」という争いの時代は避けられないので、オーメルの権勢もかつてのレイレナードと同様にそれまでです。

「企業連」という統治者は幻想であり、人間が己のエゴで争いを生む生き物である以上、その集いが管理者を名乗るには相応しくなかった結末だったと言ってしまえば、それまでですけどね。

オーメルのランク1の動向を整理してみましょう

企業連もとい「企業」という呼称で括りがちですが、オーメルは本編でも明らかに他の企業たちと異なる思惑をもって動き続けていたことは、随所に描写され続けてきました。

あのラインアークでのホワイト・グリント戦は両ルート共に実質的にオーメルが取り仕切っていました。
企業連として依頼を持ち込んでいながら他企業の介入を許さず、あの戦いをもたらしたわけです。
言ってしまえば、オーメルの最高戦力を来たるべきORCAの争乱に投入することを避けることが叶い、ラインアーク側も企業の目を逃れて戦力を蓄える時期に入れるなど、各々の損得勘定などをひっくるめて舞台を整えたメルツェルの思惑があったとすれば、すべて彼の掌の上の茶番劇になっていたわけですね。

そして、経済戦争によって疲弊した世界に現れたORCAによる動乱。これも何故か戦局がどちらに傾こうと密約は変わらないという点。GAグループ傘下となったBFFのリリウム・ウォルコットを通して元GA本社のビッグボックスの情報が何故かオーメルによって流されているなど、今考えてみたら作為的な思惑や裏背景があったのは明白です。

ORCAに肩入れした場合の霞スミカも、テルミドールの裏切りにはブチギレ案件だったのですが、もともとレイレナード近しいインテリオル陣営だったこともあり、ベルリオーズ筆頭のかつてのオリジナル達の本意をようやく理解し、その遺志を継いでいるという理解があったのでしょう。

しかし、実際のところ少し冷静に考えてみればわかるように、ただの反動勢力に過ぎないORCAに人類を引っ張っていけるような力は持ち合わせてはおらず、それは強大な資本を行使できる企業の役割。

腐りつつある世界の命運を懸けた企業vsORCAという青写真はすべて酔っ払いたちの幻想でした。

密約の存在により、老人たちの命の保障と彼らの罪であるアサルトセルの存在も秘匿されたまま、経済戦争による内向きの消費ではなく宇宙という外の開発に向けて資本を費やす。当然、アームズフォートも製造されなくなり、戦いの主役の座にネクストが返り咲く。後の世の争いを収める力として、リンクスは再び必要とされるようになります。

だからこそ、人類の黄金時代をもたらすためテルミドールは死を選び、オッツダルヴァは最悪の裏切り者の汚名を被ってまで、生き続けなければならない。

ORCAは組織として自死しながら、革命に殉じた者から気高く先に死んでゆく。本来はそういう計画です。

「当然の報いだ。貴様は、ORCAの名を貶めた」

虐殺√「アルテリア・カーパルス占拠」対ステイシス 被撃墜台詞

オールドキングと首輪付きの独断によって彼らの名を貶める虐殺行為は見過ごせなかったあまり、計画を破棄してオッツダルヴァとして企業への帰還を果たしたテルミドール。

「増長だったな。貴様如きがORCAを気取るなど。後は任せておけばいい」

ORCA√「アルテリア・クラニアム襲撃(HARD)」対ステイシス 被撃墜台詞

全てを託すと語って見せた同志であったはずの首輪付きに辛辣なのは、理想に溺れた酔っ払いの一人にさせてしまったことから、自ら幕を引かねばならない彼なりのケジメなのか。

人類を背負う覚悟を持った存在とは「何者」なのか

ウィン・Dはオッツダルヴァを「深く潜れる男」だとして、何らかの目的で行方をくらましたと気付いている節はありました。

企業にいた頃の皮肉屋な物言いや傲岸不遜な振る舞いの中にも、思い詰めたような何かを感じ取らせるものがあったのか。

未使用音声でも、二人の距離感は近いものを感じさせます。

首輪付きに関しても同志となるより、ウィン・Dと共に立ち塞がることを選んだルートの方が「腐ることのできない者たち」としてテルミドールが敬意を見せるあたり、彼は彼で老人達と密約を交わしてまで目的を果たし続けるなど、テルミドールとして皆に見せていた姿とは矛盾した道を歩むしかなかったことに、どこかで自己嫌悪感を抱いていたという思いも窺えます。

クラニアム戦では殆どオッツダルヴァに近いニヒリズムな姿を晒すなど、矜持を持ったまま生きていける彼らに対する羨ましさがあったのかもしれません。

他人のために生きることができなかったらその輪に入ることができず、皆が革命の成就を同志に託して去っていく。

これは最早、黄金時代を鬻ごうとするメルツェルの革命であり、同志たちに激励を贈りながら死を看取り、時代の潮流を見届けることしか、旅団長テルミドールの役目はありません。それもそのはず、テルミドールの生は求められておらず、彼の本当の役目は、その後の時代にこそあるのですから。

しかし、彼はメルツェルと違って、人間は自分たちが思うほど高潔でも理想家でもなく、遠い未来の事なんか考えられやしないのは、オッツダルヴァとして企業の内に入って自覚があったかと思います。

何故なら、人類を導いてきたのは一握りの天才だと思えて、その天才たちが一時は導くことも出来ようが、人類そのものを変革させることは出来ない。世界を壊したリンクス戦争という前作の結末、クレイドルという揺り籠を与えられて世界がこの様なら、たとえ人類の一部に過ぎないORCAが革命を成し得て宇宙に出れようが、本質的に「人類の精神は不変である」ということ。

オッツダルヴァもそれを悟っていたからこそ、今を生きる人命を守らんとするウィンディーたちの答えそのものを否定することはできない。

「悪いが、譲れないな。だが、覚えておこう、お前の答えも」

企業連√「アルテリア・クラニアム防衛」対アンサング 被撃墜台詞

しかし、緩やかに腐り続けている人々に光を示さなければ、いつかは諦観の果てに壊死してしまう。

ウィンディーたちの答えは、結局のところ延命措置に過ぎず、いずれにせよ人類全員が遅かれ早かれ死ぬことには変わりない。

たとえ自分に打ち勝つことができても、彼らは助けた命も背負い続けることになる。死ぬはずだった者たちが生き残ることで生じる結果の全てに責任を持つこと。人類全ての命を背負わなきゃならないが、その覚悟をおそらく彼女たちは持ってはいない。これをウィン・Dの甘さだとしてORCA派のファンからも指摘されていますね。

人類の未来を切り開く覚悟と、そして生き残った人類が再び繁栄できるだけの計画とそれを実行する手段をもって、ORCAはここまでやってきました。

生死不明に向けた茶番劇であるはずのホワイト・グリント戦におけるフィオナに向けたアナトリア失陥の元凶という唐突な容赦の無い嘲笑など、いくら水面下では協力関係にあるとはいえ過去の因縁からなのか、彼等にも思うところはあったのでしょう。

なんの覚悟も計画もない無秩序な力を持った「破壊者」とは違い、明確な意思を持って世界を変えること。事を成そうとしている「意思ある者たち」の邪魔立てを繰り返してきた結果が、この世界であるということ。「人類」のために「人の死を厭わない存在」は、決して、彼に限った話ではありません。

全てが夢幻であろうと、人類は救済されなければならない、救いを求めて祈り続けなければならない。

停滞した人類に傲慢でありながらも、人は切望することを忘れてはならないという祈りの歌。

あれは、まさに複雑な彼の本質であったのでしょう。

Remember

7月、多くにとって突然に、それは起こった。

グルジア語「28」

心しておけ、お前たちの惰弱な発想が人類を壊死させるのだと

オッツダルヴァとは、自ら(テルミドール)を殺して人類を導く「管理者」になろうとした人間の名でした

人類など、どこにもいないさ

一つの命を想い、慈しみ、助けようとする。

その想いを愚かと呼んでしまうのなら、それは私たちが歪んでいて、世界がおかしいということ。

その上でも、緩やかな滅びに抗おうとしているオッツダルヴァが正しく、ウィンディーは甘いと考えたのは筆者もその一人でしたが、時間が経った今だからこそ、違う見方ができております。

そもそも考えてみたら、人類全てを背負うなんて何者にも出来る筈がありません。

人間は誰もが強く正しい道を選べるわけじゃなく、仮に、それを考えられても一時の快感やエゴでその道を選んでしまう。

最良の未来の事なんか考えられないし、それを常に選べるように出来た命なんて存在しない。

今まで人類はそうやって生きてきた。

これからも、世界がそれに付き合っていくしかないのです。

ウィンディーの答えとは、企業ともORCAとも根本的に異なっている「一個人」の願い。

人が理不尽に死を押し付けられるのではなく、せめて「好きなように生き方を選び、死に方を選べるようにする」という、人が人らしく生きるための自由を求めたものでした。

「人類」という保護を必要としているペットとして見くびっている根本的な誤りなど、「管理者」を自負している選ばれた存在によって、争いの歴史は結局そこから繰り返される。

皮肉にも、これは後の企業連や時代が「証明」して見せてしまいました。ORCAと違って元からイレギュラーである古王も異常者扱いされがちですが、革命の本懐として「虐殺」を選ぶなど、その結論に行き着いてたような気もします

そして、自分たちの生き方を選び、自分たちの幸福(マイブリス)を守るために戦うというのは、経緯はどうであれ、遠い未来に受け継がれている人間たちの「答え」でもあったと呼べるでしょう。

お前の答えだ。私はそれでいいさ。

「アルテリア・クラニアム防衛」セレン・ヘイズ ミッション完了後暗転時

――アタシは、もう嫌なの。誰かの思惑で生きるなんてさ。

――だから、足掻くだけ。やりたい事をやるだけよ。

――やりたいことって、例えば?

――そんなの決まってるじゃない。

「人間」の可能性

人々よ、我々は戦うべきだ
立ちはだかる全ての敵となる、たとえそれが何者であろうと 我々自身の力によって排除すべきだ
それが我々の愚かしさの証だとしても それこそが我々自身が生きている、我々が生きるための、最後の縁なのだから

チャプター00 「代表」の演説

そして『V』へ

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