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【ACfa】我々が知るカラードのランク8「王小龍」とは何者だったのか

BFFの影に潜み続けた謎の老人

本社機能を持つ艦船であるクイーンズランスの破壊に伴ってBFF社は衰退したものの、フォーアンサーの時代ではGA社の支援を受けて再興しました。

そして、その立役者として「王小龍」は名を上げ、カラードにおいてもBFF代表を兼ねた企業の総意の伝達役としての顔を持つようになる。

ここでよく言われているのが、アンシールやウォルコット姉弟がそうしたようにレイレナードに合流したり、BFF残党の抵抗活動に関知しなかったこと。

そもそも、本社が襲撃されるという緊急事態でありながらリンクスを迎撃に当てなかったクイーンズランスどころか、他の戦場でも見かけることはなかったこと。

対BFF戦線に投入され続けたアナトリアの傭兵も彼と直接的な交戦をすることもなく、BFFの急速な復興によって一気に成り上がっているなどこれらの要素から、アナトリアの傭兵を利用してBFFの首脳部を排除し、実権を握ったなどの黒い噂が絶えない人物となっています。

とりあえずこの立ち回りで他の企業の面々も思うところが多いということでしょう。レイレナードに肩入れしても見捨てる形になったのはインテリオル陣営も同様なので人のこと言えない気がしますが。

乗機ストリクス・クアドロの機体構成の変化

前回の記事で述べたように新たな事業開拓にBFFは力を入れたことで、アームズフォート分野以外でも様々な利益を生み出すことができました。ネクスト分野においては自社製品の改良が顕著で、BFFの前衛後衛に分担する標準機体の設計思想は、かつてのウォルコット姉弟の戦闘スタイルが礎となっており、赤い狐と緑の狸のウィスとイェーイもそれを採用するなど「個人に依らない」新時代のリンクスの象徴ともされています。

これに合わせたのか乗機ストリクス・クアドロの機体構成がfaでは変化し、スナイパーライフルの最新型式である061ABSRという接敵することを考えていないような兵装に持ち替え、電子戦用のECMは前衛であるリリウムに委ね、自身は長距離用の連動ミサイルを積んでいる。

近づかれる前に的として一方的に嬲り殺すコンセプトというか、連携を想定してると言いながら自身が当てる火力のみを追求した後衛として徹する戦術です。そのくせ、頼りの前衛を務めるリリウムを置いて逃げるといった行動が、プレイヤーから嫌われ者となる要因であると見ていいでしょう。

ただ、どさくさに紛れて適当に流されているのが、王小龍のリンクスとしての実力と評価。

冷静な視点でこの男の評価をしてみようとすると、AC4では国家解体戦争時の功績の大きさ順にNo.1~26までの管理ナンバーが与えられており、そのナンバー自体は彼が「ただのリンクスとして勝ち取ったもの」であるという点にご注目。

オリジナルリンクスとして評価を受けた当時、彼はNo.8の座を手に入れている。

No.8のオリジナルリンクス、メアリー・シェリーの後見人としての姿

ファンの間では、陰謀を画策する腹黒い爺さんというイメージが強すぎて、リンクスとしての実力を軽視されていることが非常に多いです。

前作では姿を見せなかったことや、人となりに触れる機会が印象の悪い陰謀屋としての姿しかないので、これも仕方ないでしょうが。

しかし、AC4当時の彼がどのくらいの立ち位置なのか。リスト化してみましょう。

No.LinksACComittedRewardFRS総量
-ススアシュートミニアマグリブ50,000c120
-アマジーグバルバロイマグリブ320,000c160
40ジョシュア・オブライエンホワイト・グリントアスピナ500,000c337
39UnknownPLAYER ACアナトリア-c-
38ヤンブラインドボルドアルドラ270,000c170
37エイ=プールヴェーロノークレオーネ50,000c65
36ローディーフィードバックGA50,000c35
35ユナイト・モスタイラントGA50,000c30
34イアッコスアニマBFF70,000c10
33真改スプリットムーンレイレナード70,000c200
32エンリケ・エルカーノトリアナGA150,000c60
31セーラ・アンジェリックブルー・ネクストレオーネ80,000c100
30ミド・アウリエルナルオーメル130,000c60
29(MISSING)---c
28シブ・アニル・アンバニキャリオンクロウイクバール120,000c85
27ミヒャエル・Fカノン・フォーゲルローゼンタール150,000c90
26ナジェージダ・ドロワファイバーフロウイクバール120,000c55
25ボリスビッチバガモールテクノクラート80,000c90
24ワカ車懸有澤200,000c95
23(MISSING)---c
22ミセス・テレジアカリオンGAE125,000c130
21P.ダムヒラリエスアクアビット90,000c140
20ユージンヘリックスIIBFF210,000c105
19フランシスカヘリックスIBFF150,000c105
18スティレットレ・ザネ・フォルメリエス100,000c150
17K.Kリバードライブイクバール110,000c125
16霞スミカシリエジオレオーネ320,000c320
15アンシールレッドキャップBFF100,000c145
14シェリングクリティークアルドラ260,000c170
13パルメットアンズーオーメル150,000c215
12ザンニラフカットレイレナード150,000c210
11オービエメメント・モリレイレナード150,000c185
10メノ・ループリミティブライトGA250,000c280
9サー・マウロスクラムダレオーネ200,000c260
8王小龍ストリクス・クアドロBFF250,000c315
7テペス=Vシルバーバレットアクアビット200,000c285
6セロテスタメントオーメル500,000c337
5メアリー・シェリープロメシュースBFF250,000c335
4レオハルトノブリス・オブリージュローゼンタール250,000c300
3アンジェオルレアレイレナード320,000c330
2サーダナアートマンイクバール450,000c320
1ベルリオーズシュープリスレイレナード450,000c335

このリストの序列からかつての王小龍が個人単位で圧倒的な評価を受けていたことは間違いないです。

彼の立ち位置として最低でもAC4作中で登場した他社の最高戦力を兼ねたオリジナルであるNo,10 メノ・ルーや野心家であるNo.9 サー・マウロスクを上回る「功績」と「賞金額」と言えば、話が違ってきているのは伝わるかと思います。

AC4の王小龍についての紹介文は以下のようになっている。

きわめて珍しい、初老のリンクス。メアリー・シェリーの後見となる、BFFの重鎮。理詰めで落ち着いた戦いを見せる「博士」

他企業のトップランカーと比肩するほど戦績を上げた実力者として位置しており、上記の王小龍の説明文のニュアンス的に少なくとも「味方の背後に隠れるだけの戦い」はしていないことが窺えます。「理詰めで落ち着いた戦い」って要は引き撃ちでしょって言いたくもなりますが、逆に言えばそれをこなせる地力は持っているともいえる。

当時の機体構成も四脚標準機体を駆りながらBFF軽ライフル二丁にスナイパーキャノン一丁を携えて設置型ECMを自身に装備させるなど、実はAC4当時は単機での戦いも意識している模様。

BFF社で同系統の戦術ならリンクスたちに愛されてきた051ANNR二丁によるW鳥の強さは、皆さんも知っての通り。弟と組んでいたフランシスカ・ウォルコットもこれでBFF機なりの前衛を務めていましたね。

仮に女王メアリーの支援機として組んでいたにしても当時の王小龍が他のオリジナルよりも功績が大きいのであれば、少なくとも同社出身の砂ライと砂砲によるX鳥が基本戦術で、電子戦と一方的な狙撃による戦果を上げ続けてランクを盛ったアンシールよりも格上。

また、ウォルコット姉弟や他社の好戦的なオリジナルたちよりも戦い慣れた「博士」として、非常に洗練されたリンクスだったということを示してます。

当時も重鎮だから市場価値が高いといっても、腕前や素質抜きであの女帝メアリーやレオハルトと同格の評価額であるというのは考えにくい。となると、ここで何が問題になるのかというと、fa時代の衛星軌道掃射砲防衛戦においてBFFが先陣を切った場合のあのやり取り。

王小龍の事をよく知っているかのような口ぶりだった銀翁やセレン・ヘイズが、何故あれほど辛辣な物言いをしていたのかという点。

銀翁の「戦場に陰謀屋は不似合い」という声に「そうだよ(便乗)」するプレイヤーが大多数であったため見過ごされてましたが、上記のオリジナルとしての姿や功績を踏まえると違和感を覚えてしまうやり取りでもあるのです。

多くのファンが捉えてきたイメージ通り、これらの功罪を全てひっくるめて、保身のあまりリンクスとしての在り方や矜持を捨てた、腐敗した老人として嫌悪感を抱かれている見方はできます。

セレンの場合は未使用音声においてやたら敵視しているのか「老醜」呼ばわりですが、オリジナルであるNo.16 霞スミカとしての言葉と捉えても、当時の功績や賞金額からして王小龍はほぼトップランカーに近い立ち位置であったことから、苦言を呈したくなる気持ちもあったのか。

しかし、本人の口からも「私ではやはりこの程度か」というオリジナルらしからぬ自己評価にも疑問が残ります。

また、BFF社の方針を決定付けた軍部の女帝メアリー・シェリーを発掘した彼が、王女リリウムを実質自らに従えるようになった変化をどう捉えるべきか。「メアリーの代わり」としてリリウムを立てたことを「ご執心だな」と皮肉を漏らしているスミカ。

政争に明け暮れている中で摩耗していったことで、替えの効かない絶対的なカリスマである女王よりも、自分の意のままに動く使い捨ての王女を欲したのか。

何故、これほどのリンクスが裏方を自負し「私に恥をかかせるな」と他者を自らのために利用する老人になっているのか。

本編の描写の中では、一切が謎のままです。

プレイヤーは常に雇い主の情報操作を介している

作中の設定説明文や紹介文について念頭に置きたいのは、あくまで雇い主側の視点であって首輪付きもといプレイヤー視点に寄り添っているわけではないという点。ローディー先生の前例があったからフロムは説明責任の放棄を続けた

プレイヤーが受け取るのは常に雇い主を介した情報であり、ミッションの依頼についても常に雇い主側の都合に振り回されている。ブリーフィングなんて、よく思い返せば戦況や情勢の説明なんてされてませんからね。

有名なのだと、エーレンベルクの襲撃ミッションを「衛星破壊砲基地襲撃」という名前で受けており、企業ルートではエーレンベルクの呼称を「衛星破壊砲」で統一している。

反対にORCAルートではミッション名は「衛星軌道掃射砲防衛」となり、セレンさんも「衛星軌道掃射砲」という名前を用いるようになる。

また、例として首輪付きのリンクス仲間である独立傭兵、ロイ・ザーランド兄貴も被害者の一人。

雇い主側から信用できない男という言葉が添えられているが、僚機として組んだ時の頼もしさは知っての通り。企業にとって不都合な存在には流言も躊躇わない。弾薬費で利益を食い潰してしまう歴戦のエイ=プールも安い報酬で使われている。

こういった感じで、意図的に情報を歪められたり隠し事をしているのは企業とは対照的に、ORCAサイドはメルツェルによるオーメルとの関係やジュリアスの過去についてなど、比較的オープンな職場環境ではある。

また、ORCAのランク2に位置する凄腕のベテランであるネオニダスに関しては親切にも、旧アクアビットと関連が深い、古いリンクスという記述があります。

このORCAの紹介文と、レイレナードの亡霊に合流しながらトーラス社の実験機体を駆る姿から、銀翁が旧アクアビットのオリジナルリンクスのNo.7 テぺス=Vであるという話は、熱心なファンの間では割と周知の事実となっていますね。

となると、傭兵にとってキナ臭い企業側に位置するリンクスはどんな紹介を受けているのか。

リンクスの影武者が務まるのはリンクスのみ

有澤重工の43代目の社長、有澤隆文。

資料集曰く社長の露出は少なく、本当に搭乗者が有澤隆文なのか怪しむ声がある。

この社長さん、国家解体戦争期やAC4のリンクス戦争期に登録されていなかったはずが、いきなり有澤を代表するリンクスとしての適性を見せて、faの時代では戦場に姿を見せるようになっている。ある程度の年長者リンクスがfaで姿を見せるには、前作で登録されていなかった疑問を解消することが求められます。

その結果、当時の有澤重工の唯一のオリジナルリンクスであったNo.24 ワカが社長として君臨したことで登録名を変更しての参戦である説。あるいは、有澤社長の影武者として戦場ではワカが出向いているのかもしれない説。

詳細は不明であるとして伏せられている以上、真偽を問い質されることはありませんが、おそらくこれはファンの間で話題になっていたかと思われます。

曰く遠距離狙撃用の重四脚機を操り、支援に徹するスタイルとありますが、BFF機のセオリーとはいえ、それだけで当時のナンバー8を勝ち取れるほどオリジナルは甘い面子だったかというのは、上記の通り分不相応なナンバーを手に入れたアンシールが証明済。加えて言うなら、BFF軽ライフル二丁という武装チョイスは他のBFFの遠距離特化な面子より直接戦闘に比較的対応できる部類。「理詰めで落ち着いた戦い」と称されていたのも、それに起因していたはずなのだ。

加えて、王小龍の場合はAC4当時ですらリンクスとしては珍しい初老だったのは確かにも関わらず、「かなりの高齢であると言われるが、詳細は不明」であると、有澤社長と同じく公式的にも謎が多いという人物像として見事に煙に巻かれています。

こちらもまた、別人が「王小龍」に成り代わってるとでも言うのでしょうか。

いずれにせよ、リンクスの代わりを務められるのは、ネクストを動かせるリンクスだけです。

No.8のオリジナルリンクスとカラードのランク8「王小龍」

BFFもアクアビットもインテリオルもレイレナード陣営であったことや、オリジナルとして国家と戦った者同士、面識はあったことでしょう。

「王小龍か。なるほどなぁ」

銀翁の含みを持たせたような言い回し。

「尻尾を巻いて逃げるがよいよ、王小龍」

揶揄うように調子の外れたイントネーションで「王小龍」と名前を呼び続ける彼と、嫌悪感を隠さないスミカは何を思っていたのか。

「秘かに狙撃とは、実にあの男らしい」とは誰の事を指しているのでしょうか。

スミカ以外にもメルツェルの未使用音声でも「過ぎたるは猶及ばざるが如し」として王小龍の名前が出ていますが、あの爺さんが何をやり過ぎて、最終的にどんな目的で動いていたのかも不明。

過去を知っている者が消えた今となっては、誰も正体を明らかにすることは叶いませんし、すべて歴史の中に埋もれてしまいました。

そもそも、前作からの続投キャラに関しては制作側もある程度は表舞台に引っ張り出して焦点を当てるつもりが、faの本筋に関係ない故にプレイヤーが置いてけぼりにされるとして、乙樽の未使用音声である「リンクス戦争の英雄の力」然りエーレンベルク然り、前作要素をあまり語らない方針に切り替えたのは作中からも窺えます。

有澤社長とワカの件と同様に、本物でも偽物でもあの歴史的にはどちらでも構わない。

プレイヤーが各々で残った謎について考えられるように、余白がちょうどいい具合のキャラなのかもしれません。

クレイドル03はどの企業に属していたのか

余談ですが、公式資料集A NEW ORDER of “NEXT”によると、

クレイドルはGA製とインテリオル製の二種類が建造されているらしいです。

GA製クレイドルにはGA社員しか乗っていないわけではなく、他の企業がレンタルしているクレイドルも多い。

オーメルはGAとインテリオル、両方のクレイドルを使用している。

アーマード・コア A NEW ORDER of “NEXT” p.93より一部抜粋

「クレイドル03防衛」はミッションフロー的には「衛星破壊砲襲撃任務」と同時進行なのはあまり周知されていないです。

クレイドル03やジェット破壊任務といった別のミッションに首輪付きが向かった場合、ORCAルートと同様に、BFFのリンクス二人が衛星破壊砲襲撃を担当していたのかもしれません。

ちなみに、クレイドル03の護衛を務めていたノーマルACはBFF製の狙撃型044AC、オーメル製の飛行型のTYPE-ARGINEの二種。

つまり、GAグループとオーメル社のクレイドルでした。

元ネクスト技術者である、異色のリンクス。王小龍直属の部下であり、同様の四脚タイプに搭乗する。理論派だが実戦経験に乏しく、その実力は未知数

No.34 イアッコス/アニマ AC4紹介文より抜粋

ANIMA=ラテン語で”魂”

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