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『ELDEN RING NIGHTREIGN』の「夜の王」たちに「状態異常の強者」が多い理由づけについて

『エルデンリング:ナイトレイン』は、本編の設計を生かして作られた作品でありながら、後日談でも、かといって単なるIFストーリーというものでもない。
それは「黄金の秩序が消えた後、あの世界はどう振る舞うのか」という問いを突きつけてくる作品だからだ。ナイトレイン世界の根幹にある思想―― 夜という「大いなる意志」の介在が無い状態。

そして「腐敗」や「発狂」といった大ボスたちの状態異常の在り方を軸に、 とりわけ象徴的であるリブラを取り上げて整理する。

夜の王とは何だったのか


ナイトレインは「本編後」なのか?

結論から言えば、ナイトレインは本編エンディング後の正史続編ではない。 しかし、完全な別世界でもない。
より正確には、本編で黄金律が崩壊した“後”であること。
つまり、秩序が再構築されなかった時間層
を描いている。

本編ではどのエンディングにおいても、エルデンリング世界はマリカによって築かれた「統治の正当性」を失う。
特に世界の理を作り替えようとするラニENDが象徴するように、大いなる意志は追放され、世界は夜に包まれる。

だが、この夜――つまり、「星の世紀エンド」にはまだ、ラ二によって星の運行という外部基準、つまり、距離を置いた統治が残っていた。


しかし、ナイトレインには、それすらない。

管理者不在、律の真空状態―― ここからすべてが始まる。

「夜=大いなる意志不在」だが、まったく意味が違うのだ。
星の世紀とナイトレイン、どちらも「夜」であることは確かだ。
だがその性質は決定的に異なる。

  • ラ二ENDである「星の世紀」
    • 冷たいが安定している
    • 理は遠くに存在する
    • 世界は壊れない
  • ナイトレイン(夜の治世)
    • 放置された闇
    • 基準不在
    • 世界が自己崩壊を始める

同じ夜でも「管理されている夜」と「捨てられた夜」では、意味も帰結も全く異なるものと化す。ナイトレインは、ラニが回避した“失敗の未来”として読むと、ある程度読み解けるのかもしれない。

そして来襲した夜の王という謎の脅威が世界を大雨で覆い、滅びの危機にある。唯一「夜渡り」とよばれる戦士たちは夜の脅威に抗っており、狭間の地にある島リムベルドで夜の王との戦いを繰り広げていく。

「状態異常」の強者が「王」になる世界

ナイトレインで印象的なのは最後の3日目の夜に対決する夜の王」たち。すなわち、彼らが「夜の王」でありながらも腐敗・出血・死・発狂といった状態異常が、大ボス級存在として前面に出てくる点だ。

これはゲーム的都合ではない。 完全に意識的な配置である。

黄金律があった時代、これらは辺境に追いやられ、あるいは地下に封印され、異端として排除されていた例外だった。

だが律が消えた世界では、異常を抑える壁そのものが存在しない。
結果、状態異常は常態化し、 やがて凝集し、人格と王権を持つ力の象徴と化した。
医者のいない世界では、「病」が王になるというわけだ。

夜の王とは「誰」なのか

重要な前提として、 夜の王は元デミゴッドではない。人物でもない。

夜の王とは、空位になった王座に、夜そのものが入り込んだ概念存在である。世界を支配したいわけではないが、救済も破壊も目的ではない。

夜の王が行うのはただ、夜を終わらせないこと
終わらない夜、不在が続く状態―― それ自体が王権化したもの。
ナイトレイン(夜の治世)とは暴君ではなく、空位そのものだ。

「夜の魔リブラ」を例にして分析してみる

リブラは夜の王の一形態であり、 とりわけ発狂(狂い火)に極端化した存在である。
ここで重要なのは、おそらくリブラは三本指の配下ではないという点だ。

発狂とは単なる狂気ではない。

世界が生に意味を提供しなくなった時に起きる「精神症状」
理由なき苦しみ、説明されない痛み、 報われる保証のない生―― これが続いた時、精神は「世界そのもの」を否定したがる。

  • 三本指
    • 発狂を思想として利用する
    • 世界を燃やすという“選択”を提示する
  • リブラ
    • 選択以前の状態
    • 世界がすでに意味を失っている状態

リブラの力は三本指が生まれる条件そのものが果たされている証明であり、代理神ではない。

紛い物の黄金は正気を失わせ、狂気へ誘う
だが狂気をもたらす者は
同じく狂気に飲み込まれるものである

この世界では、もはや「狂うかどうか」を選ぶ必要すらない。
狂い」も夜の世界にとって自然な状態になっている。だから、世界は狂い火の炎も受け入れる。
だからこそ、 三本指は前面に出ない。
「発狂」そのものもまた既に世の自然(王)になっているのだから。

武器が多様な選択肢になっているのは壊れた世界故に

ナイトレインの武器は黄金樹の聖性よりも、状態異常を前提とするものが多い。
なぜならこの世界では、異常を拒む者は生き残れないというメタ的な強さ以外にもしっかり理由がある。

秩序なき夜では、 異常と共存できる者だけが力を持つ。
「夜の王」とは、 夜に選ばれた存在ではない。 夜に適応できた存在である。

ナイトレインは本編のような「王を目指すために、デミゴッドといった神々を打ち破る物語」ではない。それは管理をやめた世界が、 自動的にどこへ転がり落ちるかを描いたシミュレーションだ。夜の王とは何者かの悪意ではなく、放置された世界の自然発生物であること。
だから、プレイヤーは問われている。
秩序なき壊れた世界の夜でいまだ尚、生きるのか?
それとも、すべてを終わらせるのか。

そして、それは「瓦礫の王」も同じだったようだ。

という感じで年末年始はエルデンリングの記事書いていきます。

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