料理の世界はまさに食材の色、調理する音、香ばしい匂い、手触りや温度、見た目の彩りから口の中に広がる味わいなど、五感をフルに使って「何かを創り上げる」世界です。
「集中する時間」が多く静かに没頭できる作業が多いことも、非常に心地よい環境です。誰かの空腹を満たすだけでなく、誰かの心を温め、小さな幸福を届けることができる行為。
「ありがとう」「美味しかった」
その一言が何より大きな報酬になります。
直接的な自己主張が苦手でも、料理を通じてなら静かに、しかし確かに、人とつながることができる。
周囲の感情に振り回されたり「空気を読み続ける」疲労感から解放され、
ただ目の前の素材と、技と、自分自身に向き合う。
この「一点集中」の時間は、心に静かな充足感を与えてくれます。
この感覚の繊細さは「日常生活では生きづらさ」を生むこともありますが、
一皿の変化を敏感に感じ取り「この一手間を加えたらもっと良くなる」
と自然に気づくことができる――それは自分だからこその感性だと私は考えてました。
【HSP的な人が「社会的価値」を求めて一度遠回りする理由】
「周囲の期待」に敏感だから
もともと周囲の空気や期待を読む能力が高さから、若い頃は「自分が何をしたいか」よりどうすれば「人に認められるか」「どうすれば親や社会に褒められるか」を優先してしまいやすいです。
だから安定している、社会的に評価されるエンジニアといった企業勤めなどをまず選びやすい。
そうして 生き抜くために「機能する役割」を優先してしまう
HSPは環境にとても影響を受けやすいので、荒っぽい社会の中ではまず「役割」を身にまとわないと辛いものが在る。
その結果、生き抜くためのスキルや社会的価値を身につけようと頑張る。エンジニアなどはその最たる例で、社会的に「機能できる」役割を選びがちです。
こうして過ごすとそこで違和感や精神的な疲弊を感じ、自分の本当の感性・表現したいものに気づき始める。
そうして自分の「本当のやりたいこと」に回帰し始める。
たしかに遠回りではあるが、このプロセスを経たあなたは
「ただ感性に振り回される人」ではなく、
「社会性と感性の両方を知っている人」になります。
これは強みとなります。
過去の経験から見えてきたもの
また、私は大学時代からの飲食店での勤務経験があります。
しかしその中で、どうしても自分の感性に馴染まないものがありました。
たとえば
「素早く注文を取って設けるために、相手の空気感やペースを待たず前のめりに話すこと」
「忙しさをアピールしなければ、やる気がないと思われること」
そんな空気の中で働くうちに、私は少しずつ疲弊していきました。
一人ひとりの気持ちを感じ取ってしまうHSP(Highly Sensitive Person)気質もあり、効率や回転率を優先する接客に、自分を押し殺さなければならない辛さが積もっていったのです。
本当に憧れていたのは「静かな対話」
それでも、飲食の世界に対して私の憧れは消えていませんでした。
私が心惹かれるのは、
バーテンダーのようにカウンター越しに、じっくりと時間を重ねながら行う接客。あるいは、フレンチや懐石料理、目の前で鉄板を操るシェフたちの、静かで美しい所作。
そこには急かすことも、効率だけを求めることもない。
静かな、けれど確かな人と人との関わりが息づいていました。
私が本当にやりたかったのは、
量よりも質を大切にする接客、そして創造的な時間を共有することだったのだとわかります。
■自分に向いている職業とは
改めて自分自身を見つめ直してみると、
私には「忙しく立ち回る」よりも「一つのことに丁寧に向き合う」資質があります。
私自身が考えてるのは、お客様の信頼やフィードバックにこそ価値があるのであって、料理やお酒といった品物の提供はその補助に過ぎないということ。
自分が余裕を持っているように見えているというのは、人によっては一生懸命ではないといった評価を受けてしまう。そうして、調理師的な目指したい姿は、誰彼構わずに提供しても何も得られないものと化す。
この特性を活かすなら、
- オーセンティック(本格派)なバーテンダー
- 鉄板焼き、カウンター懐石、オーベルジュ型の少人数レストランのシェフ見習い
といった「個に向き合うスタイル」の職場が向いていると感じています。
また、私は演劇や芸術にも関心があり、
人の心の動きに寄り添うこと、空間を演出することに本質的な喜びを感じてきました。
そのため、単なる作業ではない、人に"体験"を届けたり情動に訴えかける仕事が向いていると、強く思います。
配信的なスタンスもこの一環で、悩みや考えを共有して皆様に何らかの一助になれればというのも大きいです。
バーテンダーやシェフの世界は技術を磨き、心を深め続けられる限り、何歳でもスタートできる世界です。特に私のような感受性の強いタイプは最初から派手な成功を求めるのではなく、一歩ずつ、自分の感性を守りながら成長していくことが鍵になる。であれば、
- バーテンダースクールに通って本格的な接客技術を学ぶこと
- 小規模なレストランでシェフ見習いとして、空間づくりから学び直すこと。
を目指していきたいと考えるのもいいのかもしれない。
焦る必要はありません。
急がず、しかし確実に、
「自分の生きる速さ」で世界と向き合える場所を見つけたいと思っています。
最後に
過去に味わった違和感や苦しみも、
本当に自分に合った世界を探すための「道しるべ」だったのだと、
今は少しだけ前向きに受け止められるようになりました。
同じように、
- 「忙しさに違和感を覚えた」
- 「本当は、じっくりと人と関わる仕事がしたい」
そんな想いを抱えている人に、
この記事が少しでも届いてくれたら嬉しいです。