社会 解説

「ノブレス・オブリージュ」が貴族の称号と化した現代社会

前回の内容のように、エリートと庶民との分断が視覚化されつつある時代ですが、本来はこの両者がどういう関係性が理想なのかを示したのが「ノブレス・オブリージュ」でした。
前回のように、エリートが内心では職業の貴賤などを挙げていたのも、最初は目指すべきラインを定めて庶民の上昇志向を育むという目論見があったのかもしれません。しかし、エリート層が既得権益を維持するサイクルが形成されてしまったことで、庶民に彼らの働きが還元されることは無くなりました。

金持ちを金持ちにするために支えている社会に異議を唱えるようになっているのが今の社会です。

恵まれた者としての責務

しかし、東大の入学式では自分たちのこれまでの環境に感謝を促す言葉が送られています。これを入学生たちは恵まれた人生を辿ってきたことで、それを一般的なモノだと解釈してしまうエリートの中には「選ばれた人間」であることの称号として受け取ることも多いでしょう。

ここで述べられているノブレス・オブリージュとは本来の定義に回帰しており、高貴であるからこそ徹底的な義務を遂行する宿命にある。艱難辛苦を受け入れた先に、自分の在り方が定義される。社会に対する世紀人や義務を負うのであれば、より高みに立つ存在はそれをより背負うことになるし、それを順守することが必要なのだということです。この向かい風として、上記のように日本を含めた近代化、世界的な民主化によって、下々の人間たちが高貴な人々にプライドを与えるという事が難しくなりました。庶民がエリートを監視する役割を負ったからです。

リスペクトの欠如

これによって、自分たちへのリスペクトが感じられない者たちに、品位を保つ必要性が感じられなくなってしまったことが、エリートとの断絶が生まれた大きな要因であるのでしょう。結果、エリート層は築いた人脈を駆使して職歴やビジネスなど、自分たちの権益に繋がることにのみ注力する図式となってしまいました。

互いをリスペクトできない関係性が生み出しているのであれば、特に日本な場合は戦争の過去から政治不信に陥っている部分が大きく影響しており、我々は国そのものを愛して育もうとする気概を失っていることにも繋がっているのでしょう。

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