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『ARMORED CORE for Answer』世界観解説 -クレイドル体制とパックス・エコノミカの存続-

faの物語開始時点では公式資料集A NEW ORDER of “NEXT”曰く国家解体戦争から17年。

一応、劇中では数十年と発言されていますが、約二十年として考えてよいでしょう。

AC4におけるリンクス戦争が終結してから、faはかなりの年月を重ねています。

この間に、何が起きていたのか補足していきます。

クレイドル体制による清浄な空への移住

まず、リンクス戦争によるネクスト戦力投入によって地上はコジマ汚染による荒廃を迎えていた。

例として地球環境の急激な変化。

そこから起こったのは世界中の主要都市沈没や汚染による砂漠化など、もはや生活圏として安全な環境は残り少なく、復興も望めない状態でした。

そんな中、企業は連携を取ってクレイドル体制を提案します。

クレイドルは人類の新たな生存圏として、コジマ汚染が及んでいない空に新たな生活圏を築き上げることを宣言したのです。

しかし、クレイドルの稼働にはアルテリアという送電施設によるコジマエネルギーの供給が必要不可欠であり、クレイドル体制を維持するためには地上のコジマ汚染を加速化させることを意味していた。

さらに、企業に属する人間がクレイドル移住権を優先的に握るため、なんの特別な措置を受けられない一般市民は地上に取り残されるのみ。この時点で虐殺√の動機付けとして割と十分

飛行ルートには各企業が取り決めており、それぞれがアルテリアのエネルギー供給可能範囲内を辿るというもの。

まさに選ばれた人類を運ぶ箱舟であり、揺り籠というわけです。

人類の過半数がこのプラットフォームに移住しており、無辜の市民はここで企業の庇護に置かれている。

というのが、企業の謳い文句。

実際のところ、彼らが一番警戒したのはイレギュラーネクストによるパックスエコノミカ崩壊です。

パックスの維持による企業支配体制

パックスエコノミカとは経済主義による平和を指している実在の言葉であり、この平和観は現代社会にも根付いているものです。

管理資本主義社会。

国家を打倒する上で掲げられたこの言葉は、企業が世界の主導権を握ってから施行されてきました。

そもそも国家による民主主義という社会システムが、増えすぎた人口が政治に適していなかったこと。

それがACシリーズでの企業統治体制の発端です。

資本主義の権化である企業による経済に基づいた統治。

これはもちろん資本主義らしく富む者にとって素晴らしき世界であり、愚か者や弱者には容赦なく死を与えるという事を意味しています。

faにおけるクレイドル体制によって人類の過半数が空に移住しているとのことですが、そもそも人類全体の数は果たして残されている数はどれだけいるのか?

クレイドルが稼働しているのは20機。

03の住民が合計一億人であったことを考えるならば、faでは地上の人々含めた総人口40億にも満ちていないです。

資本主義を腐らせる愚者や弱者の徹底的な淘汰による社会。

皮肉なことに経済利益を第一に動いた結果、人類は企業によって再び繁栄の時代を迎えていたというわけです。

しかし、技術や社会が成熟し、高度成長が緩やかになると、当然これまでのような利益を出し続ける事も難しくなっていきます。

企業も成長を止める事ができません。企業は利益を出し続けないと、その存在を維持できなかったからです。

だからこそ、企業は内向きの消費で利益を出すことを目指しました。

それが管理経済戦争です。

そして、これがfaにおいて暴かれた宇宙進出を阻む企業の過去の罪、アサルトセルの問題に直結していたのです。

カラードによるイレギュラー管理体制

パックス・エコノミカは、自分たちだけの市場を持った企業が、自らの傘下にある経済を絶対神としながら運営する社会体制。

企業の下で世界秩序を維持しつつ、それぞれが自社の利益追求を続けること。

そのために必要な消費を生みだす為に、戦争を始めていました。

これをfaの時代でも繰り返そうとしていたわけです。

すなわち、4時代のような地上に残された資源基地の奪い合い。

クレイドル体制に移行する際、地上を引き続き経済戦争の舞台とする暗黙の了解が交わされていたわけです。

しかし、リンクス戦争時に彼らが経験したのは、イレギュラーである個人が、管理者の思惑を凌駕してしまう力を持ってしまうというもの。

皮肉にも、国家解体戦争において自分たちに勝利をもたらしたリンクスという存在に、彼らは危機感を抱いていたわけです。

自分たちが首輪を付けなければ、どこかの反体制勢力の依頼によっては、昨日の味方は今日の敵として歯向かってくる。

気が付いた時には手遅れで、イレギュラーの手によって企業は泥舟として沈む運命に置かれるかもしれない。

かつての本社を破壊されたレイレナードとアクアビット社、クイーンズランスを失ったBFFがまさにそれでした。

この予防策として、

  1. 支配者である企業にイレギュラーの手が及ばないよう、無辜の市民たちと共にクレイドルに移住。
  2. 統治企業連盟すなわち企業連を組んで連携を取り、個人依存性による強大な力であるネクスト戦力の制御、リンクスを管理運用するための企業機構『カラード』を設立。
  3. 彼らリンクスを各企業の傭兵として契約を交わし、地上に取り残した経済戦争の先兵としてリンクスを戦場に駆り立てる。
  4. 大多数の凡人によって制御されるハードウェア『アームズフォート』を次の戦場の主役として据えること。

このシステムを完成させることで、ネクストを現代の戦場では非力な存在であるとして、イレギュラーとなりかねないリンクスたちを管理することができました。

このやり方は実際上手く回っていて、国家解体戦争時に活躍したオリジナルリンクスとは異なる性質を帯びており、自らが所属する企業に対して卑屈な若手リンクスたちがカラードに集っていました。

彼らの中には独立傭兵を謳いますが、蓋を開けてみたら、どこかの企業に擦り寄っているのがほとんど。

それも当然、カラードに登録していなければイレギュラーとして排除される結末しか待っておらず、個人単位ではネクストの整備運用もままならないだけの市場を企業は独占していました。

これで何の憂慮もなく、管理経済戦争を続けることができるわけです。

しかし、それも束の間の夢でした。

カラードに突如降り立ってきたのが、企業と相反する思想を持った自由都市ラインアーク所属を宣言するネクスト戦力。

白き閃光、ホワイト・グリント。

企業にとっての悪夢の象徴が再び姿を現したのです。

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