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『アーマード・コア』シリーズ考察 あの緑の粒子はどこから来たのか

国家に引導を渡したのは緑の粒子

水素吸蔵合金が開発される程度には未来、未だに宇宙進出が叶われていない程度の現代に近い近未来の時代。

テロや暴動やらの世紀末で統治能力を失った国家に代わって、国家解体戦争を起こす企業達。

この荒れ果てた世界を、俺達が何とかしてやると彼らは国家にケンカ売った。

この戦争において、企業の勝利を掴ませたのが新型ACであるネクストAC(Next AC)

この兵器としての特徴並べてやると

① コジマ粒子という粒子をバリア状にして装甲にしたプライマルアーマー(PA)
② 大量のエネルギーを消費して推力を生むクイックブースト(QB)
③ コジマ粒子を利用して高速巡航するオーバードブースト(OB)
これらの強みというのは、旧来の兵器とは一線を画していたのだった。

ネクストの持つ火力はどれも致命傷、通常戦力の火力はPAで無効化。

さらにはQBで火力を当てるのも困難。

OBの存在で追う側としても逃げる側としても絶対的有利。

そんな超兵器が26機も企業側戦力として投入されるという理不尽な暴力で、国家は壊滅して企業支配体制の世界が確立されました。

それが、パックス・エコノミカ。

この辺は皆も流れを掴んでると思います。
そして、このネクストを製造したのが六大企業、

  • GA (Global Armaments) ※GAヨーロッパ=GAE
  • BFF (Bernard and Felix Foundation)
  • インテリオル (INTERIOR) ※企業連合を組んでいたレオーネメカニカとメリエスがfaで合併しましたが、大差ないので彼らグループはこの表記とします。
  • オーメル (OMER Science Technology) ※認知度の高いローゼンタールが盟主だが、実質は傀儡政権。
  • レイレナード=アクアビット(Rayleonard=Akvavit)
  • イクバール (Eqbal) = アルゼブラ (ALGEBRA)

これらの企業がネクストAC開発に着手。

機体制御技術には、コロニー・アスピナとコロニー・アナトリアが関わっています。

企業間によるコジマ技術の主導権争い

コジマ技術とは、その名の通りコジマ粒子を利用した技術。

コジマ粒子は緑に輝く粒子で軍事用途に幅広く使える新物質でした。

レイレナード=アクアビット、オーメルはこのコジマ技術の独自開発に成功したという企業で、彼らによるコジマ技術が無いと、技術の塊であるネクストは作れないという事で大変重要な企業群。

この三社は、他の企業にコジマ技術を流し、コジマ兵器の開発に力を注ぎました。

彼らが上手いのは「コジマ技術を使った製品を販売しても、自社のコジマ技術自体は売らない」というやり口。

例えば、内装のジェネレーター元祖はレイレナードだが、技術に関わる基幹部品はブラックボックスとなっていて他企業では解析不能。
つまり、レイレナードがジェネレーターを売ってくれても、他企業の見様見真似によるジェネレーター製作しか進まないカラクリとなっていました。  

よって、ネクストの部品によって製造企業が偏っているのは必然でした。
当然、ネクスト技術を手中にしていると言っていいレイレナード=アクアビットとオーメルの主導権争いは熾烈化。
この争いがリンクス戦争に繋がった一因となりました。

原因は他にも色々事件起きていましたが、これが大きい理由の一つと言えます。

話を戻すと、ネクスト開発でもう一つ重要だったのが、企業に属さぬアスピナ研究所とアナトリア研究所。

彼らはネクストの中身、特にAMS→IRS→FRS→ACSというネクストの機体制御に関わる部分を主に研究しており、これを噛み砕いて説明すると、操縦者から送られる情報を解釈させ、機体レベルで最適化。挙動の命令を各パーツへ伝達させ、それをまた各部レベルで最適化。それを物理的に稼働させて動くというもの。

つまり脳波コントロールできる。

この操作技術を彼らが生んだのだ。

しかし当然、コジマ粒子技術の塊であるネクストは使ってるだけでどんどん身体が汚染されていく。さらに、このAMS適正が高いならばともかく、低い者の大半は情報の負荷で頭がおかしくなって死ぬ。当初の26人というのは、ネクストを秘匿してきただけではなく、それ以上に操縦者であるリンクスを確保できた数を表してると言えるのでしょう。

そして、ここから本題と言っても過言ではない疑問点。
まず、この世界において未だ解明されていない部分であり、

シリーズ最大の謎がコジマ粒子です。

コイツが非常に気味の悪い存在でした。

技術開発史におけるミッシングリンク

この新物質、新粒子の発見はまだ解ります。

コイツの問題は、新物質としてのそれに対する「研究アプローチの仕方」や「コジマ技術製品の開発」の流れでした。

科学というのは歴史の積み重ねであり、新しいモノは地道な研究の末、既存技術の延長上にあるものです。

新たな技術の塊が脅威となるとき、決まって技術としての進化の系譜ができていました。ACそのものも同様で、時代を重ねるごとに既存パーツから最新の型式が出てくるようにです。

発想の転換から新技術を応用した新規商品が生み出されることもあるでしょうが、それはあくまで科学的な取り組みによって研究が進められたことによる応用によってであり、既存の流れから逸脱した物がいきなり完成するのは不思議としか言えません。

これがどういうことを言いたいのか、整理していきましょう。

仮にコジマ粒子の発見が偶然として、作中ではコジマ技術の完成品としてネクスト開発の先駆けであるのはレイレナード社とされています。

実際彼らは「動力源」として利用できるコジマ粒子を活かしたジェネレーターを生み出し、各企業がそのレイレナードによるジェネレーター開、エネルギー転換技術を取り入れながら改良を加え、自社製品として手中にしています。同盟していたBFFのスフィア発電施設がまさにそれです。

しかし「ネクストAC」そのものに至った技術はそれが通用しないのです。

本来であれば、発見された物質は机上で存在証明して実在を確認。

実用化に向けてローコストかつ容易な制御方法を研究し、製品にしていくものです。

しかしこのコジマ粒子、いきなり企業傘下でネクストという唯一無二の最強兵器として国家解体戦争に姿を現してデビューを飾りました。

大型発電施設やMTのような大型且つ雑多な機械に取り入れるのではなく、兵器であるACそのものの動力源にコジマ粒子を使用し、スペックを飛躍的に向上させました。つまり、前触れもなく完全ワンオフオーダー製品が現れたのです。

製品と言っても、新技術は運用実績を元に徐々に実用化されていくはず。

そんなネクストの先駆けになるような他の実験兵器や開発品は全く見当たりません。

それどころか「プロトタイプ・ネクスト」という新技術の塊みたいなのが出てきているのでした。プロトタイプという名を冠しているから勘違いしやすい点ですが、順序としては「ネクストAC→プロトタイプネクスト」です。

既存ネクストACの更なる試作品であって、ネクストACよりも先駆者としての兵器は登場していませんでした。

コジマ技術開発初期としての「製品」は作中では語られていない。

あえて挙げると、コジマ技術は先ほど述べたような「発電施設の動力源 (BFFのスフィア施設)」等に応用されていますが、元々これはBFF等といった企業もコジマ技術に後れを取っていたからこそ、先駆けであるレイレナードから製品を買い取ってこぎつけた技術なので、これらはネクスト登場以降の産物でした。 

先にネクストACなんてものを登場させてから、発電施設やPAによる施設防衛、コジマを応用したアルテリア施設やクレイドルなんてものを作っており、普通は順序として逆のはずなんです。

このように科学的視点、技術史におけるミッシングリンクという一面。

何故、企業はコジマ粒子でネクストという飛躍した最強兵器をドンピシャで開発できたのか。

お手本でも見ながら頑張って作ったんでしょうか。 

国家解体戦争の7年前に発見された新物質。発見者の名前を取ってコジマ粒子と命名された。

宇宙からの落とし物だったりしませんかね

コジマを片手に国家に挑んで勝利を掴み、コジマ技術を巡った管理経済戦争によって世界を破滅させた企業。

こうなるとコジマを発見した研究者の行方や、ネクストに関する第一人者であるというイェルネフェルト教授が気になります。

しかし、後者は4の物語開始時点では既に亡くなっている。

そして、歴史を変革させたコジマ博士は姿形も見れないという、手掛かりは完全に途絶えたわけです。

まるで、時代の進歩を後押ししたような異物は唐突に現れる。

そして、人類の発展に貢献した後にそれは悪魔と交わした契約の如く、滅びの選択を迫りました。

結局のところ、誰がどう使おうと人類の手に余る代物。

それがコジマ粒子でした。

クラウドワークス

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