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【for Answer】ストーリー解説後半 -理想に溺れていく酔っ払いたち-

CHAPTER4

ORCA旅団による声明発表

企業ルートの首輪付き視点ではイレギュラーネクストによるアルテリア・カーパルス襲撃。

その直後に発信されたのはORCA旅団と旅団長マクシミリアン・テルミドールの名の下、企業に対する宣戦表明とでも言うべきものであったが、同時に地上で虐げられてきた人々の心境を代弁するもの。

アルテリア施設を目標にした全世界同時テロ。

世界中のクレイドル航行ルートの地上にてエネルギー供給を行うアルテリアが占拠されたことにより、ORCA旅団は衛星軌道掃射砲エーレンベルクにエネルギーを回すようになりました。狙いはエネルギー供給を絶つことによるクレイドル着陸、それでも飛び続けている機体はエーレンベルクで打ち落とすという筋書きが一般的でしょうか。

しかし、なぜORCAが衛星破壊砲を保有しているのか。GAのトップランカーであるローディーも疑問を抱きます。

確かに、ORCAによる動乱でクレイドルが墜ちれば、企業は大きな痛手を受けます。ラインアークにも手出しをかけてくることはない。そうして企業が損失を受ける一方、地上における反体制勢力は力を伸ばす事ができる。地上に生きる者は、この混乱でクレイドルの人命が失われるかどうかの瀬戸際でも、さして興味がありません。見捨てられた棄民の犠牲の上で成り立った安寧を貪ってるので、むしろ犯行声明に乗っかって歓迎するといった感じでしょう。

この情勢下とはいえ、オリジナルリンクスであるスティレットも口にしたように、トーラスのアサルトキャノンなどの最新兵装を保有するORCA旅団は明らかに反動勢力としては浮いており、企業による取引によって規模を大きくした組織であることが窺えます。

クローズ・プランの大義

一方、ORCA√では衛星掃射砲はクローズプランの要として、参加メンバーは既に旅団長テルミドールから説明を受けている様子。

天を覆い尽くす無差別殺傷兵器アサルト・セルは、過去の宇宙開拓時代における負の遺産だった。それが開発投入されたのは国家解体戦争以前の出来事であったとはいえ、競争を続けてきた企業組織が深く関わっていた。

「国家解体戦争もリンクス戦争も、この罪を隠匿するためにあった。であれば、ORCA旅団の戦いは、この罪を精算するためにある」
「犠牲なき解決の機会は、遙か昔に失われている。贖罪に痛みが伴うのならば、それは甘んじて受け容れねばならない」
「それが我らの咎だ」

前作ではレイレナード社がGAの衛星を狙っているため、これをアナトリアの傭兵が破壊して防ぐミッションがあります。アサルトセルを護る者と破壊しようとする者の争いとしてより一層、義憤に燃えてORCAに参加しているわけです。

この演説はおそらく身内に発信しているもので、企業ルートでは知りえていない言葉です。

ORCA旅団の本懐はネクスト戦力にある

争いが激しさを増し、ビックボックスという本拠地と参謀役のメルツェル、そして多くの戦力を失って壊滅に追い込まれているはずのORCAは、企業と密約を結んでいました。「ORCAを黙認すれば企業首脳部の安全、そして彼らの過去を秘匿する」とのこと。

この過去とはもちろんアサルト・セルの件についてなのですが、一般には公開されていないままであると窺えます。だからこそ、これからの時代も企業の支配体制を存続させるため、この取引は効果を発揮しました。

しかし、この手札が上手く機能したとはいえ、首輪付きの存在と関係なくなんで両ルート共にORCAが優勢なのか、いったん整理してみましょう。

ORCA旅団の主戦力はネクストであるというのが、ここで大きく作用しています。

企業ルートにおいてカラードのお茶会での発言に注目してみると、掃射砲攻略戦を制し、企業が戦線を保てている。しかし、アルテリア施設の過半数は陥落したままで、実のところこっちのルートでも被害は企業連の方が大きいです。

理由として、前作から企業は通常兵器主体の物量で押す戦法に重きを置くようになったことにあります。

アームズフォートによる陣取り合戦に慣れ切っていた企業は、かつてのリンクス戦争のようなネクストによる電撃戦に対処することができません。正体不明ネクストによって序盤から被害が出ているように、企業が物量で押せばそれだけ被害が出てしまう。
しかも、激化していた経済戦争でシャミアやド・スなど何人かリンクスも犠牲になって、全体的に企業の戦力が漸減していたところで、これですからね。

たとえ本拠地であるビックボックスが堕とそうとも、ネクスト能力を残しているORCAに対し、世界最大の規模を誇るアルテリア・クラニアムの最終決戦において、もう企業は余力もなく身動き取れません。

そして、企業の生産力を落とす事無くアサルトセルを排除する。
そうなれば、企業は宇宙という新たなフロンティア、破壊からの復興という二つの経済成長の土壌を手に入れることができる。

企業としてこの取引を拒絶することは、あまり賢い選択ではありません。企業専属傭兵と成り下がったリンクスも自社の方針に従うのみ。

これが企業とORCAの両ルート共に、どちらが勝とうが負けようが展開が大して変わらないカラクリになっています。

メルツェルの鬼謀

このように、最初から企業そのものが膠着状態に陥ることがORCAの思惑で、特にメルツェルは経済戦争を煽りながら計画を盤石にするためにずっと動き続けていました。戦局がどちらに傾いてもクローズプランが進められるように策を講じた結果、自分たちの死や衛星掃射砲を失ってもクラニアムを占拠するORCAに軍配が上がるように事は進みました。

クラニアムを奪還できなくとも自分達の安全は確保されてるから問題なしとして企業上層部は、事を荒立てないために静観を決め込みます。カラードのお茶会ではBFFの王小龍が「説明の必要は認められない」と切って捨てるような物言いですが、BFFは過去にレイレナード陣営に与していたので、掃射砲でのアサルト・セル除去による「宇宙開拓」の件についてなど割と事態を把握している立場にあると言ってもいいでしょう。

しかし、弱者を守るための務めを自らに課すだけのウィン・D・ファンションの動きは誤算だったはず。

彼女はこれまで戦い続けてきた理由を無下にしてしまうような選択を認めることができず、企業の意向を無視してクラニアムに向かいます。

「お前たち、やはり腐っては生きられんか」

マクシミリアン・テルミドールは何を思って呟いたのでしょうね。

虐殺者というイレギュラーの誕生

しかし、計画を上手く運んだORCA側でも実はイレギュラーが発生しており、それこそ内部でウィンディーのように独断で動いたリンクスがいました。

選んで殺すつもりは無いと主張を掲げるオールドキングです。

クレイドルを引き摺り下ろすことはORCAにとって副産物に過ぎない。

その計画の正体は最終的には老人たちと和解し、選ばれたクレイドルの住人は地上に降りずに生き残る。

ORCAの同胞も宇宙への道を切り拓くため、計画を成就するための礎になることは理解していました。貴族たちに叛意を抱く世界中の人間たちが、ORCAの名を語って新たな戦場に乗り出してゆく。そして戦いの中で死んでゆくのも受け入れているとします。

しかし、実際のところ彼らが目の敵してきた貴族たちは保護され、新たな黄金時代を築いていくという理想の世界にも、企業の資本は必要となっていきます。ORCAの言う革命も、結局のところ企業に主導権を譲りわたさなければ、実現は不可能になっています。

この一点で許せなかった場合の√が虐殺です。

今になって思えば、オールドキングは最初の五人に含まれていなかったとはいえ、以前まではリリアナを率いて企業のクレイドル体制に異を唱える人間でしたね。

とりあえずこんなところで、企業とORCAの争いも収束することが確定している以上、ここから先は各々の意志による戦いが起きています。

ウィンディーと、愛する彼女に同調したロイ・ザーランドのようにクレイドルに住む人命を守ること。

その一方、旧レイレナードの真改のように、革命の御旗に集った亡き同志の願いを託され、戦いの場に赴く者。

もしくは、オールドキングのように虐殺によって世界のバランスを乱す革命家となること。

それぞれの答えが着火剤となって首輪付きは動きます。

そしてオールドキングからの誘いがあったとはいえ、人類種にとって最悪の天敵となるルートは、誰に直接的に言われるまでもなく、首輪付きが心の奥底で抱いていた意志でもあったわけです。

とりあえず、それぞれのルートの最終盤の戦いについて語る前に、次回からfaの各人物像についてそれぞれ迫ります。

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