FROM SOFTWARE ゲーム 作品解説 解説

エルデンリング解説/考察 黄金律ラダゴンとは英雄のガーゴイル/黒き剣の眷属と同族かもよというお話

ミケラの肉体はどうなるのか

ミケラの聖樹の完成で新しい律を掲げようとするミケラは何を思ったのか、マレニアにも行き先を告げずに突然姿を消しました。

というか、モーグに誘拐されました。しかし、モーグ自身も褪せ人に討たれる最期まで血の王朝を幻視するなど、まさに夢見心地

モーゴットとは対照的で熱に浮かされた様子に、ギデオン卿からも誇大妄想と一蹴している始末。二本指とは異なるモーグの愛を語るなど、直接スカウトされて「凶血」を授かった最古参であろうヴァレーさんが最期に見向きもされてなかったので、多分彼が知っているスカウトマン時代のモーグさんではなかったのでしょう。

そんなモーグさんの傍らにいたミケラですが、マレニアの淀みつつある身体を清めるため、神人としての血を輸血し続けていたのかマレニアの大ルーンは植物が芽吹いています。

地下牢の忌み子やら「忌み双子」戦で忌み特有の呪われた炎を使ってくるあたり、忌み子という種族の特性らしいですね。朱い腐敗を輸血した炎で押し留めるという意味で、ミケラがモーグの宿している「呪われた血」に着目したのか?

「血の君主の歓喜」のテキストでは、臣下たちによって血の君主に血を捧げさせ、モーグに繭を血で満たさせることが、血の神を目覚めさせる条件だったらしい。

モーグの血と混ざり合うことによってマレニアの宿痾、つまり朱い腐敗を取り除く方法を模索するとして、彼女を見捨てる選択はしていないと思いたい。しかし、何故ミケラの聖樹を放り出して急遽、路線変更したのか?

ミケラ自身も二本指の呪縛に囚われているらしいですが、神授塔も見つかっていない辺り、そこら辺の事情も不明です。そもそも、モーゴットとモーグのように双子であるならば二本指を共有するはずですが、デミゴッドとは異なる神人であるミケラとマレニアを作り出したとあるため、この兄妹にも二本指が共有されているのかちょっと怪しいラインで断定はできないです。

共有されているなら未だミケラの大ルーンが解放されていないなど、彼はあくまで眠っているだけに過ぎない。

肉体を繭の中で眠らせながら何か企んでいるのか。ラニが肉体を捨てて魂を人形に移している実例は示されているため、もしかするとミケラの魂もどこかに消えたと考えてもいいでしょう。

ラニと同様に肉体を捨てる必要性に気付いてしまったとはいえど、ミケラは彼女と異なり肉体の始末をきっちりしていないのが気がかりです。

ミケラは新たな聖樹を築こうとした時点では新たな律を築こうとしてましたが、二本指の枷がある以上、ラニのように肉体を捨て置く必要があったとしても「正しく死んでくださいな」の兄である死王子の件もありますが、魂無き身体を病に侵されたまま放置するのもよろしくない気はするんですけどね

幼いままという宿痾が彼の掲げる律として黄金樹と同じく「停滞」を帯びてしまっているので、その律を腐敗の女神のように書き換えようとしたのならば、血を媒介にする外なる神である「真実の母」など、血の王朝は君主こそ倒れたが、本当に王朝は滅んだのか?

無垢金の針によって朱い腐敗や狂い火という外なる神の力を退けたものの、ミケラ本人が幼いままという宿痾を克服しようにも、未知数なことをやらかしているせいで、腐敗の女神と同様に、よからぬものを呼び起こす可能性も未だに残されています。

ロクなことにならなきゃいいですが。

女王マリカの肉体は黄金樹に捧げられているとすれば

さて、タイトル的にもようやく本題。

ここまでミケラの聖樹の例を見た上で割とスルーされがちだったのですが、ミケラの聖樹でミケラが律を掲げるために動いていたことを踏まえると、聖樹とはまさしく黄金樹の在り方と同質のものでした。

時系列的にも黄金樹が生まれた時の昔話にいったん戻ってみましょう。

ミケラは聖樹のために自らの血や肉体を樹に捧げていた。

しかしその一方、黄金樹を築いたはずの女王マリカは自我を保って女王として活動を続けていたことを我々は疑問に思わなければなりません。

ラスボス前後のムービーからして、「稀人族」出身であるとされる彼女の肉体は既に人にあらず、血肉どころか血液を持たない無機質なものに変貌を遂げて朽ちかけていました。

死王子や狂い火の王である褪せ人が別の存在に成り果てたように、大いなる意志によってもたらされたエルデの獣を宿す器として肉体を書き換えられたというのも考えられます。

いずれにせよ、彼女の肉体は黄金樹の完成のために費やす必要があったと仮定するのであれば、その後を統治していたマリカの肉体という、本来のマリカとは異なる性質のものに対面したというのがあの姿なのでしょう。

そして、彼女が「黄金律、ラダゴン」という人格を宿したとするならば、まさしくDと同じく、一つの肉体に相反する2つの魂を宿していたということ。

そりゃ迫害されないわ

鶏か卵かではありませんが、黄金樹を見限ったマリカ様がここまで事態をややこしくするに至った理由については、明確にはされておりません。報連相を怠らずに故郷の地を追われたゴッドフレイが帰還する一方、愛犬マリケスはマリカとの約束を守れなかったことを謝罪して王都は灰と化してギデオン卿もグレるなど、巻き添え被害者も多々います。マリケスさんは影従の獣として二本指サイドなので仕方ないですけどね。

それだけ内密に事を進めたかったということなのでしょうが、彼女はラダゴンを抱えているがために黄金樹に逆らおうとしても罰は必然でしたし、マリカがラダゴンの存在をいつ認知していたのかもわかっていません。

ひとまずそれは置いておいて、とりあえず俺達が対面したあの金髪のねーちゃんの美麗ボディは黄金樹産なんだという唐突な話に戻りますが、割と似た事例を狭間の地でプレイヤーは既に見かけています。

それはラニやセレンのような仮初の肉体への魂の転移とは異なる、「器」に「別の意志」が組み込まれている存在。

それがガーゴイルです。

死蝋という油脂ソフトウェア

英雄のガーゴイルの持つ青銅の大剣

本体がそうであるように
欠けた部分を死蝋で補った
英雄たちの継ぎ接ぎである

「ガーゴイルの大剣」より引用

英雄のガーゴイルの持つ青銅の大剣
その補う死蝋の黒いもの
聖属性の攻撃力を持つ

それは、黒き剣のマリケスに仕えた印である

「ガーゴイルの黒剣」より引用

輝石とは星の琥珀であり命そのもの云々をセレン先生はご教授してくれました。これを利用してインプやらゴーレムを動かしているというメカニズムを説明してくれました。おそらくこれと同様に、死蝋というものは生物の油脂から生じるもの、それに肉体が影響を受けるように組み込まれているものがガーゴイルの正体でした。

英雄のガーゴイルがなんで毒を吐くんだよってツッコまれる部分も、おそらく以前の記事で書いたように、人の死骸が毒素として溜め込まれたというので筋は通っています。

マリケスに仕えていた「黒き剣の眷属」ですが、あれもガーゴイルそのものが眷属というわけではなく、マリケスの刻印あるいは眷属だった存在の死蝋がソフトウェアとしてガーゴイルに組み込まれて生まれ変わっているというのが正しい状態でしょう。

ここで考えてみると良いのが、樹脂から生まれ出でる琥珀というもの。黄金樹の古い雫とありますが、要するに樹液です。

あのラダゴンは黄金樹の樹液、樹脂によって形成された「琥珀の命」であったのだとすれば、「英雄のガーゴイル」や「黒き剣の眷属」が青銅の肉体に蝋で作動するように、君臨した女王マリカの肉体を構成する「黄金樹の油脂ソフトウェア」がラダゴンであったのでしょう。

マリカの肉体と共に用意されたラダゴンは黄金樹そのものの意志であり、律そのもの。彼は黄金樹の世界で完全なる王を体現するための存在でもあったのだと思われます。しかし、これにイレギュラーが発生していたのが、おそらく黄金樹直産のソフトウェアであるはずのラダゴンが特異な性質を受け継いでしまった事でした。

巨人たちは、皆一様に赤髪であり
ラダゴンは、自らの赤髪に絶望したという
それは巨人の呪いだったろうか

「巨人の赤髪」より抜粋

その出生からして巨人との血の繋がりがないはずが、何故か赤い髪を発現してしまっているということで流石のラダゴンさんも動揺した模様。

それもそのはず、黄金樹そのものが巨人の呪いによって犯されていたことが、ラダゴンの生誕によって明らかになってしまったのです。そしてこれは同時に、呪われて生まれた王家の忌み子であるモーゴットとモーグだけに宿った彼等の力のルーツの説明にもなりました。

金仮面卿のおっしゃる通り、心を持った神の生誕は悲劇を生むことになりました。それが後の、マリカとラダゴンの子である不完全な神人であるミケラとマレニアの誕生です。

次回からラダゴンと巨人関係の話に入りますが、最初は野心の火に焼かれてやがると褪せ人を揶揄してばかりの祝福王モーゴットさんのお話になりそうです。

次回:野心の火に焼かれる者と巨人の火

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