今回はOPムービーで描かれているホワイトグリントとスピリットオブマザーウィルの戦いについて解説します。
映像美から話題に上がることはあっても「なんでこいつら戦っているの?」という理由が特に見当たらないまま物語が開始されてしまうことから、この戦いをプロモーション用映像ではなくストーリー的に真剣に捉えるとどういうことなのか話していきたいと思います。
そもそもこの話自体、実は公式資料集では「アームズフォートVSネクストの戦闘実証の試験」だったことやら触ったことが無い人は絶対知り得ない情報だったり、AFの優位性を主張している企業がわざわざ一番の危険人物を相手取ってる辺り、ぶっちゃけワンチャン狙いだったろ的な色々ツッコミどころがあります。しかしその中でも特に気がかりなのは、ラインアーク視点ではどういう心境で敵対している筈の企業の依頼を引き受けてマザーウイルに挑んでいたのか、またこの出来事がfaの世界情勢にどう関わってきたのか話していきます。
そもそも「敵であるはずのWGをカラードに所属させる」という思い返してみたら疑問符しか浮かばない設定について気になった方は、ラインアークと企業連がどういう関係図を築いていたのか今回語っておりますので必見です。
ホワイトグリントのリンクス「アナトリアの傭兵」の再来
企業が彼を最大の脅威とみなしていたこと、その頑な姿勢から彼らが世界の破滅を不可避にしたのは確かでした。
かつてのオリジナル、または巨大兵器やアレサといった禁断の兵器を用いても彼を止める事は出来なかった。ならば、企業にホワイトグリントを止める手段は存在しない。
企業の仮想敵には他企業の名よりも先に、アナトリアの傭兵という例外が挙げられたからこそ、彼らはクレイドル体制を全会一致で築きました。
過去に国家を滅ぼし、世界を我が物のように振る舞っていた企業が、個人を最大の脅威として恐れていた象徴的な時代。
第二の彼が現れるのを防ぐため、企業は用いる戦力をリンクス個人に委ねず、代替可能な凡人の集団に移行する「アームズフォート計画」の実施。
これも当然、通常戦力よりも圧倒的にコストパフォーマンスも優れていたはずのネクスト戦力の運用だったのにも関わらず、より莫大な費用がかかる手法を採用するという、まさに企業として本末転倒な選択でした。
自らの保身のために未来を食い潰すという企業の老人たちの在り方、そこに疑問を抱いたリンクスがいなかったと言えば、ご存じの通り嘘になるでしょう。
WGがカラードに登録されている理由は何か?
なにはともあれ、ホワイトグリントの登場。
これは当然、企業側も見過ごせる事態ではありませんでした。
しかし、いくら戦力を投入してみても、彼に敵う存在はどこにもいないのは自明の理。
無論、主力級や量産型アームズフォートも最悪、彼にとっては獲物以上の存在には成り得ないことが頭をよぎる。
企業連はレイレナードやアクアビットの二の舞を避けるため、アナトリアの傭兵に屈することになりました。
そこで、ラインアークの主権領域を黙認する代わりに、ホワイトグリントを設立したばかりのカラードに所属させるという首輪を付ける選択を採りました。すると、名目上はラインアークの主権という自由都市の自治と同時に、ラインアークそのものはカラードを通じて企業の支配下にある事を体制側に名目上は認めさせた事になる。
企業は己の威厳を守ろうとラインアークへの物資支援など様々な妥協案の下に、この関係を築きました。ただし、リンクスの暗殺なども考えられたとしても相手は歴戦の傭兵であり、いつ企業の喉元に刃を突き立てるか、すべては彼の気分次第であったため、イレギュラーに対する恐怖に駆られながらも世界の静寂を守ることを選びました。
ホワイトグリントのこうした政治的な配慮により与えられたランク9も、各企業専属や独立傭兵トップのロイ・ザーランドよりも低く位置。
ちなみにWGの機体構成から察するに、最新鋭のミサイルやライフルを提供しているBFF社はラインアークがネクストの保有を決めた最初期の内から間違いなく取引していると考えていいです。
そうしてラインアークも力を蓄える手段が確保できるようになり、彼の登場からしばらく時が経つ。
そして、喉元過ぎれば熱さ忘れるといった具合に、企業はふたたびラインアークに挑発を繰り返すようになり、自衛に徹していたラインアークも堪忍袋の緒が切れる。
そこで依頼の仲介を通して起こったのがOPムービー、企業によるネクストvsアームズフォートの性能実証を兼ねた、ホワイトグリントによるスピリットオブマザーウィル襲撃というわけです。
WGによるスピリットオブマザーウィル襲撃
そもそも企業がラインアークに喧嘩を売るマネし出したのは、クレイドル体制の確立によって本社機能や身内を空に移住させることが完了し、ネクスト単機やラインアークの保有戦力でもクレイドルを堕とすことはできないという見解を持ち合わせてることにありました。
ネクストはいくら強力でも地上を這いずり回るものであり、リンクスの補充や空中用の新型アームズフォートの配備によってクレイドル空域の侵入は叶うまいと希望的観測を抱かれるのも、時間と共に強まっていきます。
しかし、この襲撃におけるVOBの最大活用という力の誇示によって、それは覆されました。
ここで重要だったのはアームズフォートに対する勝利ではなく、ラインアークもクレイドル体制に対する抑止力を手中にして活用できることを示したことでした。
ネクストとVOBの組み合わせはプレイヤーの皆さんも体感したように、僅かな時間で核と大差ないほどの壊滅的打撃を与えることができます。もちろん、腕のあるリンクスによって最大限に効果を発揮されますが、PAなどによるコジマ汚染という面だけでも、ただ敵地に突っ込ませるだけで被害を与えられます。自爆もといアサルトアーマーもありますからね。
これを彼らが独自に保有して、もしマザーウィルではなくクレイドルが襲われていたらどうなっていたのか。
ラインアークが本気で滅びかねない局面に迫られているのであれば、VOBを使用してクレイドル空域にホワイトグリントを向かわせただけで全てが終わります。アナトリアの傭兵がこれをやるのかという以前に、企業連はこれを内部の裏切りや策謀の中で起こりえる最悪の事態として想定しておく必要に迫られます。
そういう危惧を与えて企業と対等な取引相手として認めさせる意味でも、ラインアーク側の脅しとして必要があったのが、OPムービーにおけるホワイトグリントvsスピリットオブマザーウィルだったわけですね。
名目上は性能実験である以上、撃破までには至っていないのですが、弾切れで撤退するまで荒らし、ちゃっかりアサルトアーマー起動してるあたり、必要以上に目くじら立てられないようにマジで嫌がらせ優先です。
マザーウィル襲撃からfa本編開始まで
本来、企業の経営者達にしてみればアームズフォートとはリンクスを凌駕した究極の兵器であったこと。コスト度外視で造られた主力級アームズフォートであれば尚更、カタログスペックとしてはネクスト以上であるという前提は決して覆ってはならないし、新たな世代の戦場の主役が敗れることはあってはならないことでした。
ネクストにアームズフォートが及ばない事を突きつけられる事態は、fa本編時にも起きているのですが、とりあえずこのホワイトグリントによるマザーウィル襲撃が、AFの幻想のみならずクレイドル体制を崩壊させる危惧を抱かせるには、十分すぎるほどの影響を与えました。
マザーウィルを擁するGA陣営のリンクスは他企業と比べると適性や腕前が劣ってる傾向にあり、精鋭のリンクスを揃えることよりも、通常戦力を重んじる風潮が強く根付いている会社というのもあり、リアクションは気になりました。しかし、GAグループ内には王小龍と有澤社長という経営陣も兼ねたリンクスが在籍しています。彼ら二人の参画もあり、アームズフォートがネクストに対して絶対的優位性を持っているという幻想を断ち切り、ラインアークと事を構えるのは得策ではないと判断を下せる柔軟さがGAはあると呼べます。実際、社長がAFを撃破したりしていますからね。
ホワイト・グリントにミッションを斡旋したり、物資の支援による利益獲得に切り替えたのはこの陣営だったと思われます。
後のラインアーク攻防戦で何故オーメルが先陣を切ったのか、ホワイト・グリントに対する恐怖心など、ここまで誰が煽ったのかは明白だぜメルツェル。
こんな感じでマザーウィル襲撃以降の各企業サイドの反応はまちまちで、ホワイトグリントにはカラードの傭兵として仕事と報酬を与えて、それが自給自足で補いきれないラインアークの資本となる一方、いない隙を窺って別陣営はラインアークへの嫌がらせを止めないという企業連のブリーフィング曰く現状況は生まれていません。といった小競り合いがしばらく続くようになりましたとさ。
そんな中、その小競り合いを新人リンクスの試金石として引き受けたのが、faの主人公である首輪付きだったわけですね。
次回、ようやく本編の解説に入ります。