FROM SOFTWARE ゲーム 作品解説

エルデンリング解説 蟲が適応する朱い腐敗と、人の瞳に宿る狂い火の病について

ロクでもない混ざりものとして忌避される亜人が生まれ、巨人は戦争に敗れて王家の従僕に仕立て上げられるなど、黄金樹の名の下でその他諸々はまともな生き物であるものかと、あらゆる命が迫害され続けたのが狭間の地。各地で反乱が起こるのも仕方なし。

しかし、全ての生き物を例外なく狂わせ、狭間の地における最大の脅威として猛威を振るっていたのはおそらく「腐敗」でした。

日陰城に根付いた朱い腐敗の種子

日陰城の城主マレーマレーは自身と共通点を見出したマレニアを腐敗の女神として信奉しています。生まれながらの病気を抱えた自分自身とマレニアを重ねて、神話として言い伝えられている朱い腐敗に魅入られていた彼は、腐敗の女神の眷属となることを秘かに望み、処刑人の一族としての立場を利用するようになりました。

マレーマレーは信仰心ゆえに道を踏み外しましたが、いくら死体をばら撒いても広大な毒沼にしかならなかった。これまでの記事の内容のように、彼は一族に課せられているであろう黄金樹に向けた「還樹」ではなく死者の血肉を放棄して腐らせることで領地を毒エリアに変え、やがて朱い腐敗が発生すると思い込んだのでしょう。

「還樹」という義務を怠り、自らの領地に死体遺棄を続けて腐敗の温床である、エオニアの沼を再現しようと画策していたわけです。

その一点において対照的なのが意外にもゴドリックさんで、彼は力を求める目的から「接ぎ木」を繰り返していましたが、死体を詰め込む「壺」を用意してたり、黄金の一族としての自負からやることはしっかりやっていました。ストームヴィル城に死体が積まれてはいるものの、毒沼エリアが発生していないのはこの差にあるのでしょう。

しかし、城の周辺に赤い腐敗を宿した存在が定着していることで一概に失敗したとは言えません。むしろ、彼の意図していないところで腐敗は根付こうとしていたと言えるでしょう。その前に家宝奪われて追い出されたと思いますが。

日影城に姿を現しているのは、朱い腐敗を宿しているミランダフラワー、貴腐騎士たち、そして「エオニアの蝶」

植物が花開いて種子を捲くように、朱い腐敗はケイリッドの激戦の末に開かれたエオニアの花から虫や生命を媒介にし、狭間の地の各地に拡散されつつありました。

神人マレニアとエオニアの娘たち

よくネタにされるラダーンとの戦いにおけるマレニアも己の命惜しさに自爆特攻を狙っていたわけではなく、主人公である褪せ人との戦いを見る限り、彼女が生命の危機に瀕した時、外なる腐敗の神による防衛本能が彼女の意志を上回って起動するといった感じでしょう。DOD3思い出したのは自分だけではないはず

基本的に「朱い腐敗」は花開いて種子を散らすという生殖活動の一環により生じていて、その過程で形成されたのが各地で根付いているミランダフラワーでした。あの生きた花の正体は、おそらくマレニアの宿している「神性」「朱い腐敗」の両面を受け継いだものです。

神人としてのマレニアの特質を残しているという意味では、花開いた地であるエオニアの沼には彼女の神人としての血が色濃く残されているということ。ミランダフラワーもある意味では、マレニアの近親にあたる生き物であり、結果的に人の身として形を保ったエオニアの娘たちが誕生した中でも、ミリセントと呼ばれたあの女性だけは、神人としてのマレニア本来の気質を受け継いでいた存在でした。

あそこで接敵する「闇霊ミリセント」というのは、我々が知るミリセントに宿らないまま沼に置き去りにされた彼女の半身「腐敗の意志」に近いものだったのでしょう。他の娘たちがミリセントに劣ってしまう蕾とされたのは、彼女たちにも宿っているはずのマレニアの神格、あるいは神性が足りないゆえに「腐敗の戦乙女」となりきれない。まさしく「その資格が足りていなかった」と言えるでしょう。

ある意味では、「病み花、ミランダ」はマレニアの神人としての側面を受け継いだ、エオニアの娘たちと同質の姉妹的な存在。ここで肝要なのは、マレニアが花開くことで彼女の神血も撒かれることが関係しており、腐敗の女神が降臨する資格として、その神性が求められたことからマレニアは腐敗の神に狙われたわけですね。

感染経路は違えど、病が発症するのは同じ生物

朱い腐敗のルーツとして、黄金樹システムの停滞から生まれた血の淀みに行き着いたマレーマレーは割と冴えていました。毒素は停滞から、つまり血の淀みから発生している。そしてやがて身は腐り落ちて、朱い腐敗が宿るに違いない。

朱い腐敗の神話として語り継がれる「腐れ湖」から、その正体が血の池地獄と解釈したというのは冗談として、それに近い可能性に思い至っていたのでしょう。

で、彼が何で独学でこんな「攻めた解答」に行き着いたのかは手元にある武器にご注目。

アリです

マレーマレーがどういう経緯でこんな武器を手に入れられたのかは置いといて、朱い腐敗を宿した蟻の存在に行き着いたのは間違いないです。狭間の地の蟻は人を食らってルーンを溜め込んでいるので、人血を取り込み続けてこうなったのだと彼なりに解釈したのかもしれません。

しかし、よく見てみると様子がおかしい個体が見かけられます。

「肥大化した蟻の頭部」を皆さん思い出してみましょう。

画像で張るのは精神衛生上よろしくないし個人的にしんどいのでここでは伏せますが、地下に潜った際に見かけて印象的であろう頭が肥大化した蟻の個体を見て、何が原因でこういうのがいるのか調べてみました。

一応、巣穴を守るために入り口を塞いだりするヒラズオオアリなどそういう種族もいるにはいる模様。

しかし、それだけでは一種族から病気を患っているかのような異様且つ特殊な個体が生まれた説明がつかない。

そこでもう一つの可能性として挙げられるのが「タイワンアリタケ」などの蟻に寄生して行動を操る菌類の感染。

この病原菌は宿主を通して同族を増やしていく術を身に付けていました。後頭部から子実体として胞子を降らせることで、蟻の仲間に感染させることができるというのです。現実においても菌類に寄生された蟻の生態系が暴かれており、頭から胞子嚢を生やしている蟻の姿はグロテスクではあるので、気になる方は各々で検索してみてください。

ここで何が言いたいのかというと、

病に身体を侵されながらも、その存在を介して感染を広げるものを、私たちは狭間の地で既に目撃しています。

狂える三本指に由来する祈祷

その瞳から、黄色い狂い火を迸らせる
人だけを発狂させ、タメ使用で強化される

それは、狂い火で瞳が爛れた病み人たちの
堪えきれぬ落涙であり、狂的な痛みを伴う

祈祷「堪えきれぬ狂い火」より抜粋

濃厚接触

ネズミはルーンを宿していることから察するに狂い火を宿した人間を食べたことで、瞳に狂い火を宿してそれを人間に伝播させる感染キャリアと化しています。

しかし、瞳が爛れて発狂するのは褪せ人特有の発作であり「堪えきれぬ落涙」によって発するのが狂い火の炎。

狂い火の病の起源とされるシャブリリはともかくとして、NPCである放浪の民たち、エドガー、ユラといった狂い火関係のイベントに登場する人物たちはみな絶望や悲嘆に襲われ、狂い火の瞳もとい「シャブリリのブドウ」を宿してしまった模様。

彼らのブドウを食らい続けたハイ―タの三本指の代弁からして、人間の負の感情に呼応している病と見て良さそうです。

潰れた瞳から他者の瞳を潰して感染源にしてしまう病、理性や感情に作用して瞳に発症する褪せ人特有の病原菌。

それが「狂い火の病」でした

かつて、大隊商として栄えた商人たちは
異教の疑いにより、一族郎党捕らえられ
地下深くに生き埋めとなった

そして彼らは、絶望の呪詛を唱え
狂い火を呼んだ

「放浪商人の装備」より抜粋

狭間の地を覆う病原菌たち

狂い火とは伝染する病であり、褪せ人が宿し続けることで瞳は潰れ、それはシャブリリのブドウとなって苦痛と共に狂い火の炎を形成する。もしくは、瞳による接触で他者を感染させます。

一方「朱い腐敗」もまた生命の身体を蝕みながら、それを媒介に感染を広げることができる病原菌でした。

過去、外なる神として朱い腐敗に適合したのは「蠍」らしいです。

蠍は生き物としてはクモ類に分類されますが、厳密には昆虫に入らない動物らしいですね。狂い火の王が最終的に人としての形を留めなかったように、蟻もまた朱い腐敗をその身に宿すには不完全な器で、腐敗の神にとっての感染キャリアでしかないのか。

腐敗の眷属である白い蟲も、作り方としては死体から根付いているのに加え、節足動物としての意匠は昆虫ではなく、実は蠍に寄っているのかもしれません。

形はどうあれ生物の中で蟻が朱い腐敗に適応できたのは、種族のシナジーがあったのかもしれませんが、アリさんも無条件で適応できるというわけではない。あれは「褪せ人/ネズミの瞳に狂い火が宿っている」のと同様に「アリが朱い腐敗の菌に寄生されている」という見方が正しいのかもしれません。

いずれにせよ、蟻だけが巣穴ごと全滅しているのは、現実と同様に悪い菌類の仕業だったということです。

それはともかくとして当初の話に戻すと、朱い腐敗によるマレニアやラダーンの手足の欠損やそれを宿らせた蟻の姿から、朱い腐敗が血の淀みによって生ずるという考えに至り、地道に死体漁りを続けたマレーマレー。しかし、伝承として伝わっている「腐れ湖」も血の湖にあらず。実際は「停滞した水」に生育している「朱い病原菌」だったので、合ってるようで合ってないという絶妙なラインを彼は攻めていました。

彼の大先輩であるキノコ王もとい、腐敗の眷属となろうとした変態たちは蟻のように身体に宿るわけではないので、自ら腐敗を身に纏うことで、朱い腐敗に対する免疫を得るという二歩三歩先を行ったアイディアに行き着いています。

腐敗は腐敗でも異なる菌を纏えば病の予防となる。そういうことですね。

人の死体が養分とされる黄金樹の世界、その草木を腐らせて栄養とするキノコやカビ。

それを食らって取り込める蟲も、不完全な形であれど栄える存在となり、狭間の地の生態系を崩そうとしているのは「病原菌」

水や湿気が生育に適している腐敗の菌が「朱い腐敗」の正体で、それを知ってか知らずか乾燥したケイリッドの土地にて炎をもって感染の拡大を食い止め続けているラダーン傘下の赤獅子の戦士たちも勿論ですが、正気を失いながらも自らの領地に留まって、砂丘を彷徨い続けるラダーン将軍も紛れもなく英雄ですね。

しかし、生き物毎に特定の症状が見られる違いはあれど、狭間の地において感染キャリアが増えていく病原菌は他にもありました。

朱い腐敗に侵されているマレニアの宿痾を解決しようとした、神人の兄ミケラはこれに目を付けたのか付けられたのか正確なところはわかりませんが、関わりを持ったらしいです。

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