社会 解説

【攻殻機動隊SAC】世が乱れた理由をSAC現象として解明してみる

二年前の時代の変遷と人々の分断

あの頃に追い詰められたり鬱だった方もいらっしゃると思いますが、間違いなくあの時期はまさに「分断の時代」でした。

あれだけ危機意識を煽られていながらも人によっては違った捉え方や価値基準で行動を起こし、意識の統一どころか意思の疎通も取れず「理解」という行為に価値を置かないまま、それぞれが自分たちにとって口当たりのいい情報にのみ依存しました。

その結果、自分たちが招いたこと、無自覚さが招いた出来事の帰結を受け入れようとする精神すら形にならなかったことで、何も学ばなかったことが、人々の無気力さに大きく作用しているのかと思われます。

僕の場合も、人間という種の自己認識への限界に関して一種の感慨を抱きました。

そして何故、そういった事が起きてしまったのか。

人間を形作るのは「習慣」と「環境」に他ならないからです。

「動機無き媒介者」によるコミュニティ形成

人間は身の回りにある要素から形成される。それ故に他者や獲得したものから影響を受けやすい。個人の価値観やら考え方だって、その基盤となっているのは、元をたどればどこかの誰かさんの考えに行き着きます。

それが過去の偉人であれば彼らの格言に重きを置くでしょうし、現代での著名な人物に影響を受けているのであれば、テレビでの振る舞いをマネすることもあるでしょう。もっと言えば、気になる人や好きな人の仕草や振る舞いをマネしたがるというのもあります。

僕が読書や映画、ゲームなどのエンターテイメント作品や芸術鑑賞を好むのは、作品自体に作者の意思の発現や伝搬が詰められており、それを理解しようとすることが好きだからです。

しかし、理解というプロセスを面倒に感じる人々が増えたということ。これを認められるようになるまで時間かかりましたが、錯覚ではありません。

現代ではネットの発達によってSNSなどはやがて自己表現の場となりました。まさしく、自由主義によって各々が自分を表現できるすばらしい時代です。

しかし、いつしか自分からは何も表現せず、何も理解しようとしないまま、口当たりの良い情報を取り込んでそれを拡散し、思考停止したまま同意してモノマネをするという行為が見られるようになりました。

某SF作品で例えるならば「動機無き媒介者」であり「模倣者」です。

何も考えないで自分にとって口当たりの良い主義主張を掲げている「オリジナルの模倣」をすることで表現者を気取り、それを見た誰かがまたマネをするという「動機無き媒介者」によるリツイート拡散の悪循環が起きるようになってしまいました。

そして、いつしか同じ意見を持つ者同士で徒党を組み、それに疑問を持つ者は口を噤んでしまうという、閉鎖的で偏ったコミュニティの形成という様相に至りました。

どれだけ親しい人間でもアレ?と思ってしまうような人物のツイートをいいねやリツイートしていても突っ込みにくいというアレです。個人的な話、リアルな付き合いにある人間関係上ではSNSをやらないという理由はここにあります。

なぜ動機無き媒介者は「モノマネ」をするのか。ここから明らかになったのは、人々が求めた相手は「相互理解」ではなく、動機の有無を問わない「同調者(フォロワー)」だったということです。

消失しつつある「理解」というプロセス

ヒエラルキーの上位に位置して自分を誇示したいという目立ちたがり屋は、時に他者のネガティブな感情を増幅させることにも加担してしまいます。そして、メディアやネットにおいてこういったデリケートな話題に触れる記事を書く者の中には、利己主義や利益追求のためにはモラルを平気で飛び越えます。

身勝手な憶測やエゴによってもたらされた衝突や不満のぶつけ合い。

今の社会にはどれだけ無責任な結果をもたらされることがあっても、誰も何も責任も背負わない。何故なら、その原因と結果に自分が関与しているという実感がないからです。

こういった人々の無責任さは露骨に目に映るようになり、それは自分たちと異なる存在への敵意として牙を向けるようになっています。

ある意味、貧富の差というブルジョワとプロレタリアの対立構造にも、各々にとって聞こえの良い主義主張、情報の取捨選択による対立が由来しているでしょう。

孤独や孤立への忌避から生まれた分断

ネット上における構成員は、個性を捨ててまで情報に基づいた並列化したコミュニティの渦中に身を置き、それぞれの派閥の戦いに身を投じることでした。当然、コロナという分断が明確化されたのであれば、それは苛烈さを増しました。

私たちは自分自身という個や、何かを理解しようと物事を噛み砕き、自分なりに表現することを重んじなくなり、より閉塞したコミュニティが乱立した社会に身を投じようとしている局面にあります。

その危機意識というものは、情報化社会に疎い政府は知覚できておらず、人々は孤立を恐れて無意識にそれを忌避するようになっています。

この社会現象、スタンドアローンコンプレックスがまさしくコロナによって顕在化したというお話でした。

「僕にはそれが絶望の始まりに感じられてならないけど、あなたはどう?」

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