ゲーム 作品解説

【FF7AC考察】クラウド達が罹った「星痕」と「思念体カダージュ」の正体について考えてみる

「運命の日」から2年後

そう、忌まわしき星痕症候群だ。我々はその原因がセフィロスにあると考えている。

無印の「ジェノバ戦役」から2年後、決戦の舞台であった北の大空洞にてルーファウス神羅とタークス達の手によって「ジェノバの首」が発見される。ニブルヘイム魔晄炉で首を切断して持ち出されたコイツも、セフィロスの下から離れ、流れ着いてたらしい。

コイツの存在に行き着いた過程は、前日譚に近い小説である「On the Way to a Smile」「タークス~ザ・キッズ・アー・オールライト~ 」にて描かれているために一部省略するが、要はセフィロス(ジェノバ)も生命として星の一部に溶けてしまったのか地上で異変が続出。崩壊した神羅の生き残りであるルーファウス社長は、ライフストリームを浴びた人間たちの一部から黒い膿が排出されるようになった「星痕」と呼ばれる謎の病を患ってしまい、その原因を究明していたのだ。

この病の解明にかかっていた神羅カンパニーのタークス達は北の大空洞にて元凶であると考えた「ジェノバの首」を回収した途端、姿を現した謎の三人の少年たちに追われていた。追跡を続けてジェノバの首を持ち去った犯人に辿り着いた「思念体カダージュ」は、悠然としているルーファウスと対峙して問答をする。

破壊と創造……人間はどうして繰り返すんだろうね。
僕には理解できないよ

人間は思い出というものが苦手なのさ。
だから美化し、拡大する。
痛みは懐かしさにかえて過去を乗り越えようとする。

母さんを取り戻そうとしたのも思い出のせい?

それは現状の困難を取り除くためだ

星痕のことをいってるのかい?
でも元はといえばあんた達のせいだ。
そうか、あんたもやっぱり思い出が苦手なんだ。

いや、私は実に忘れっぽい

FF7AC ブロローグ 「カダージュ」&ルーファウス神羅

クラウドはザックスの在り方を自分に重ね、過去の経験もごっちゃに混ぜ合わせたことで「元ソルジャー1stのクラウド」という幻想の自分を創出した。セフィロスは古代種の末裔という特別な自分を定義付け、母親への憧憬や世に仇なす者としての人類に対する負の感情による狂気を宿すようになった。

歴史を都合よく解釈し、誤解や過ちを恥じて少年セフィロスから逃げ出したガスト博士や鬱屈としたコンプレックスから狂気的な研究に走って天才であるという自負に縋りついた宝条、ひいては自らのルーツを否定しようと幻想に生きたクラウドやセフィロスなど「過去から逃げ出して美化し、歪めてしまう人間」によってFF7の物語は成り立っていると言っても過言ではないでしょう。

星痕とはどうやら人間が原因というのがカダージュの主張。それだけ人類に対するジェノバの恨みは深いということでしょうか。

星痕を宿した死者の思念、それはライフストリームとともに星を巡り、やがて星を侵食する

私の望みはな…クラウド。
この星を船として、宇宙の闇を旅することだ。
かつて母がそうしたようにな。
やがて我らは新しい星を見いだし、その地で輝ける未来を創造する

生物が死ねば生命エネルギーとして大地に還り、星の血脈であるライフストリームを漂いながら傷を癒す一部となる。

生命の循環システムに混ざる不純物を利用して星そのものを作り変え、新たな新天地を目指そうという。今度のセフィロスは星の支配者ではなく、星を乗り物として利用することを思いついたようだ。

原作のセフィロスは星のライフストリームを吸収して神として君臨することを画策してましたが、ACでの再臨後は今度はスケールがちょっと違う旅の計画を立てており「母」に倣って新たな星に行き着こうとしている模様。セフィロスさんの存在感に圧倒されて聞き流してしまいましたが、ジェノバは星の命を食い潰す存在として語られてきている中、冷静に考えると「これって誰の思惑なんだろう」という疑問が浮かび上がってしまうのです。

まあ、この星はどうなるというごもっともな疑問もはぐらかされているので、ひとまず着目点を変えてみましょう。

星痕に宿る「遺伝思念」とセフィロスの「思念体」

元々セフィロスは「ジェノバ」が擬態したあの「古代種の女性」を「母」として認識しているためか、思念体であるカダージュは常にあらゆる物事への認識が混在してます。例として、古代種の知恵であるライフストリームから生まれた力「マテリア」に対して「母さんが残してくれたもの」という表現を用いたやり取りを交わしているなど、割と設定ミス疑われかねないレベルで支離滅裂な言動で暴れまわっていました。

また、星の知識を得たセフィロスがライフストリームの中で編み出した思念体(コピー)がリユニオン(セフィロス)を目指しているのはともかく、「母さんの細胞を貰った仲間が1カ所に集まる」というリユニオンの表現は、原作における説明として通用するがAC時点は違和感があります。カダージュや「星痕」の患者は「細胞を貰った仲間」に適用されていないからです。

誘拐した子供たちを集めていたものの、語っている言葉は以下の内容。

僕は母さんから特別な力を授かった。
人間を苦しめる、この星と戦うための力だ。

実はこの力はみんなも持っている。そう。僕達は兄弟なんだ。
ライフストリームに溶けていた母さんの遺伝子を受け継いだ選ばれし兄弟!

でも、星が皆の邪魔をしている。
僕達の成長を止めてしまおうとしている。

だから君達の体は痛み、心が挫けそうになるんだ

治してあげるよ?
そして母さんの処へゆこう。
家族で力を合わせて星に仕返しするんだ

母さん見て。こんなに兄弟が増えたんだ
これで母さんに会えるまで僕は寂しくないよ

ヴィンセント曰くこの星の人々の身体の中にもライフストリームのような流れがあり、それが侵入してきた邪悪な物質(セフィロス因子・ジェノバの遺伝思念)と戦っていることで起こる発作のよう。

皆を苦しめているのはこの星が原因だと糾弾するかのような言い回しも、星の人間たちの「身体の自浄作用」によって引き起こされているというヴィンセントの表現が正しいということでもありますが、何より注目すべきなのはここで語っている「母さんの遺伝子(遺伝思念)」は「ジェノバ細胞」とは異なっていることと、何より兄弟が母(ジェノバ)の下に向かうという表現。

長期的な目線で語ると、死者が星の地脈を巡って侵食するから仕返しは成立し、ある種のリユニオンとして見ることはできます。

しかし、「家族で力を合わせて星に仕返しする」という星痕を患った子供たちに語り掛ける言葉自体はよく分からないことになっており、これに関しては一時の狂気に過ぎなかったのか、これ以上言及されることはありませんでした、

セフィロスの因子やジェノバの遺伝思念が身体を蝕もうとするのが原因だと語られている星痕症候群は「ジェノバの因子」を伝染させるためのモノだったのか?という受け取り方になりがちですが、後々の言葉を聞く限りではどうやら違ったらしい。

星痕
社長もよく知ってるよねライフストリームの中で母さんの遺伝思念ががんばってるおかげなんだ
それなのに僕たちは母さんの居場所すら知らない
情けないけど仕方がないんだよ
僕たちは思念体だからさ

母さんを見つけて細胞を分けてもらうまで元通りにはなれない
思念と星痕だけじゃ足りないんだ
本当のリユニオンにはね

上記のやり取りから「セフィロスとダブる姿」からジェノバ細胞を追い求めるカダージュたちの正体は「セフィロスの思念体」として語られているため、こちらに注目が集まりやすい。が、やはりカダージュの持ち得ている情報や主張はよく分からないことになっている。

カダージュがセフィロスの思念体であるなら、クラウドに埋め込まれた後続作曰くS細胞の繋がりで兄さんと呼称されるのもわかりますが、「ジェノバの首」とその繋がりについては本人たちも嘆いているほど希薄というか持ち合わせていない。ルーファウスとの対面時に何かを察してはいるものの、その正体に行き着かなかったあたり少なくともクラウドが自らジェノバの首を明確に感知することはできない模様。

それはカダージュ達も同様だったようで、ルーファウスの手元にある首の存在に最後まで気付かなかった当たり、その絆は彼らの想いほど強くないらしい。ジェノバとは乱暴な言い方をしてしまうと宇宙から飛来したモンスターであるが思考を読み取って擬態する等のジェノバの性質、カダージュたちは肝心のジェノバに類する能力を持っていないのだ。

はっきりしていることとして「思念体カダージュ」自身、あるいは彼らを形作る「黒い思念」は少なくとも「ジェノバ細胞」由来ではない

そして、ぶっちゃけライフストリームに漂うセフィロスがどういう力を持っているのか一切不明のため、これらの描写の正体についてより謎が深まってしまっている。

ただ、各作品の中でライフストリームの由来やいくつもの問題や危険性が表現されているのに、突如現れた星痕は何かが違っていたようだ。

カダージュ曰く「星痕」は元はと言えばあんたたちのせいだ。というのも責任の擦り付けを考えられますが、ブロローグを見る限りでは、マリンも似た思いを抱いていたらしい。

全ての決着をつけたのは、星自身の力でした。星はライフストリームを武器として使いました。
地上に噴き出したライフストリームは、争い、野望、悲しみ、全てを飲み込んでしまいました。

『悲しみと引き換えに、全部終わったんだよ』

そう言われたのは、二年前でした。

でも、星は私達が思うより、ずっとずっと怒っているみたいです。

『星痕症候群』

お願いです。
どうかデンゼルを連れて行かないでください。

FF7AC ブロローグ部分 マリン
FFX-2インターナショナル版の付属映像特典 PVの取り扱い方に時代を感じる

整理してまとめてみると

カダージュ達は「セフィロスの思念体」

・ルーファウスに翻弄されるなど「思念体」はジェノバのような思考を読み取る力を持っていない。

・「思念体」は「ジェノバの首」こそ求めてはいるものの、ジェノバの細胞を持った眷属には当てはまらない。

・カダージュ曰くライフストリームに溶けた遺伝子を受け継いだ選ばれし兄弟。クラウドは僕たちの兄さん。

・「ジェノバの遺伝思念」に影響された身体の自浄作用が「星痕」らしいが、本当に「ジェノバ」に基づく存在だったのか?

「星痕」とは星由来の病だったのではないか

ひとまず今回導ける結論部分として、ライフストリームを漂うエアリスが「大いなる福音」に近い演出による教会の水によって、星痕を浄化することができたあたり、ここから考えられるのは「星痕」とは星由来のシステムエラーであり、星から生まれた生命に類する病をすべてジェノバの仕業としてACでは押し付けられたのではないかということだ。

そして、カダージュ達や魔物を生み出したりしている「黒い思念」の正体は、

クラウドやデンゼル、ルーファウスなど何かしら「身体に不具合を抱えている人間たちに作用しているもので、それを修繕しようとするからこそ、教会の湧水(星が降らせた雨)で撃退/治癒できたのだと思われます。

ルーファウスも探りを入れている中、物語が進むにつれ明らかになるカダージュらの立ち位置は単なる道具、空虚な器でしかない。

思念体の台詞を真に受けてしまうと、ジェノバも古代種もわざわざ敵を滅ぼしにやって来たわけではないという盛大なツッコみどころが生まれている。ここまで話の流れを曖昧にさせてしまっているカダージュたちだったが、本質としては哀れな操り人形というルーファウスやクラウドの言葉通り、彼らは母を盲目的に求めているだけの何も知らない子供なのだ。

母さんは長い旅をしてこの星にやって来た
愚かな連中を宇宙から消し去るためにね
でも わかるよね?
ここは母さんが来た頃と何も変わっちゃいない
だから僕が母さんを喜ばせてあげるんだ
母さんが命じるならなんでもやるよ

後続作でほぼGACKTのせいになったけど生前のセフィロスが自分を保つために宇宙から飛来したモンスターとしてのジェノバを切り捨てている振る舞いと同様に、カダージュ達はおそらくセフィロスの「古代種としての母」に対する想いの残滓を大きく引き継いでいる。

繋がりを持たない「ジェノバの首」ではなく、エアリスの呼びかけに母と反応しているのも、そのあたりが所以だろう。

そしておそらく「母親」と呼び慕う存在が何者なのかも気にしない。

カダージュがエアリスによって星に還った後にクラウドが銃撃された際、雨に打たれて苦しそうなヤズーとロッズの道連れとも受け取れる執念深さなど、思念体の問題として彼らを突き動かしていた正体はなんだったのか?

セフィロスが生み出した「思念体」というのも、元を辿ってみればクラウドに対する執念を利用した等のやり方はあれど「星のシステムを悪用する」ことで生み出せた手法でしかない。

星から星に旅立つ者、それはかつて「母」と同じだとセフィロスは語る。そうして、星痕を宿した死者の思念や、黒い思念に感染された人間の体内に入り込んで子供たちを洗脳など思いのままにする描写。

「星痕症候群」や「思念体」は一口に「ジェノバ」だけが原因とは限らないと言っても「ジェノバの遺伝思念」というあまりに適当な概念がトリガーとなっているという語り方から、その詳細が曖昧過ぎて揉める話のネタではありますが「謎の思惑を持った存在」や「死者の思念」に近い形が、なんとREMAKEで描写されてしまいました。

おそらくリユニオンして賢者タイムになってたセフィロスもとい制作側も流してたこの設定にカタが付いたのが『REMAKEシリーズ』なのかと思われます。

「ゆうれい」

こんな感じで、ぶっちゃけなんとなく雰囲気で見て楽しむ作品だったというか。あらゆるコラボやらシリーズ外部作品にも展開しているクラウドやセフィロスの扱い方然り、深く考えないでノリに乗るのが長年のFF7シリーズの楽しみ方だったのではありました。

が、まさかのまさかでコンビレーションシリーズ作品をまとめ上げようとしているREMAKEシリーズが始動し、FF7シリーズの話の整合性が見直されてジェノバと古代種の時代の話など、原作時点の未回収要素にまで踏み込んで白黒つけようとしているのか真面目にやらなくてはと重い腰を上げたのか今後の展開の布石と思われる部分が多々あるので、これから語っていきたいと思います。

エバークライシスも十中八九何かしら語られるのでチェックしなきゃならないという()

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