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エルデンリング解説/考察 ストームヴィル城の「嵐の力」とゴッドウィンの古龍信仰の結びつき

『エルデンリング』の面白かったところとして、ファンタジー作品の大河というか歴史モノっぽくどの勢力の影響下にあるフィールドなのかを考えながら世界を歩み進められる点が個人的にあります。

大ルーンを賜ったはずの大王ゴッドフレイは恩寵を失って追放されたり死王子と成り果てた黄金のゴッドウィンやら、そんな踏んだり蹴ったりな黄金の一族の末裔であるゴドリックさんというこの序盤に立ちふさがるチュートリアルボス。

この方はデミゴッドとしての血を薄く引いていて、黄金樹の麓に帰郷を目指した反逆のゴドリックして返り咲く日を夢見てたに過ぎないのですが、彼の境遇や置かれた立場は今ひとつ分かりにくい立ち位置にありました。

周知されているのはミケラの刃であるマレニアに跪いたことばかりで、彼女が神人という格が違った存在であったことでミケラ・マレニアの兄妹組にコテンパンにされ、死にたくないと土下座外交したトラウマから接ぎ木を繰り返してること。まあそんなゴドリックさんのことは置いといて、注目したいのは彼に一部付き従ってもいた、故郷を失った騎士である「失地騎士」や「流刑兵」たち。

彼らを紐解くのにまずこの従者たちを率いているのは「ソールの城砦の『宿将』」「ケイリッドの『老将』」も同じです。そして、この将軍たちは誰の下にいるのかを考えたら「ミケラ・マレニア兄妹勢力に吸収されている」のは通説な気はしているけどそうでもないのかよく知らないので補足するのが今回の内容です。DLCがミケラ中心である以上は触れる必要があるので、先にこの将軍と失地騎士たちのことを語りたい。

宿将二アールと老将オニールが仕える主

戦技「黄金樹に誓って」同様にバフ効果をもたらすオニールの戦旗。

彼の出で立ちからして彼の所属元がラダーン配下の赤獅子ではないか?ってのが初見の印象でしたが、エオニアの腐敗沼で主の姿が見られなくとも戦を誇るという意味合いやら貴腐騎士たちとあそこで行動を共にしていたあたり、彼はマレニアと共にケイリッドにまで遠征した将軍でした。

面白いことにオニール&二アールに限らず彼が呼び寄せる「失地騎士」「流刑兵」もまた風を巻き起こす戦技「嵐の刃」などストームヴィルの失われた嵐の力を用いる。彼らが元より仕えていたのはストームヴィル城の王であり、そこから紆余屈折を経てミケラ・マレニア勢力に下ったのかってなりますね。

しかし、そうなるとストームヴィル城主と言えばリスカ癖のあるゴドリックさんが真っ先に思い当たる。確かに彼も嵐の戦技に連なる技を使うことができるので、立地的にもゴドリック傘下を吸収したのかってなります。が、ゴドリック元来の力はゴッドフレイのものと同種の「地に伏せよ」の方で、「斧握らせている接ぎ贄の右腕」があることや「ゴッドフレイ本人が嵐の力を振るってない」のを見る限り、あれは接ぎ木で取り入れた力なのでしょう。

朱い腐敗に侵されきっていないオニールは嵐の力を身に纏って、停滞の菌もとい汚れを振り払っているといったところでしょうか。

ただ一人生き残り、霊たちを率い
とうの昔に死した主を守る
それがニアールの、あり様であった

老将は死なず。去り行く先もなかった

宿将シリーズ

宿将二アールは死にきれない死王子というよりも、龍と交わった「黄金のゴッドウィン」その人またはミケラ傘下として亡霊と化した「ソーンの領主」に仕える状態でした。

二アールの武器は刃の仕込まれた義足を武器として振るうもので、専用戦技「嵐蹴撃」は嵐と共に雷の力を帯びている義足だが、この力の要素はエルデンリング作中でどこから来ているのか語ると中心に据えられるのが黄金のゴッドウィン。

王都古竜信仰の祈祷のひとつ

雷の槍を呼び、前方に投げ放つ
タメ使用で、着弾に落雷を伴う

かつて、黄金のゴッドウィンは
古竜フォルサクスに打ち勝ち、友とした
王都古竜信仰のはじまりである

祈祷「雷の槍」引用

聖樹に至る手段である割符を守護するための下された命令とも受け取れますが、失地騎士たちの流れ着いた先にソーンの城砦はともかく、ストームヴィル城が含まれている先入観で失地騎士イコールゴドリック配下という認識でしたが、何らかの理由、あるいは咎で故郷を失くした騎士たちという彼らは唯の適当な城を徘徊している騎士ではなかったです。

失地騎士たちの故郷と罪の茨

かつて、嵐の王の双翼として知られた一方
失地騎士となったイングヴァルは、祝福王の誘いを断り
王なき城を、長きにわたり守り続けた
そして、辺境の英雄となったのだ

かつて、嵐の王の双翼として知られた一方
失地騎士となったオレグは、祝福王に見出され
百の裏切り者を狩り、英雄として還樹を賜った

かつて失われた嵐の王に連なるのが失地騎士であり、雷の力を帯びているのが王都古竜信仰というゴッドウィンの系譜に置かれているもの。

少なくとも二アールは、嵐の王だけでなくミケラないしゴッドウィンと何かしらの縁を紡いで、古龍信仰に踏み入れていたということになります。一方、失地騎士は当時の古き王に仕えていた中、敗れた敗軍の将として処分を受けそうなところを二アールさんが助命を請うて拾い上げられた恩義から、ゴッドウィンやミケラといった黄金の一族というよりも二アールさんに付き従うようになったというところでしょうか。

ソールの宿将、ニアールは
その脚と引き換えに、敗軍の騎士たちの助命を請い
後に彼ら、失地の軍勢を率いることとなった

王都古竜信仰で見られる雷は「黄金の雷」で、古龍本来の雷は原初の赤が混じった色です。

古竜の鱗とされる、さざれ石の聖印 王都古竜信仰の祈祷を強化する 
古竜信仰は、黄金樹への裏切りではない この聖印も雷も、すべて金色なのだから

「さざれ石の聖印」より引用

古竜の赤き雷じゃなくて黄金の雷だからセーフ理論みたいな認識が広がって王都古龍信仰は普及されたようですね。

陰謀の夜において殺されたゴッドウィンは黄金樹の根本である深き根の底に埋葬されているので、何故か説明文曰く生臭く膿んだ人面の瘡が遠く離れた場所に現れているストームヴィル城がゴッドウィンとどういった繋がりを持っているのか不明でした。

そして、ストームヴィルの兵士たちは「ゴドリックの騎士」と「失地騎士」で分かれており後者の防具をよく見てみると、罪人の象徴たる茨が流刑兵と同じく巻き付かれています。

上記のようにストームヴィル城そのものが嵐の力にまつわる古い王、ないしは古龍と交わりがあるとするのであれば、死王子の躯がそこに留まっていることだけでなく、接ぎ木としてゴドリックは竜の末裔の力を手に入れたことも見方が変わってきます。

ストームヴィルの兵士たちの革盾
城と同様に、黒斑と茨に蝕まれている

人々は噂する。それは接ぎの呪いだろうか
あるいは、城のどこか深いところに
よりおぞましいものが、隠されているのだろうか

次回:ゴッドウィンを取り巻く「陰謀の夜」の罪と罰について

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