FROM SOFTWARE ゲーム 作品解説 解説

『ARMORED CORE VI』発売前だからこそシリーズが抱えるテーマや作風を振り返ってみよう

はじめに

この記事はフロム・ソフトウェアの新作『ARMORED CORE VI』リリース直前に書いてあるものとして、現在まだギリギリ発売されておりません。

これまでの記事にも書いておりますが『アーマード・コア』シリーズというのは不思議なもので、ロボットを動かして敵を倒していくのはともかく、その敵の動機やら戦い自体が物語としてどういう意味を持ち合わせているのかなど、細部が詳しく語られないままであることがたまにあります。

なので「ぶっちゃけどういう話なのかイマイチ整理しきれていない」という心理にプレイヤーが陥ってしまうことも珍しくなく、落ち着いて作品を振り返れる場所がネット上でも案外少ないので、蓋を開けてみると共通項として話を共有しやすいシリーズではないと言えます。

そんな中で長きに渡る沈黙を経て、いつの間にか「身体は闘争を求める」がある種のスローガンとして浸透しました。

「ACってそういうテーマだっけ?」と内心疑問を抱いている本音やら、新規の方もいらっしゃると思うので、このシリーズ作品が何を描いているのか? 

「お、発売直前の妄想トークだな? 誰だか知らないがうるせぇぞ」とお思いの方もいらっしゃると思いますが、新作を目前に控えたからこそ、ACシリーズの抱えるテーマや作風を包括する話として整理してまとめておきたいなと思って書いておりますので、もしよろしかったらで構いませんので、興味を抱かれた方は何卒お付き合いくださるとうれしいです。

『例外』と『管理者』による戦いの歴史

これまでの記事で繰り返してきたように「ありきたりな言葉に、作品内で何かしらの意味を込める」という、フロム・ソフトウェア社の十八番である手法は現社長である宮崎英高氏の得意技で、氏がディレクションする作品であるいわゆる『ソウルボーンシリーズ』が顕著ですが、ACでもそれに類するフロム作品の技法として「例外」など作中世界でも、ある意味を有する言葉が幾つか生まれております。

何者にも影響されない自由を求め、自らの生き方を決める『例外』が戦っている相手、その対立軸として『管理者』が描かれるのがアーマードコアシリーズおなじみの対立図と言っていいでしょう。

彼ら『管理者』はシリーズによってAIを指したり正体不明の勢力やら只の企業などいろいろ描かれてますが、基本的に共通項として、彼らは人類が自らを律する事が出来ないのなら自分がやるしかないという、ある種の責任感から人類を救済する道を模索するために行動していました。

そして、そのためにはいかなる犠牲も払ったり気に入らないことがあればすべてを破壊してリセットしたがる悪癖など手段を選ばない悪辣な一面もあり、劇中の説明などもよくよく考えてみれば嘘や虚飾に塗れていたり、何かしらの思惑を腹の中で抱えたまま同じ陣営に立つなど、決して一筋縄ではいかないような強大な存在として描かれているのが随所に見受けられます。

そんな世界を我が物顔にして秩序や破壊をもたらす強大な存在と比較し、某トップランカーの言い回しで表現すると我々は「小さな存在」に過ぎない。

しかし、その思惑を乗り越える力を秘めた者として『レイヴン(黒い鳥)』つまるところ『イレギュラー』が描かれてきました。

「私はもう負けたくないだけ。何にも…誰にも」

「暴力」が横行する世界に「傭兵」の居場所無し

独立独歩。

どれだけ息苦しい世界でも、傭兵が戦う理由だけは自分だけのものである。

自分の未来を自分以外の者に決められたら死んだも同然。他人を信用しても信頼せず、自分以外の何者に自分の命を預けない。誰かが失敗しても自分が死ぬような真似はしない。

まあ、何と言おうがそれは構わないけど、だからと言って、誰もが好き勝手にメチャクチャしていたら当然犠牲も生んでしまうんだ。

どれだけ個人が世界に影響をもたらそうと、変化には至らないなどやはり世の中は一筋縄ではいかないもの。そして、かつてレイヴンの手によって父を喪ったリムファイアーのように。ひいてはヘリでACを追い回しちゃう復讐鬼や「財団」のような存在が人知れず生まれていた。

認めない…貴様らの存在など認めないぞ!!

リムファイアー/バレットライフ 劣勢時

ジナイーダ…貴様にやられた仲間の恨み…忘れたとは言うまい!!

対戦依頼 ヘリパイロット 開幕ムービー台詞

僕の人生を、すべてを破壊した あの汚れた世界を、忘れることなどない 

N-WGIX/v撃破後ムービー 「財団」

我々はいつも誤りを犯す。そうは思わないか、レイヴン

フォボス (BAD DAYS) レオス・クライン/スカラバエウス(ディソーダー) 戦闘前ムービー
「何も変わらねぇのかよ、結局」

無力感と絶望に襲われた人間は世界に憤り、復讐に燃え、やがて知らない場所で「人類を見限る者たち」が現れる。

特に、自分たちが悪いことをしていたわけでもないのに困難な時代に産み落とされた人間たちは世を呪い、無秩序な力を手中にした結果、己の欲望のために他者に暴力を振りかざすことを厭わないで共喰いし続ける「渡り鳥(ミグラント)」たちが現れました。

『V』におけるRDも「身体が闘争を求めた末路」という意味ではその中の一人で、彼は『特別』と称されるほど傭兵としての素質はあったのですが、これまで避けてきたはずの戦場に赴き、言われるがまま本来の自分を曲げてしまった結果、己の命までをも手放してしまいました。

戦い続ける者はいずれ憎しみや恨みを買い、恐怖され、忌むべき存在となり、愚かにも人は人が望んだ自らの闘争によって共喰いをして滅ぶ。

それが必然であり、管理されなくてはならないものとして、力や闘争に溺れた者たちから組織や武装勢力に利用される等、より大きな存在に飲み込まれつつありました。

どこまでも強く、何者にも寄与しないまま孤高を貫こうとしている「傭兵」の一部の者は、脳裏に浮かんでしまいます。

この混沌とした世界では、自分たちはもはや邪魔者なのではないか?と。

「ただの傭兵、そういう風にはもう生きられん時代か

「それは他人が決めることじゃなかろうさ生き死にと同じによ」

カスパール・ダンバー&サミー・ジェルマン

この鬱屈とした状況に追いやられて似た感慨を抱いたのが、Vシリーズと同様に旧世代の遺物によって人類が危機に瀕している時代を生きている『ネクサス』『ラストレイヴン』のレイヴンたちでした。

特に力の称号である『ドミナント』を自負するエヴァンジェの場合、彼はレイヴンの身でありながら企業との専属契約発覚など、常に世界から爪弾きにされないことに執着していました。

争いなくして存在を保てないのが傭兵であるならば、自分の存在を証明する術として、アライアンス戦術部隊隊長然り、世界から求められている「役割を演じる」ことを彼は自らに課したのです。

しかし、それはレイヴンとして生きる理由を探しているジナイーダからしてみれば、企業に飼われて地位や名誉を求める口先ばかりの男として目に映るもの。二人が対峙して、どんな言葉が交わされるのかは想像に難くないでしょう。

実際、エヴァンジェは敵味方問わずにレイヴンを無差別に始末し、力を求めるあまり人が支配するという幻想を抱いたままパルヴァライザーと一体化を選ぶなど、「ただのレイヴン」としての矜持を取り戻さない限り、悲惨な道を歩むことになってしまいました。

こういった自身の存在意義に対する疑念、強迫観念に駆られながら生きてきた古参のレイヴンであるほど、その一部はバーテックスに合流して企業などの手による新たな秩序ではなく、「レイヴンの理想郷」というものを夢見るようになりました。

「システムの外側」を目指したレイヴン達の夢

レオス・クラインが掲げたレイヴンの国でも似た御旗として傭兵が集っていましたが、

ジャック・Oによる『レイヴンによる秩序の創出』はインターネサインとパルヴァライザーを打ち倒すため、レイヴンを探すための撒き餌に過ぎませんでした。

しかし『烏大老』や『G・ファウスト』さんなど古株の老兵が復帰して彼のもとに集まっていたあたり、皆が皆一人孤独に生きることを願っていたわけでなく、老いた鴉たちが自分たちの拠り所となる巣(ネスト)を本気で求めて戦っていたのも確かだったと思います。

企業という群れに参加して、他の群れに属する鳥が空を飛ぶ事を否定し排除する生き方。

地に伏して暮らす人間たちを見下すなど、若者は知る由が無くても傭兵の在り方は、管理者やシステムの都合で容易く歪んでしまいました。

しかし、誰かに管理され、誰かが決めた目的地に連れて行かれる。ましてや、その誰かを選べないなら、たとえ連れて行かれる先が天国だろうが地獄だろうが、駒程度にしか見ていない存在に誰がついていくというのか。

自分たちの存在が覚束ないことを嘆きながらも、それでも何者の支配を受け入れずに抗い続ける存在。

それこそが真に求められた強者としての『レイヴン(イレギュラー)』の在り方でした。

そんな強者ですら、この世界は一人で生き延びられるけど、独りでは生きられない。何故なら、この世界が成立するには「他者との繋がり」「他者が創った物」があってこそ成り立っている。

だからこそ、皆が好きなように生きて、好きなように死ねばいい。

そしてそれは、人類そのものにも当て嵌まるはず。

皆が自分の責任で生きていく。その結果、人類が滅んだのであれば、辿り着いたその先が人類種の限界点と認めるしかない。

人間は救われることを望んでいないのか」と神様は勝手に困惑しているが、本来そこにシステムが介在する余地など不要なのです。

「戦場を好むタイプに見えない」と称された老兵G・ファウストも、企業ではなくレイヴンが生きるための秩序を掲げるバーテックスに参加。引退の身から戦いを決意し、人として自らの信念に則って生きて見せたレイヴンの一人でした。

お前もレイヴンなら、戦場で死ぬ覚悟は出来ているな

炉心破壊 G・ファウスト/パンツァーメサイア 接敵時台詞

そうして自分の言葉を信じた誇り高いレイヴン達すらも騙し、彼らを死に追いやった罪人という自覚があるジャック・Oは、自らの幕引きとしてパルヴァライザーの相手を務めた直後に主人公と連戦することで負った責任とケジメをつけ、策謀家としてではなくレイヴンとして散っていくことを最後の頼みとしました。

その気高さ故に自分を許すことができなかったジャックでしたが「経済成長に基づいて消費という名の犠牲を払い続ける企業による統治」「レイヤードのような管理社会」とはまったく別の、彼によってシリーズで初めて「神様から与えられた楽園」ではなく、その邪魔者たちによる「真に人が人らしく生きるための秩序と国作り」を見ることが叶う道もあったかもしれないと考えると、つくづく惜しい人物でした。

「自由」と「責任」の後者を選んだ『山猫』たち

一方、自分は山猫であるという方に向けて、リンクスとはどういう存在だったのか考えてみましょう。

たしかに管理されない圧倒的な力を秘めた個人として危険視されていましたが、

『レイヴン』とは少し事情が違うのが『リンクス』です。

最初のリンクスである『オリジナル』達が国家を破壊した後の世界では、管理者を自負する企業の力の象徴として扱われるなど正確には元々傭兵ではありませんでした。どちらかと言うと体制側に位置しているので、企業に反旗を翻しているような者はほとんど見受けられません。

破滅に加担したリンクス戦争という過ちの歴史から世界は一変し、基本的に起きている戦争は経済活動に基づいたもので、密約やらルールによって企業自らの手によって制約が課されており、クレイドル体制の名の下ですべての争いが経済利益を第一とした出来レースの緩やかに腐りつつある世界が築かれ続けました。

そんな中、リンクスは企業の飼い猫として揶揄されるようになり、誰が呼んだのかついたあだ名は「首輪付き」

むしろ自由であることと対義的な存在ですが、それでも彼らは戦いの舞台から降りることはありませんでした。

山猫は放浪を続ける鴉と違い、自分たちの巣(コロニー)という守るべきものがあったからです。

かつての伝説的なレイヴンとされたAC4の主人公である「アナトリアの傭兵」

彼は大切なものを守るために飛ぶことを捨て、アマジーグやジョシュアと同じく守るべきもののためにリンクスの道を選びました。

それはリンクス戦争終結後にコロニー・アナトリアが滅ぼうと、フィオナ・イェルネフェルトという「雇い主」でも「鴉」でもない存在を置き去りにしなかったなど、彼自身が自ら交わした誓いは生き続けていました。

自由を謳歌しながら戦い続けるレイヴンと違って、一人一人のリンクスがそれぞれ自ら選んだ首輪を提げている。

それは『for Answer』で問われているテーマでもあり、自由と引き換えに得た責任や力とどう向き合うのか。

ある意味では、戦士としてのそれぞれの首輪(理由)を見つけるものでした。

その首には、自分で選んで自分でつけた首輪がついている。人類種の黄金時代を求めたかつての同胞たちの遺志を選び取って戦い続ける「理想家たち」もいれば、期せずして、人命を守らんとする個人としての願いや矜持から、管理者の思惑を外れて『イレギュラー』としての道を歩き出した者もいます。

中には、真に何者にも管理されない世界に向ける手段として虐殺を説いた『革命家』とそれに応じた『人類種の天敵』も。

良い戦士だ。感傷だが、別の形で出逢いたかったぞ

「MARCHE AU SUPPLICE(断頭台への行進)」ベルリオーズ/シュープリス 被撃墜台詞

リンクスとはまさしく思想家』

自らが選んで提げる首輪のために戦い、時には世界を、自分自身すらも破壊できる選ばれた戦士たちでした

未だ遥か彼方の理想郷

戦うこと、強さ、そんなのが特別な事なのかしらね
いつか、あの男も言っていました。それが我々の可能性なのかもと

ま、どうでもいいわよそんなの。アタシは、もう嫌なの。誰かの思惑で生きるなんてさ。

だから、足掻くだけ。やりたい事をやるだけよ。

ロザリィ&フラン ゾディアック撃破後ムービーより

人が人らしく信念を貫こうとする道において、常に立ち塞がるのが『管理者』

『管理者』や支配者たる企業が思っているほど、システムによって平和を齎していくのは決して安くはない。

それを見誤っている彼らは『イレギュラー』が現れる度に秩序を乱すものとして排除しようと行動を起こし、イレギュラーサイドも相容れない相手として飛んでくる火の粉を振り払うように何食わぬ顔ですべての思惑を打ち破ってきました。

しかし、どれだけ燃やせるものを燃やし尽くそうが、お互いにその存在の痕跡すべてが消えることはない。

ACⅥトレーラーが示す識別名『レイヴン』が果たして、主人公自身を指すのかは未だ分かりません。

が、『立ち塞がる何者』かが「借り物の翼で、どこまで飛べるか」という言葉を向けている以上、文字通り『V』から『Ⅰ』というシリーズを包括しているかの如く、主人公もまた先人たちの魂を引き継いだ『レイヴン』としてシステムの外側を目指して命を燃やすことになる

両者の因果の歴史は繰り返される印象でした。

『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』

本日解禁のトレーラーを見る限り、そこにあるのが造られた天国だろうが地獄だろうが

邪魔者たちが己自身の理想郷に至るには、未だ遠いようです。

勝負だレイヴン。

どちらが正しいかは戦いで決めよう

メインシステム、戦闘モードを起動します

まったくの見当違いであったならば、それはそれで良しとしましょう。その誤りも人らしさ故として、ご容赦頂きたいです()

私も孤高を気取っている鴉の一人ですが、なんだかんだ群れて飛びたい時はあるので、もしよろしければ気軽にお声がけくださいね。

それでは皆々様、

宇宙の空を越えた、かの地でお会いしましょう。

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