女神の右手に書物と電信線。そして大陸横断鉄道。
アメリカという国はもともと旧世界であるヨーロッパの君主制国家から脱出した「生まれたての民主国家」が始まりです。幼子としての無垢(イノセンス)と、成長に伴ったその喪失の在り様は、アメリカ文学的にも重要なテーマであらゆる作品が影響を受けています。
また、特に何物にも縛られないという輝きを放っていた西部劇は今も昔も大衆のロマンであり、子供のように社会から制約を受けない人間が人生の意義を真に求道できた時代でした。
しかし、産業化と科学技術の発達、価値観の変化などによってそんな幼少期も終わりを迎えます。
未開拓地域である「フロンティア」の開拓と法整備、急速な工業化によってアメリカは世界一の工業力を獲得。僕たちが生きる近代的な国家観、その礎となったのが大企業による独占支配。
資本主義の象徴たる企業は、僕たちのイメージする大国「アメリカ像」とは、切っても切り離せない関係にありました。
文明社会を築く資本家たちの時代
連邦国家として独立宣言をしたアメリカ合衆国。1803年のルイジアナ買収以来、次々と西部に進出しながらアメリカの領土拡大を進めて太平洋岸に到達。
カリフォルニアのゴールドラッシュという言葉は聞いたことあると思いますが、金の採掘目当てで訪れた人々より、そうした人を相手に商売することが当時では儲かる秘訣でした。
ビジネスとしての初期投資を酒場や衣類など、金目当てで一山当てるのではなく、それを夢見た者たちに目を向けた周辺事業に目を向けることで、富を築いた成功者の家系がアメリカの富裕層では多いです。
確かに急速な発展は資本が元手となるため、富の占有も国の発展など全体に寄与するのであれば、雇用や生活水準の向上にも貢献しました。しかし、銀行資本が産業資本と結びついて金融資本が形成されることは、資本の集中と独占が進むことを意味します。
この「独占資本」が国家権力と結びついたことで発展を遂げたのがアメリカ合衆国でした。
国家権力と結びつく独占資本(企業)
19世紀後半に形成されたトラスト化と呼ばれる同一業種の企業が、有力企業によって吸収・合併され、同一の資本のもとで合同する独占資本の形態。
買収しながら閉鎖に追い込むことで供給を絞って価格を下げさせない「ダンピング戦術」など、自らの富を集めるために市場を操作するなど、競争手段は選ばれない時代でもありました。
信仰の自由を求めアメリカ新大陸に渡り、神の意志により政治を決めていく理想社会は、この富を集中させる資本主義という貨幣システムに蝕まれました。
そもそも入植者であるピューリタンの時からカトリック(旧教徒)の信仰が神の意志に沿っていないという解釈違いで始められた運動など、もともと行動力に満ちていましたけどね。
建国の祖であるピューリタンの求めた道徳はその内で後退し、新大陸の自然や先住民(インディアン)を敵とみなした文明社会は理想を捨てて「自分たちの信じたいものを信じればいい」という独り善がりの狂信的な意志によって、アメリカという強大な社会コミュニティの形成に至ったのです。
人は価値観を経験や環境により形成し、作られた自分の正義=欲求を正当化。
そんな大衆社会の台頭によって、自らの欲望そのものが肯定されるようになる世界が生まれたのです。
このように議会に圧力をかける企業家の風刺画は多く存在しました。
また、19世紀代表的なアメリカ文学の基礎を築いたマーク・トウェインは人間の本質に目を向けて、某夢の国に置かれる船の名前を冠する彼は、この時代の人間を風刺した作品を送り出しています。
また、大自然との調和を説いたヘンリー・デイヴィッド・ソローは大きな政府による市民生活への介入を嫌う、個人主義に立つ一人として社会に生きる人々に対する戒めの作品を世に放つなど、自然と共存してきた在り方から社会システムに依存する人間の変容に疑問を呈することでキング牧師などにも影響をもたらしました。
1890年にフロンティア消失宣言が出されましたが、それは開拓すべき経済の土壌を見失うこと。
そもそも資本主義経済というものは、常に新しい市場経済の獲得を求めており、その方法が海外に向けられた手法、特に戦争に傾倒することになって世界に惨禍を広げることになるのですが、それはいずれまた話します。
俺たちの時代の終わり
いずれにせよ何を成すにも、生きるために金は必要で、
命すらお金に換算される資本主義に覆われる時代。
自分たちが自由に生きていける世界がまだどこかにあるように信じたい、
アメリカンドリームや西部開拓時代への憧れを捨てられないまま、新たな世界に置いてかれた無法者。
かろうじて生き残ったものの、国から追われながら崩壊寸前で逃げ場なしのギャングたちの物語。
シリーズの生みの親であり脚本を務めたDan Houser氏は何を伝えたいのか。
これと言って明確なものこそ言及しませんが、自らが手を汚して流された血は一生ついて回ることは繰り返し語られ続けています。
流された血に対する贖罪(Redemption)こそ世界の掟。
人間が世界に尽くしたり何かのためにどれだけ変わろうと、世界や周りの人々の見る目は変わらず、
どれだけ過去を振り切ろうとしても、血は追ってくる。
人生とは行いの積み重ねだ
自分の血から逃げ切ることはできない
「RDR2」マーク・ジョンソン処刑時 前口上 トーマス保安官
どうか自分でその人生と生き様を体験してほしいゲームシリーズ作品『Red Dead Redemption』の紹介でした