FROM SOFTWARE ゲーム 作品解説

アーマード・コア4 ストーリー解説 -リンクス戦争にまで至る経緯と思惑-

アナトリアはネクストの開発元。

コロニー・アナトリアとは言ってみれば国家解体戦争における企業勝利の立役者であった。


しかし、技術研究の第一人者イェルネフェルト教授が亡くなり、弟子達が手土産に技術を持ち逃げしてコロニー・アスピナに亡命。
その結果、アドバンテージを失ってそこらのコロニーと変わりなくなったアナトリアは企業主導の全体管理であるパックス・エコノミカの煽りを受け、貧しい国として疲弊し、存亡の危機を迎える。


そこで指導者エミールが、技術開発に使用していた実機のネクストを利用することを思いつく。
国家解体戦争で国家の兵士として戦い敗れて、垂れ死にしそうだったところを、教授の娘であるフィオナ・イェルネフェルトに拾われた伝説的なAC乗り「レイヴン」
彼には、低いながらもリンクスとしてのAMS適正があった。

これで傭兵稼業やってアナトリアを救ってほしいということで、彼は受けた恩義を返すためにリンクスとなる処置を受ける。
そして、伝説的な鴉は「アナトリアの傭兵」という名に変えて戦場に戻った。

CHAPTER 1 Destination Unknown -死への旅-

不吉なタイトルでスタートダッシュ切りましたね。

さて、傭兵をやると言っても企業に管理されないネクスト、すなわちイレギュラーネクストとしての登録であり、さすがにいきなり反体制勢力に加担するわけにはいかない。

体制側である企業に速攻で潰されておしまいだからだ。

かといってリンクスは少なくとも着実に増え続けている現状、そんな名無しを誰もわざわざ専属で雇いたいなんて美味い話があるわけもなく、誰も簡単には誘ってはくれないという、個人事業主あるある問題。

そんな時代遅れに声をかけてくれたのが、これまた時代遅れの名を持つ大企業様グローバル・アーマメンツ社(GA)だった。

GAはアメリカを本社に置き、環太平洋経済圏に広がるパックスで最大級の規模を持つ大企業。

しかし、コジマ技術に関しては最底辺の企業であった。よって、ネクスト製造における専門性は著しく低いというのが正直な所。

内装であるブースターは通常推力に傾倒しており、ネクスト戦力の基準としては産廃の部品。無論ジェネはコジマ関連がガタガタという酷いもの。

国家解体戦争に参加したオリジナルリンクスも、メノ・ルー、ワカ、ミセス・テレジア三名のみという、あまり貢献できていない勢力。

他社と比べて力関係が絶望的だったからこそ、ネクスト戦力増強に力を注いでみるも、その結果がリンクス粗製三人衆の誕生であり、彼等は残念なことにノーマルAC小隊と比較される程度の存在だった。

戦力として一流とは言い切れないモノがそろったこの状況に、エミールがすかさず接近してアナトリア支援を報酬に、アナトリアの傭兵を売り込んだのだ。

本人が語ったように「古い戦士。政治的な利用価値しかない、非力なネクスト」として。

あくまでもアナトリアの傭兵はGA専属ではなく、傭兵に過ぎない。

確かに初期はGAの依頼が多かった。そして、やがて来たる企業間直接戦争ではGA陣営に所属する事になりました。

しかし、テロリストからメガリス奪還するという印象深いであろうステージの依頼元はインテリオル。

さらに、チュートリアルでの仮想訓練はローゼンタールの機体データを利用しているという、実はエミールの数少ない功績として、最初は割と幅広くお付き合いがありました。

特にインテリオルは雇い主であるGAと敵対する企業だった。

これは正確に言うとGAが味方したオーメル陣営、それと敵対するレイレナード陣営にインテリオルがいました。

オーメルレイレナードアクアビットは独自にコジマ技術開発に成功した企業であり、コジマ技術の主導権を巡って互いに争っている。レイレナードとアクアビットは盟友と呼べる関係にあり、強固な協力体制を構築しているので一心同体。

他の企業はコジマ技術の基幹技術を持っている先進企業である、このどちらかに加担しているという形になる。

後にGAオーメル陣営、欧州側にあるグループ内のGAEアクアビット、つまり遠回しにレイレナード陣営と提携する。

一方、欧州圏第二の規模を誇る金融企業のBFFはどのように立ち回っていたか?

彼らは石油やら化石燃料分野においてGAと対立し、ローゼンタールオーメルと仲がよろしくなかったことか、、レイレナード陣営の肩を持っていた。
インテリオルも、ネクストの機体構成見ればレイレナードのジェネを使用など、ネクスト開発において以前から提携関係にあることが窺える。リンクス戦争後、同志であるアクアビットの残党を引き入れたのも当然と言えば当然である。

そして、南アジアに広がるイクバールは宗教的な問題からか、仲良くできたのがオーメルとしかいなかったので、彼らに肩入れしていました。

オーメル陣営⇒ローゼンタール イクバール +GAグループ

レイレナード=アクアビット陣営⇒BFF インテリオル 

と、こんな感じに六大企業の勢力は動いていきます。

CHAPTER 2 Ordeal by Innocence -無実は苛む-

この情勢にアナトリアの傭兵は、GAのアフリカ関連の依頼を多く受けました。

ここで初めて対峙するのが「反体制勢力のネクスト戦力」でした。

この頃はホワイトアフリカで積極的に活動していた反体制勢力マグリブ解放戦線が、化石燃料資源基地を襲っていた情勢です。もっとも、上で話したようにGAは化石燃料分野でBFFと対立していたので、おそらく利権問題として彼らが裏で絡んでます。
当時は企業間の暗黙の了解として「敵対企業であろうと、企業が直接的な攻撃はしない」というのがあり、BFFのみならず敵対企業の活動妨害の為、様々な企業が積極的に現地の反体制テロリストを支援していたのです。つまり、反体制勢力を掲げながらもネクスト2機貰えるレベルでマグリブ解放戦線は企業から支援を受けている実情がありました。
ボリスビッチがマグリブ解放戦線の基地に姿を現していることから、これにイクバールも支援していたと考えられます。
そんな激戦区に、アナトリアの傭兵は投入され、誰も期待していなかった彼の働きによってホワイトアフリカの英雄である「砂漠の狼」アマジーグを撃破されたことで、名声は一気に高まったのです。

この辺りから、両陣営の企業は勿論ですが、特に雇い主であるGAの動きが怪しくなりました。

ここまでが、GAの下で働き続けたアナトリアの傭兵を巡る出来事となります。

CHAPTER 3 Dumb Witness -もの言えぬ証人-

この活躍によって名声は一気に高まるアナトリアの傭兵。

エミールの狙い通りに、彼の存在を無視できなくなった各企業は依頼を持ち込む。企業同士の小競り合いが激しさを増す一方で、自社ネクストという切り札は温存しておきたいのが一致しているために、危険な仕事ばかりが、陣営問わずアナトリアの傭兵に舞い込んでくる。

反体制勢力を通して敵に回っていたBFFのタンカーをオーメルから守る時もあれば、守ったはずのBFFの潜水艦を撃破するという任務も引き受ける。昨日の味方は今日の敵理論である

そんな無茶なオーダーをこなしたのも、企業に依存しない傭兵という立場だからこそであり、多額の報酬さえあれば、仕事の貴賎は問わない傭兵の成長もまた著しいものであった。

そして次にターニングポイントと言える仕事は、GAの欧州法人であるGAEの依頼を受け、
GAEハイダ工廠の防衛任務に出撃


そこで襲撃していたのはテロリストとは思えない高度に組織化されたGA製ノーマル部隊。

GAもたしかに企業間の小競り合いの為ならテロリストに戦力を供給はするでしょう。事実、仲良くしたいはずのオーメルとも小競り合いもしていました。しかし、ここでは「GAからノーマルを受領した存在」が「自社グループの施設」を襲っている状況でした。

この時点で怪しい動きを見せていたのですが、ついにGA本社からGAE粛清の依頼が送り付けられます。

GA本社はオーメルとレイレナードの比較検討した結果、オーメル陣営に与する事にしました。

しかし、ミセス・テレジアの所属するGAEは当時アクアビットと協同で「ソルディオス計画」を進めていたのも関係し、アクアビットとの提携解消を拒絶して離脱を宣言した。

要はフィオナの言うように自らの研究欲に従った結果、内部分裂したのである。そのゴタゴタを解決しようと、GAによってアナトリアの傭兵が送り込まれた。

要は自分の手垢を付けたくないからこその汚れ仕事である。

アクアビットやGAEの戦力に気を付けろと言われていたが、どの道として企業に直接喧嘩を売ることに変わりはない。しかし、そこにGAのオリジナル「メノ・ルー」の敵の増援としての姿があった。
以前GAEの依頼を受け、GAによる内部粛清の真実を知るアナトリアの傭兵を消し、不安要素の排除と証拠隠滅しようとした等、いろいろ憶測では語れるものの詳細は不明。

彼女の台詞に「嘘なのね…全部」とあるのですが、企業にこの内部粛清の事実を伏せられたまま、GAE(GA欧州グループ) として自陣を救うために出撃したのか。

このあたりは闇の中ですね。いずれにせよ、何かしらの虚報によって彼女は出撃して討たれた結果となってしまった。
そのあたりは個人の事情というか、さほど重要でもないので置いておくことにします。

とにかく、この事件をきっかけにアクアビットが「盟友のGAEへの攻撃は、アクアビットへの直接攻撃と判断する」という声明を発表。

全世界がびっくり仰天したことでしょう。

変態技術者同士の絆が、本格的な管理経済戦争へと発展させたというわけですから。
これに焦ったGAが急遽オーメル陣営に正式に加わりました。

この時点の状況を整理すれば分かることとして、加わった企業が多いレイレナード陣営は元から有利だったのが最大の理由です。

有利な奴に味方するより不利な奴に味方した方が、陣営内での立場はより強固となるという、要は自分たちの待遇の良いであろう方を選んだだけの話。
また、特にマグリブ解放戦線の件でやりあってしまっているレイレナード陣営のBFFは世界的な軍事インフラを持つ企業であり、新興企業のネクスト偏重で技術を重んじたレイレナード=アクアビットにおいて戦力の要であった。
通常戦力の兵站という、世界最大規模の企業であるGAと長所がダブっており、仮にネクスト戦力が腐っても、これにおいてGAは他企業に引けを取らなかった。消去法の勝利だった。

そうしてオーメルと組むことによって、彼らの目論見通りに両陣営の戦力が良い感じに拮抗して、経済戦争が開幕したのだった。

CHAPTER 4 Towards Zero -ゼロ時間へ-

そして、アナトリアの傭兵がオーメル陣営の尖兵として各所で激戦を繰り広げ、エミールの回想するように、この戦争を通し、アナトリアの傭兵はオリジナルに匹敵するネクスト戦力として認知されるようになった。

当時のエミールはウハウハ、フィオナは曇りまくってました。それもそのはず「GAの要人護衛任務」にて同じオーメル陣営であるイクバールとの戦闘など、どさくさに紛れて自社の利益のために身内で争うカオスな状況。彼女の判断でアナトリアの傭兵の命が優先されるように進言されるのも、この頃でしたね。

大局的な動きとしては以降、アナトリアの傭兵は対BFF戦線、対インテリオル戦線に積極的に投入。
主にインテリオルに対するものが多かったのがこの中盤でした。

その戦績として

インテリオル自慢の飛行要塞フェルミを撃破。

かつて防衛任務に就いた重要な発電施設メガリスを破壊。

対ネクスト戦においては、GAのドルニエ採掘基地を占拠していた、オリジナルであるシェリング。加えてサー・マウロスクを撃破。

敵対企業と直接戦うこともなく、一機のネクストに押さえ込まれている衝撃の展開となりました。

敵に回してようやく状況を理解、戦争初期にも関わらずこの甚大な被害を受けてしまい、慌てのインテリオルは、この経済戦争がリンクス戦争に移行する際、レイレナード=アクアビットの行動に同調せず、レイレナード陣営を離脱して中立を宣言。インテリオルは三社寄り合いという元々の企業体制から、無理をせず戦争から撤退して物語から退場することとなりました。


一方、対BFF戦線も熾烈を極め、BFFの最強オリジナルリンクス、No.5 メアリー・シェリーの撃破依頼が舞い込んでくる。

オリジナルリンクスというのは国家解体戦争において活躍した最初の26人のリンクス。

その功績順にナンバーが与えられた彼等は絶対の自信を誇っている。

このネクスト戦力が劣っているオーメル陣営は、自陣営のネクスト戦力を投入するのにあたり、リスクを最小限にとどめる為の合理的判断として、敵陣営と対峙する戦場には、いつでも捨て駒になり得る傭兵へと真っ先に依頼を持ち込むのであった。

その例に漏れず、切り込み役としてこの上ない傭兵を使い、今回は敵陣営のネクスト戦力撃破を明確な依頼文として、BFFの足止めと消耗を図ったのでしょう。

まさかの大勝利でした

ここで一気に情勢が変わります。

BFFはレイレナード陣営の屋台骨を支える世界的軍事企業だったが、極端な中央集権構造という、本社を襲撃して潰されるとそれだけで崩壊する危険性があり、BFFは本社を特定の場所に固定していなかったというのも、クイーンズランスと呼ばれる艦に本社機能を集約しており、要するに水上を動く本社でした。
そのクイーンズランスを大艦隊が護衛するという形であり、彼らは軍事力に最も優れた企業だから、本社を守る方法として洋上に浮かべて海軍力で護衛するという手法。

ただ、唯一の弱点であったのがネクストであり、海軍が束になったところで、最強の兵器であるネクストには嬲り殺しにされるしかなかったが、ある決まり事もあったので、その可能性は排除されていた。

BFF最大の障害を取り除くことに成功したオーメル陣営。

そして、アナトリアの傭兵に依頼が入る。

BFF本社艦クイーンズランスの撃破。

引き受ける者がいない汚れ仕事であり最大のタブーを破る役割が、彼らに回ってきたのだ。

そもそも、彼らの戦争というのは「管理経済戦争」であり生活圏や本社という「存亡に関わる重要施設への攻撃などはしない」という、暗黙の了解で成り立っていた。

それを否定したオーメル陣営のこの直接攻撃。

本社艦隊に護衛のネクストがいなかったこともあり、見事クイーンズランスは沈む。

HARDでも内容は変わりません。本社艦が足掻くだけで呆気なく沈みます。



こうしてレイレナード陣営は、どう頑張ってもこの経済戦争で勝ち目のない状況に追い込まれました。

実行を許可したローゼンタール=オーメルも、目先の利益に飛びついて大局的な視点に欠けたのか、この依頼を大役として引き受けたエミールもぶっ飛んでいますが、この行動によってレイレナード陣営もまた、オーメル陣営の本社や生活圏を襲撃するという状況になって、事実被害を受けました。

BFF崩壊により軍事インフラを失い、戦争継続の方針に同調しないインテリオルの離脱を受けたレイレナード陣営は、レイレナードとアクアビット、そして各地のBFF残党を残して壊滅。

こうなると、レイレナード陣営が取るべき方針は一つ。

ネクストによる生活圏、本社などの重要施設への全面攻勢である。

幸いなことに、レイレナードはネクスト戦力に特化した企業である。

BFFのネクスト戦力も残っており、残党となって協力してくれた彼らと共に大規模な奇襲に賭けた。

ついに管理経済戦争の枠を超え、無差別殺戮の応酬となりかねない只の戦争が起きてしまったのです。

CHAPTER 5 Death Comes as the End -死が最後にやってくる-

リンクス戦争。

生活圏を襲撃し、占領するのではなく蹂躙し破壊するという、レイレナードの生存への足掻き。

巨大コロニーがあっけなく壊滅し、ネクスト投入によるコジマ汚染が無秩序に拡大する中、経済戦争では優勢に事を運んでいたオーメル陣営はネクスト戦力に劣っており、一気に苦境へと立たされた。


レイレナード所属リンクス
No1 ベルリオーズ
No3 アンジェ
No7 テペス=V
No11 オービエ
No12 ザンニ
No21 P.ダム
(少なくとも控えとして+真改)

BFFグループ残党所属リンクス
No8 王小龍
No15 アンシール
No19 フランシスカ・ウォルコット
No20 ユージン・ウォルコット
No34 イアッコス


女王メアリ―が倒れたことを差し引いても、まず勝てませんね。

というか、これにインテリオルの戦力が加えられてたという大問題。

最高ランクのレオハルトやセロというオーメル陣営の切り札を出しても、流石に無理がありました。

真改さんですら、当時からレイレナードの要の一人として注目されてるレベル。ネクスト戦力に関しては技術面においてもGAEを切り捨てて敵に回したこともあり、オーメル陣営が完全に劣っていました。レイレナード陣営のリンクスで戦力として怪しいと言えば説明文やナンバーを見る限り「理論派で戦闘経験に乏しい」と呼ばれているイアッコスぐらい。彼は一度も本編で表舞台に登場しませんでしたが。

リンクス戦争はまさに、ネクストとネクストの戦いで勝負が決まります。

厳密に言えば、ネクストを操るリンクスの質と量で勝負が決まる。

そういう意味でも、リンクス戦争というネクストを最大限に利用した戦争をやる限り、オーメル陣営に勝ち目は無いと言っていいでしょう。

当初からオーメル陣営は後先考えずに突っ走ってましたが、いつの間にか自分たちが滅ぶかどうかの瀬戸際に立たされてるというご覧の有澤でした。

このどうしようもなくなったオーメル陣営の切り札となったのが二人の傭兵。
伝説のレイヴン、アナトリアの傭兵。アスピナの傭兵、ジョシュア・オブライエン。

「この戦争における2人は、まさに圧倒的だった。時に、味方である私でさえ、不安と恐怖を抱くほどに」

この二人がオーメル陣営の希望として、戦争を終わらせる立役者となります。

しかし、彼らがどこまでも傭兵であった事が、彼ら自身の最大の不幸でした。

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