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クローズプランの全容とORCA旅団の存在理由について

もうタイトルで詳しい人にしか伝わらないマニアックな記事ですが、AC新作の情報が出て本格的に進めなきゃという焦りがあるので仕方ない。

とりあえずアルテリア攻防戦の世界情勢についてこれまでのおさらい

そして、ここからクローズ・プランとORCA旅団がどういう形で生まれたのかメルツェルの真意について解説します。

企業の罪とレイレナードの贖罪

そもそも、なんで企業がアサルト・セルを隠蔽したのか。

国家がまだ存続していた時代においての企業同士の開発競争の過激さに原因があり、妨害工作としてアサルト・セルを打ち上げまくって手に負えなくなったというのがORCA旅団長テルミドールの言葉。

曰く国家解体戦争もリンクス戦争もこの罪を隠そうとする企業の在り方が元凶である。

統治者としての威光を失っていた国家もこの事実を握っており、その口封じとして企業は連携を取って国家解体戦争をやってしまったということでしょう。しかし、新たに管理体制を築いた企業は、国家という外敵を失って経済活動を戦争行為にしか見出せない状況にありました。この腐敗を憂いたのがかつてのレイレナード陣営、ひいてはオリジナルリンクスのベルリオーズでした。彼は彼なりにまさしく「世界を変える」ために戦っていた戦士だったわけですね。

そんな感じで、あらゆる思惑が絡み合っていた管理経済戦争に満ちた地上世界が前作であるアーマードコア4の出来事。

そして、時を経てレイレナードの無念を晴らそうと残党たちが結託したのが最悪の反動勢力ORCA旅団。

現実から逃避し続けている企業連とクレイドル体制に異議を唱え、人類に新たな活路を示さんとする理想主義者として、地上の民から歓迎されました。おそらく、真意を知った多くの同志プレイヤーも。

しかし、理想に酔い過ぎるあまり言及されませんでしたが、メルツェルが提示したクローズ・プランはある矛盾を抱えていました。

それは仮にORCAの掲げる目的が果たされて、衛星掃射砲により宇宙への道が拓けても、その後の人類を彼らは導けるのかどうか?

世界を裏から動かしてみせたはずの参謀役メルツェルはアルテリア攻略戦という序盤において「もはや私も不要だ」と自分の命に執着することはありませんでした。では、計画の第一段階を遂げたその先のORCAはどうするべきなのか?

数々の同志の屍を乗り越えて、最後のORCAとなった首輪付きも途方に暮れていたはずです。何故か、自分が奮闘したはずなのに同志たちが全員いなくなっているという点。首輪を外されて生き残った自分が、最後のORCAとして託されたものの、皆に何が起きていたのか。

事実は一つだけです。

クローズプランの第一段階にしか、ORCAの存在理由はなかったということです。

オーメルがORCAを支援したという事実をどう捉えるか

オーメルはORCAを裏で支援する立場にありました。

メルツェルの紹介文を通してそれが明らかになります。

新型ネクストである月輪を提供したトーラスはレイレナードの盟友であった旧GAEとアクアビットによって構成されている企業のため理解はできます。しかし、前作で敵対関係にあった旧レイレナードとオーメルの結託という、傍から見たら疑問を抱いてしまう組み合わせですが、これはどういうことか。

Opening = 序盤の定石

前作の行き過ぎた管理経済戦争によって、リンクス戦争という人類絶滅戦争に片足を踏み込んでしまったことから戦勝国オーメルは、旧レイレナード勢力を吸収したこともあってか、前作の経験や仲介人の存在もあって嫌味で陰湿な企業というプレイヤーのイメージとは裏腹に、割と冷静に物事を俯瞰できる企業になっていました。

正確には、伊達に企業連トップの立場を長く務めていなかったからか、自社の危機管理に関する嗅覚はズバ抜けているといってもいいです。あとは既に企業の滅亡に関して4で似た出来事を経験したことも大きい。

リンクス戦争期におけるレイレナード製の衛星掃射砲の存在が露見し、その破壊をアナトリアの傭兵に命じたのはオーメル+GA自身であったため、空を覆うアサルト・セルを排除しようとしたレイレナードの宇宙進出独占を防いだことを、オーメルは学びとしていました。

つまり、これは企業間で協同して築いたクレイドル体制では尚更の話となってしまったわけですが、仮にアサルト・セルの除去に一企業陣営が尽力しても、その後の権益の独占や主張に繋がってしまいます。

そして、企業連内部の統率やパワーバランスが壊れるという問題を抱え、パックス・エコノミカの存続という一致団結してクレイドル体制を築いたはずの企業たちは対立を深めて、宇宙開発ではなくかつてのような妨害工作や、内向きの消費である管理経済戦争を繰り返す羽目になります。

そして、企業連が崩壊した場合の影響が最も大きいのは現企業連トップであるオーメル・サイエンス社。

そもそも前作で懲りたはずが、経済戦争を持続させようとして戦力を拮抗状態にさせてしまったこともあり、三大勢力が衝突すると泥沼化するのは明らかでした。特に前回のオッツダルヴァがオーメルに参加した理由についての記事で語ったように、特にインテリオル=オーメルと対立しているGA陣営はBFFを吸収して資本力が抜きんでているため、AF分野において圧倒的な戦力を誇っています。余裕があり過ぎてランドクラブを他社に売りつける始末。

その対応としてインテリオル=オーメルで連携を取って最強のAFアンサラーを製造するなど、こいつに関して地上を犠牲にする面ばかり取り上げられていますが、平時の経済戦争という一面でコイツを切り札にする事態を考慮しなければならなかったという、アームズフォートを強引に次の戦場の主役に据えた結果がご覧の有澤。

どこかの企業がエーレンベルクと似たようなモノを作って宇宙への途が拓けるとしても、陣営を分けた弊害から前作のように企業間の争いが過激化して妨害されるのは明白で、さらに言ってしまえば、国家解体戦争以前のようにアサルト・セルと同じコンセプトでより強大な自立兵器を無秩序にバラ撒いてしまうことも、カブラカンのようなコンセプトの兵器を生み出していることから可能となっている。

宇宙開発競争に向けて全企業が妨害工作に注力せず平等にスタートラインを切るためには、それを一企業の功績とするわけにはいきませんでした。

結局のところ権力とか動機として有り得ないってなるのが普通というか一般人の思考ですが、前作から思い返してみたら自社の人材を重用せずに内部粛清の強行など後先考えていなかったGA社や、レイレナードと組みながら日和見主義で勝手に抜けたインテリオル陣営と、企業連の三大勢力はどこも昔から大差ないロクデナシ揃いです。

そいつら全員に文句を言わせずに統率する必要な手段、

すなわち管理経済戦争を取り止めてすべての企業が宇宙開発のみに尽力するために、企業の外敵による脅威が不可欠。

そのお鉢が回ってきたのが旧レイレナードの残照であるORCAでした。

ORCAとはオープニングの駒に過ぎない

メルツェルが掲げたクローズ・プランは、ORCA旅団という地上の棄民達にとっての英雄譚であり希望そのもの。

しかし、その真実は貴族たちが命を保障された条件下で新たな経済活動の土壌として宇宙開発を推し進めることができるという、企業との利害が一致しただけの物語でした。

おそらく、企業の老人たちを揺り籠から引き摺り下ろすことを期待した旅団員や首輪付きは酔っぱらったまま見過ごしていたと思いますし、そういう計画です。

アサルト・セルを打ち払い人類を新たなるフロンティアへ導く事のみが目的としたテロ組織。企業の力を残したまま戦力を剥ぎ取るためにもカラードの有力なランカーはこの騒乱で命を散らすことになり、首輪付きがORCAに加担した場合はもはや壊滅状態です。

イレギュラーネクストによる全世界で起きたテロ活動と戦いによって、企業の人的資源も戦力も失われ続けたからこそ、戦いの終盤において企業と密約を交わし、全面的な合意を得て可能となりました。

人類に宇宙を与えるというクローズプラン第一段階を遂げても、開発できねば意味がない。

そのために企業は必要であり、クローズプランを完遂するために外敵は排除されるべきである。

新たな時代にORCA旅団はもはや必要とされません。ORCAは人類の道を照らすという目的を果たしたら速やかに消えねばなりません。

人類が進むべき路を示したORCAという残照から、人々を惑わすORCA残党というテロリストや反乱分子の影を生み出してはならない。

そうなれば、争いによる内向きの消費と生産という負の連鎖が果てしなく続いてしまうからです。他を蹴落とす戦争ではなく、自己を増大させる開発のために人類に光を見せる役割が、最悪の反動勢力ORCAだったわけです。

クローズ・プラン第一段階、つまり序章の捨て駒とはORCAそのものでした。

最後の疑問であるテルミドールの真意

一応、これらの要素が旅団員にとってORCAが何を意味しているのかということだけ振り返ると、企業を敵対視してきたORCAの戦士、宇宙を見る理想を叶える為に死んでいった者達は、結局のところ、最終的には憎き企業に頼る他ないという目的にもかかわらず、それに無自覚なまま命を散らしていったわけです。

衛星掃射砲攻略戦も然り、たとえ破壊されても密約を交わした後に企業と共同で建造することが可能で、この作戦が数あるプランの中の時間稼ぎと陽動であることは、おそらく掃射砲防衛を担当した最初の五人の年長者である銀翁もその口ぶりから理解しており、メルツェルの駒として動いています。

彼の場合は、メルツェルに対する信頼や愛情が窺えるのでまだいいですが、企業との密約に関して何も知らされていなかった旅団員は、酔っぱらったまま理想に身を捧げる形にしかなりません。

それは志が違う事を解っていながら戦力目的で引きこんだオールドキングや首輪付きも同様であり、クレイドルを堕とすことを躊躇わないオールドキングは暴走してクレイドル03を襲撃、粛清の対象になります。

首輪付きの場合は、他のORCAのリンクスにも達成が困難であろうアンサラー攻略戦すら生き残っていることは、それを任せたテルミドールとメルツェルにとっても誤算に近かったというか、彼が必ず勝つという確信まではなかったはずです。ぶっちゃけどっちでもよかった気がする。

そしてクラニアムとビックボックスの決戦、その分担は旅団長と参謀のどちらでもよかった模様。

何故なら、すべてはメルツェルの掌の上にあり企業との密約を交わしたことで戦いは終わるからです。

しかし、ウィン・D・ファンションとのビックボックス決戦前、テルミドールの言い草としては、おそらくメルツェルには生還してほしかったはず。が、勝てる見込みがない死地に赴くメルツェル本人から「その時は私が死ぬだけの話だ」と皮肉交じりで返されます。

後を託されたマクシミリアン・テルミドールは同志たちの背中を見送りながら、一人何を思っていたのか。

「下らない敵と下らない味方、まるでファルスだ」

これを語り出すと長くなってしまうので、次回は乙樽回です。

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